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第3章03話

第3章03話


 次の日も朝から空間修復をしている。昨日から17ヶ所の修復を3人で終わらせた。


「入り込んでいる連中は片付けたので、もうそんなに作れないでしょう」


「やったら水郷城で直ぐに分かると思うぞ。相当空間が安定している」


「後は天狗の里ですね」


 タマ左右衛門さんとタマ三郎さんが走って来た。


「御屋形様、大変です! 分家の母屋に地下室が! そこの床に陣が描かれ、大きな裂け目が有ります」


 皆でドヤドヤと行くと本当に有った。水神様が陣を調べている。


「笹美城と行き来出来るようだな」


 水神様が陣を消して空間修復をした。


「タマ左右衛門さん、この屋敷を解体して下さい。廃材は再利用しない事」


「直ちに!」


「タマ三郎さん、大きな家を探索し直し。徹底的にやって。代官詰め所も捜索、拒否したら斬り捨てて構いません」


「畏まりました」


「大分、安定感が増しましたね」


「水郷城から天狗の里に気の流れが出来ている。早く修復しょう」


 三人で天狗の里に入ると山の中腹に天狗さんの大きな館が有り山麓に小さな家と商店が並んでいる。


「裂け目がアチコチに有りますね」


「塞いで行くしか無いでしょう」


 水神様が諦め顔だ。


『水美、この塞いだ裂け目から出ようと他の穴を使った人はどうなる?』


『何処かとんでもない所に出る。既存の裂け目を利用している危険負担だ。それ以外は送られた場所』


『そうなんだ。普通に飛翔を使えば良いのに』


『違う世界に移れる飛翔を持っている人は少ない』


『帰って来れるような所なら良いけどね』


『多くは無理だろうな』


 高いリスクを背負って来ているのだなと思う。


『風の精霊さんの気配は有る?』


『有る。気配どころか匂うくらい凄く強いわ。そこらに居るみたいだ。やり辛い』


『なら放って置かなければ良かったのにね』


『妾が来て手伝っているのが気に食わないのだと思うぞ』


 俺が天狗館の近くに裂け目を見つけて修復していると、館の最上階で仕事をさぼっている天狗さんが、服を着ていない女性に酒を注がせていた。

 慌てて透明になり遠眼で見ると見覚えが有る。


『あれ、壺振りのオバお姉さんだ』


『悪霊騒ぎの時に居たような』


 あの時水美も居たんだ。


『あのオバお姉さんは、服を着ていない時しか見た事無いな』


『天狗が専用にしたのだろう。風の精霊が荒れているのも分かるな』


 水美が笑っている。


 天狗さんは30分くらい行方不明になって帰って来た。


「最上階の前に裂け目修復の跡が有ったので修復していた」


『水神様、調べなくて大丈夫?』


『本人がやったと言うのだ、放って置こう。あの中に入って行ける雰囲気でも無いだろう』


 何かピリピリする感じの中で3時間くらいで仕事は終わった。

 暇にしていたのは2人と2妖怪だけだった。


「気の流れが止まったようだ。これで新しい割れ目が出来たら直ぐに分かる」


 水神様が満足そうだった。


「終わったから寿司でも食べようよ。たまには水神様もどうです?」


「実は前から行きたかったのだ。娘が帰って来て自慢するのでな」


 全員で寿司屋に行くと水神様も一緒なので、店主が気を使って貸し切りにしてくれた。

 宣姫がとても嬉しそうだ。


「此処が噂の寿司屋か。やっと来れたな」


「お母様、トロがお薦めですよ!」


 全員でビールと大トロを注文した。


「誰が空間に穴を空けているか分かったぞ。以前話に出ていた頼田一漸らしい」


「笹美城の空間まで歪むでしょうに」


「笹美城でも、それを批判されているようなのだが得意なのがアレしか無いらしく続けているらしい」


「はた迷惑な話しだな」


 天狗さんが怒っている。


「哲司殿がこっちに飛ばされたのも、その影響の可能性が高いのだ」


「なら、私には恩人みたいな人ですね。旦那様に会えたのですから」


 知世さんがニコニコしてビールを飲んでいる。

 水神様は笑いながらトロを食べた。


「これは想像以上に美味い物だな!」


 宣姫がどんどん追加注文をしている。


「頼田一漸は城主の長男、善秀よしひでの配下で好き放題やっているらしい。最近は笹美城にも亀裂が出来て大型の妖怪が暴れたりすると言う話しだ」


「早いうちに止めさせないと、マズいですね」


 話しを突然中断して寿司に専念したり、水神様が忙しい。


「反対派の急先鋒が善姫らしい。善姫が17歳くらいで嫁に行く寸前の時、空間の割れ目に吸い込まれ、10年くらい前にヤマコを召喚した時一緒に帰って来たらしい」


「ヤマコって猿の大きな奴ですよね。人の言葉を話す。先日図鑑で見ました」


「何年行ってたの?」


「10年以上らしい。その原因が頼田一漸と見られている」


「じゃ姫は40歳くらい?」


 宣姫と知世さんが興味津々だ。


「ヤマコと10年以上暮らしていたら、沢山生んで帰って来たのだろうな」


 天狗さんは余計な事を言わなければ良いのに。


「「?」」


「ヤマコは雄しか居ないので、人間の女に子を作らすのだ」


 水神様も事も無げに答えている。日本人と性的な倫理観が少し違うのかもしれない。


「えーっ!」


「キモイ!」


 日本人と変わらないか。


「そんなもんで善姫は居ないように扱われていたのだ」


「「カワイソー」」


 そんな話しをしながら食べまくっている。水神様は、トロ、ウニ、エビを相当気に入ったようだ。


「善姫が水郷城と連絡を取りたがっているというのは、頼田一漸の話しかもしれないですね」


「あり得るな。だが気を付けないとな」


「水不足に妖怪騒ぎなのに、良く水郷城と水郷境に手を出して来るな」


「水不足が騒ぎになるのは、最低でも後2週間はかかるでしょう」


「そうだな、我々は足元を固めてから水郷境の周りの掃除だな」


「情報は集まってます?」


「少しずつ来ているが、住処が特定出来て無い。生かして囚あえてある陰陽師の自白とも合わせて、出来るだけ早くにかかりたいと思っている」


 水神様も忙しいようだ。


 食べ終えて俺は分家の解体を見に行くと言うと、知世さんが宣姫と城の風呂に行きたそうにしている。


「行っておいで」


 凄く嬉しそうにしていた。城の風呂に入ると体調が良くなる事に気が付いているのだろう。


「旦那様が帰って来たら一緒に入ります!」


 知世さんが張り切っていた。

 俺は分家の解体話しをサッサと終わらせ、水の里に行った。


 水の里の風呂に入って水美と話しをする。


『天狗さんは御発展だね』


『あの一族は昔からああだ。少し趣味が違う』


『という事は風の精霊さんも……』


『200年も仲良くやっていたのだ、同じ趣味と思うしか無い』


 2人で笑ってしまった。


『女カラス天狗さんは助かったね』


『分からんぞ』


 水美がニヤニヤしている。


『哲司も体力を戻しておかないとな。知世と仲良くしないと』


 言われて水美と風呂にゆっくりと浸かって、体力を取り返した。



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