第3章01話
第3章01話
執務室で能力で一覧を見ていると《透明》と《気配》が生えていた。
『水美、気配は気配消しと同じ?』
『違うぞ。自分の気配も消せるが、他人が気配を消しているのも感知出来る。《気配》と唱えると両方まとめて働き出す』
『透明も生えていた』
『哲司の透明は気配も無くなる』
便利になったような気もする。もしかしてと思って知世さんを呼んだ。
宣姫達と居間から1階に降りて来た。
「知世さん、透明と気配が生えてない?」
知世さんが一生懸命探している。この人は自分の能力を見ることは無いのかも知れない。
「有りました!」
『水美、俺のと同じ?』
『同じようだな。哲司から取った可能性が高いな』
宣姫が羨ましそうに見ている。
「宣姫さんは消えれないの?」
「まだみたいです」
「知世さん、数珠をあげなよ」
「良いのですか!」
知世さんが嬉しそうに言って、宣姫に数珠をあげている。
「こ、これって凄く高価な物なのに……良いのですか?」
「いいよ、でも普段に悪用したら駄目だよ。妖力の強い人なら直ぐに分かるから」
「ハイ!」
一眼姫とピョコリ瓢箪が、自分も出来ると消えたり現れたりしてアピールしていた。
「お母さんに見せて来ます!」
全員で消えて行った。
『余程嬉しかったのだろうな』
『そうみたいだね。宣姫なんて何でも出来そうなのに』
『まだ若いから、神の子でも全て持っている訳では無いからな」
天狗さんから連絡が来たので、居間に行った。
「やっと確認出来た。芝居では無く本当に攫われたらしい」
あれから4日経っている。
「物好きな」
「俺もそう思うが、小者の目撃が有ったので確かみたいだ」
「何処で?」
「笹美城の繁華街で人間に化けて酔っ払っている所をやられたらしい」
「女目当ての人攫いじゃないの?」
「陰陽師が5人だそうだ」
「笹美城の奴等、天狗さんが離縁したのを知らないのかな?」
「知らない者の方が多いかも知れない。離縁をしたのを知らせて無いからな」
「宣伝しとかないと、次の嫁さんが見つからないよ」
「懲りた、暫く要らん」
『女難だな風の精霊でも苦労しておる』
『水美、止めてよ笑ってしまう寸前だったよ』
「行方不明は水神様に知らせた方が良いよ」
「面倒だな」
「そう言わないで」
「仕方無いな……」
「もう8日くらい経つているから、早くしないと」
「行ってくるわ」
天狗さんも城に行った。
俺は執務室に行って書類を探していると、水神様から呼ばれた。
『今日くらいは仕事をしょうと思っていたのに』
『仕事をしているように、周りに見えているのが大切だ。そうでないと時間が作れ無くなる』
水美の言う通りだ。仕事の一つ水郷城に行った。
「哲司殿、忙しい最中済まないな」
「これも仕事ですから」
「そう言えば、娘が凄く喜んで見せに来たぞ。あのような物を貰って有り難く思っている」
「知世が何時もお世話になっているので、御礼ですよ」
一通り、話をして本題に入った。
「どうしたら良いと思う?」
「天狗さんが離縁してますから、奴等が捕らえたのは正式にはただの妖怪で無視しても良いのですけど……少し問題が残ります」
「何か懸念が有るのか?」
「つまりですね。奴等から見て天狗夫人を誘拐したという事は、次に知世や宣姫に手を出す可能性が有るという事になります」
水神様の顔色が変わった。
「そろそろ報復するべきだな」
水神様の論調はコロッと変わった。自分の娘が話題となると話が違う。
「どんな報復にします? 徐々に締め上げるのか、サクッと片付けるのか」
「余り一気にやると犠牲が多過ぎると思うぞ。例えば笹美城は広い盆地のような場所に在るから、豪雨で水に浸けてしまうと百姓達まで逃げる暇が無くなる」
