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第1章10話

第1章10話


 一眼姫とピョコリ瓢箪が団子を食べ終えたので提案した。


「隣で蕎麦を食べようよ」


 皆で蕎麦屋に移動すると天狗さんがビールを飲んでいた。


「来るのが遅いぞ」


 知世さん達に天ぷら蕎麦を頼み、俺はビールと天ぷらだけ注文した。

 どうせ天狗さんと飲むと、つまみとビールで満腹になってしまう。


「天狗さん、笹美城で上手く行きました?」


「おお! 凄く儲かった」


 何処かの賭場が潰されたのだろう。


「哲司は?」


「さっき山賊を退治して。まだ数えていないので、幾らになったか分からないですね」


「相変わらず豪気で良いな」


「奥さんは」


「相変わらずだ。放って置くのが最良だろう」


「また稼いだ小遣いを取られないようにね」


「任せろ」


 知世さんが話しを聞いて笑っている。

 中年の店主さんが一生懸命調理している。ビールを持って来たオバチャンが奥さんだろう。


「「乾杯」」


 理由も無く天狗さんと乾杯してビールを飲む。


「ここのビール、美味いですね」


「うん、俺もそう思っていた」


 オバチャンに聞くと自家製だそうだ。要するにエールね。

 蕎麦と天ぷらも出て来た。エビ天ぷらで大きい。


「これ海から?」


「目の前の川ですだ」


「川エビ!」


 天狗さんが、こっちの川エビは大きいと教えてくれた。

 甘くて美味しいエビだ。

 ついビールと天ぷらの追加をしてしまう。


 天狗さんは昨日、笹美城で賭場を3ヶ所荒らしたらしい。


「当分、笹美城には行けないですね」


「関係無いよ。ヤクザはまだまだ居るから」


 笹美城という首都は相当大きいらしい。


「妖怪の賭場荒らすと嫌われるからな」


「妖怪も賭博するのですか?」


「俺がやってるじゃない」


 確かにそうだ。賭けに行く妖怪が居れば、賭場を開く妖怪が居ても良いと初めて気が付いた。


「でも、妖怪の賭場って成り立つのですか?」


「何で?」


「妖術で心を読んだり、結果を変えたりしません?」


「妖怪の賭場は、それが出来無いように結界が張ってある」


 今日は勉強になる事が多い。



 話しをしていたら遅くなってしまった。


「早く行かないと宿場町に行くと夜遅くになりますよ」


 知世さんから忠告が入った。


「宿場町か、俺が送ってやる」


 天狗さんから申し出があったので、喜んで受ける事にした。

 知世さんが支払いを済ませると、天狗さんが瞬時に宿場町に連れて行ってくれた。


「まだ夕刻まで大分時間が有るけど、宿を取ってしまおう」


「俺は賭場を探す」


 天狗さんが懐手で歩いて行った。


 広めの部屋と家族風呂が有る宿を探すと、3軒目に在った。

 知世さんが先払いで粒銅で払っている。


「大分減りました」


 部屋に案内してもらい晩御飯の予約注文をして、ゆっくりとする。


「さっきの山賊のお金を数えないと」


 一眼姫が天狗皮袋から出して分類してくれた。

 金貨が234枚と大銀貨が196枚、銀貨が333枚と山ほどの銅貨類。

 知世さんがまた一眼姫の手を借りて銅貨の分類をしている。また元に戻ったような気がする。


 財布の中に数珠が入っていた。黒い小さめの数珠で作られた腕輪のようだ。


「何だろう?」


 一眼姫が手に取って見ている。


「移動の腕輪だな」


「どう使うの?」


「腕にはめると見える範囲で瞬時に移動出来る」


 早速左腕にはめて使って見る。


「場所に狙いを付けて《移動》と唱えるのじゃ」


 部屋の端に立ち、反対側に狙いを付けて唱えた。


「移動」


 気が付くと反対側に居た。


「便利ですね」


「逃げる時、攻撃の時など便利だろうな。太さは妖力で調整されているので、常に付けている方が良いぞ」


「そうします」


 飛翔枝と移動数珠、貴重な物を2つも手に入れてしまった。


「飛翔枝とか移動数珠みたいに移動するのは妖具に頼るのが多いの」


「そんな事は無い。儂も天狗も妖術でやってるではないか」


 俺が無能なだけだった。


「夕御飯までヒマですから宿場町見物をしませんか」


 知世さんの提案だからすぐに乗る。

 宿場町だけあって宿屋が3軒、土産屋が2軒、茶屋が3軒、衣料と旅道具の店とか色々有る。警備のお役所は中心部に有る。道路は4方向に伸び、今回我々は使わないが川の渡しも有る。


「面白そうな物は無いですね」


 知世さんがガッカリしている。買った物は椿油みたいな物だけだった。


「こういう所は仕方無いですよ。観光地でも無いですし」


「お茶屋さんに入りましょう」


 知世さんが皆を引っ張って茶屋に入り、大福餅を頼んだ。

 皆、夕御飯が近いのに美味そうに食べている。俺は紙に包んで袴のポケットに入れた。


 町並みは日本風だけどナンカ違う。建物も色もビミョーに違うのだ。映画に出てくる吉原みたいかな。でもチョット違う。

 違う世界だから当たり前ナンだけど、日本の昔に似ているから違和感が有るのかもしれない。中近東とか西洋的だったら何も思わず素直に受け入れているだろう。


 ぼーっと考えていたら夕刻が近くなって来た。

 陰陽師みたいのが2人歩いて来る。我々を睨むように見て立ち止まった。一眼姫とピョコリ瓢箪を見ているようだった。


「そこの者、見えているのか?」


「見えてますし、どちらも私の連れだが」


「私達に引き渡す事を要求する」


「断る!」


「既に妖術封じは掛けてある。素直に引き渡すことが其方の安全でもあるぞ」


「私を脅そうと考えているのか?」


「我々は都から来た妖怪退治の陰陽師である。素直に従う事を勧めるぞ」


 役人達も現れ我々のやり取りを見ている。


「私の名は河瀬哲司。武家である。都の陰陽師風情が失礼極まり無いぞ。謝れ」


 役人達が慌て始めた。この世界では武家はとても偉いのであります。侍や陰陽師風情が対等に口をきける相手では無い。


「そこの役人、これを」


 俺は関所札を懐から出して見せる。侍が寄って来て両手で礼をしながら関所札を受け取った。


「河瀬哲司様である事を確認させていただきました」


 役人は両手で頭を下げながら関所札を返してくれた。


「そこの陰陽師が我々に、いきなり妖術を使ったそうだ。御法度ではないか?」


「左様にございます」


「ならば其方は如何致す?」


「そこの2名を引っ捕えよ!」


 陰陽師達はお役人に縄になり、我々はお役人に礼を言って早々に宿に戻った。


「知世さん、婿になっておいて良かったよ」


 知世さんが嬉しそうに笑っていた。



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