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第2章16話

第2章16話


 天狗さんの帰還は衝撃的な出来事だった。あれから10日くらい経つが、水神様の決断がまだ出来てい無い。

 初動が悪かった。水神様が宣姫に天狗さんの話を聞いても、ウナギに専念していた宣姫は何も覚えておらず、知世さんに補足させても自分で分からない部分へ質問してなかったので、水神様は情報の半分も知り得なかった。


「では、その世界は笹美の国が大型妖怪の牧場にしている可能性は有るのですね」


「有りますな、さもなければ扉が開き私が此方に戻っていませんからな」

 結局、3人の会議になってしまっている。

 時間が掛かって良かった事は、水の里の食料庫にウナギや寿司や天ぷらが足ささり水美の機嫌が良くなった事だろう。


「これ以上、放っておけば舐められますよ」


「だがな、戦争と言う訳にも行かないだろう」


「俺と天狗さんと知世に宣姫で終わりますよ」


「我が娘があんなに無能と思わんだった」


「まあ、そう言わないで」


「知世殿と宣姫は精神的にまだ幼いからなぁ……大目に見てあげないと」


 天狗さんが仲裁している。


 オレが陰陽師の数を減らしているのと、相手の動きが鈍いので水神様も優柔不断になっている原因だ

 特に俺が困る要因が無いので強く主張はしない。来たら叩けば問題無いし水郷城が政治的に立場が悪くなっても水郷境には大きな問題が無い。

 水神様だって分家の暴走時に何もしなかったのは確かだ。今回は意見を言いながら高見の見物をするつもりだった。


 結局、答えは無く次回の幹部会に持ち越しとなった。


「哲司よ、何故強く主張しない?」


「開戦の責任を河瀬の家が持つ必要は無いですもの」


「成る程」


「始まれば精一杯頑張りますけど、水神様の意志を尊重しますよ」


「天狗の里を空け過ぎた。今日は仕事だ」


 天狗さんが帰って行った。


『城の周りは大丈夫?』


『問題無いぞ』


『ソソクサ帰って行ったけど、あの女カラス天狗さんが大変そうだね』


『風の精霊の分を誰かが引き受けないとな』


 水美さんが笑っている。


 屋敷の居間に、知世さんと宣姫がションボリしていた。


「大分怒られた?」


 二人で頷いている。


「今度しっかりやれば良いよ。水神様に、ご免なさいして城の風呂にでも入って来れば。噂では身体に良いらしいから」


 この二人は直ぐに復活する。


「また昼の7つくらいまで仕事ですか?」


「早く終わるのを望んでいるのだけどね」


 皆で笑って別れた。


 水神様の風呂は本当に効くので、水の里に来れない知世さんには毎日のように城の風呂に行って欲しいのは本心だ。

 宣姫や水神様と入ると効果が高く、知世さんの回復に大きな影響が有る。


『我々も行こう』


 水美に言われて水の里に行った。実は今朝も半日くらい水の里に居たのだ。

 昨夜知世さんと、とても仲良くなったらゴッソリ知世さんに持ってかれて呼吸困難になって水美に助けて貰っている。

 水美曰わく知世さんが良くなって来ているので、より力を必要としているらしい。俺の妖力まで半分以上一気に吸い取ったらしく、俺が倒れたのだ。

 知世は何時ものように俺が意識を無くしていると思って、隣でぐっすり。

 俺は意識が戻った途端に水美にSOS。水美が直ぐに戻してくれたけど慌ててしまった。


『仕方無いだろう。知世に悪意が有る訳では無いのだから。亭主として喜ばなくては』


『そうなんだろうけど……夫婦で水美に迷惑掛け過ぎだよね』


『気にするな、知世がいかに壊れていたか分かったろう』


 水美と風呂に入って自然回復をさせ、ビールと寿司にした。


『風の精霊はどうなってしまったの』


『こないだ蟄居になって、風の精霊がキレてな。自分の責任では無いと天狗に呼ばれても返事もしなかったらしい。それで天狗も怒って風の精霊を無視しているようだ』


『ナンカ凄い事になっているようだね。俺がナンカやったら教えてね水美に嫌われたく無いもの』


『哲司は大丈夫だ。もっと甘えて良いぞ』


 水美には夫婦で気を使って貰っている。申し訳ないと本心から思っているのだが、お返しのしょうが無い。

 とか言いながら水美に甘え切って、体力回復に風呂で寝たりして過ごす。


『天狗さんさ、何で飛翔で水郷城に帰れなかったの』


『能力の制限された飛翔を使っているのだと思うぞ。知世は宣姫に貰った飛翔だから水郷城に帰れるし、哲司のは妾が水の里対応に代えておいた。天狗は誰も更新してやって無いのだと思うぞ』


『天狗さん強いから皆が持っていると思い込んでいたのかも知れない』


『今回の騒ぎで水神が慌てて代えているだろう』


 水美が楽しそうに笑っている。


 天狗さんから連絡が入った。直ぐに会う事になって屋敷の居間に帰った。


「済まないな、安全に話せる場所が思い浮かばなくて」


「構わないですよ」


 確かに屋敷の居間は安全な場所だ。


「まだ確認中だが、4日程前に俺の前の嫁が誘拐されたとアッチの親が騒いでいるようだ」


「へー、既に無価値の女小天狗を誘拐?」


「俺がやったと言い掛かりを付けて来たらしい」


「やっと追い出したのに?」


「騒げば金になると考えているようだ」


 ナンカ凄い困った家族。


「みっともないから、天狗の里と水郷城の一部でだけ公式にしといたら、笹美城辺りで天狗の嫁でフラフラしていたと言う報告も有る」


「それで笹美城側に誘拐されたと?」


「そう考えると話が楽だ」


「有り得ると言えば有り得るね」


「俺としては、あんな馬鹿女を誘拐して違った世界にでも飛ばしてくれた方が嬉しいのだけど、奴等が図に乗って次々と何かすると怖いなと思ってな」


「水神様に話を預けましょうか?」


「なら、もう一度探して本当に行方不明なのか確認するよ。また茶番劇の可能性も有るから」


 天狗さんも苦労が多いなと思った。




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