天狗さんが以外に優しい。
「豪雨が一番楽なのだが」
流石、神様は丸ごと片付けるのが好きだ。
「笹美城の城下だけ干ばつにしません?」
「笹美城の城下だけ?」
「そうすれば周辺の農家に、それ程迷惑を掛けないですし」
「どうやるのだ?」
「最初は井戸の水位を半分くらいにしてしまってから、笹美城下の雨を3分の1くらいにするんですよ。最初は奴等、今年は変な天候だと思うだけだと思うだろうし」
「これから夏だし面白いかも知れないが、暫くは水郷城の報復には見えないぞ」
「小者達の力を借りて、水郷境の周囲、広範囲に居る陰陽師を見つけ出して全滅させます」
「それは示威行為に良いな」
「それが終わったら、笹美城の陰陽師を徐々に倒してゆきます。笹美城から話し合いと言って来ても水神様は無視すれば良いですよ」
「無視しても何か言って来たり、何か報復措置をして来たら井戸を涸らして雨を止めれば良いしな。哲司殿、面白い考えだな」
「最後は30日連続豪雨で沈めるなり、何でも出来ますよ」
「とりあえず、私は何をすれば良い?」
「すぐに笹美城下の井戸水位を半分以下にして下さい。降雨量は3分の1くらいに調整して」
水神様の得意分野なので話が早い。
「やり終えたぞ」
「一気に水位を下げたんですか?」
「徐々にやると疲れる。一気になら1度の仕事だからな」
水神様は美人だし良い神様だけど、結構面倒臭がりだ。
「哲司殿、天狗の件にしても何故笹美城はこんなに強行策を取って来るのだろうな」
「水郷境での、もめ事が有ったので其れが原因かも知れません」
「どんなもめ事なのだ」
「水郷境に野良陰陽師が入っていたり、人間のふりをした悪霊が大量に居ましたので代官側に水郷境出入り担当者を4人程追放にする事にしたのです」
「素直に言う事を聞いたのか?」
「代官側は自分達の権限だからと拒否して来たので、代官がやらないなら俺が責任者全員を斬り捨てると宣言したところ、渋々その者達を水郷境から出しました」
「哲司殿は強行だな」
「甘い顔をしていると、何時までも分家が緩めた基準でやってますから」
「哲司殿は本気で斬るつもりだったのか?」
「代官以下全員斬り捨てる気でした」
「そりゃ代官も引き下がるな」
天狗さんが大笑いしていた。
陰陽師の件は明日以降にして欲しいとの事なので、解散した。
城の中を透明になって走り回っている連中がいた。
「哲司、天ぷらでビールでも飲むか?」
「良いですね。喉が渇きました」
いきなり宣姫達が現れて手を上げている。
「全員で行こう」
天狗さんが苦笑いして、2人と2妖怪を見ていた。
「天狗様、御屋形様、イラッシャイ」
「今日は何が御薦め?」
「大きなエビが美味いよ」
「じゃエビ天丼4つと、俺と哲司にエビ揚げてくれ」
俺に米を食べさせない気だ。我々にビールが出されると抗議が出た。
「私達もビール」
城の中を走り回っていたので、喉が渇いているようだ。
「水郷境は落ち着いて来たのか?」
「やっとね。分家と悪さしていた連中も追い出したし。だから後ろの笹美城がキレているみたい」
「困ったモンだな」
「天狗の里は?」
「同じだ。あの馬鹿女とつるんでいた連中は全員天狗の里から追放してサッパリした。俺の個人用遊び金を両親に送ったので、現在返金か大天狗に攻められるか選択中でな」
「それで誘拐を天狗さんの仕業にしたかった訳」
「そうなのよ」
出て来たエビ天ぷらは最高に美味かった。
『哲司、もっと頼め』
知世さん達はとっくに追加注文している。
水美さんに急かされて、エビ天ぷらとエビのかき揚げを注文した。




