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『億り人だった私、老後資金が底をつく前に異世界を救います』 〜今日も散財して召喚しまくってます〜  作者: talina
第六章

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第64話 封印の楔

 誰も言葉を発さない。


「世界は一度」


「食われかけた」


 リリアスの言葉が、まだ心から離れない。



 ヴァルドが低く言う。


「……それで」


「その化け物と」


「魔王の封印がどう関係する」


 リリアスの赤い瞳が細くなる。


「関係はある」


「むしろ」


「同じものじゃ」


 ひかりが思わず声を漏らす。


「え?」


 リリアスは言った。


「わらわの封印はな」


「わらわを閉じるためのものではない」



「大地の下のものを」


「抑える楔じゃ」


 塔の空気が凍る。


 セレナが息を呑む。


「そんな……」


 リリアスは続ける。


「数百年前」


「世界は滅びかけた」


「その時」


「三つの力で封じた」



 ひよりが聞く。


「三つ?」


 リリアスは指を三本立てた。


「魔」


「精霊」


「そして」


「人」



 レグルトが眉を寄せる。


「人……?」


 リリアスは頷く。


「人間の至高位大魔導師」



「名は――」


「グラン」



 その名前に、ひかりが顔を上げた。


「えっ」


 ひよりも驚く。


「グランって……」


 レグルトが言う。


「まさか、師匠が……」



 リリアスは静かに言う。


「そうじゃ」


「封印の術式を作ったのは」


「奴じゃ」


 ヴァルドが腕を組む。


「つまり」


「グラン殿が」


「世界を救った?」


 リリアスは少し笑う。


「正確には」


「今も救い続けておる」



 ひかりが目を瞬く。


「……どういう意味?」


 リリアスは静かに言った。


「グランが召喚獣を二体しか呼べぬのは知っておるな」


 ひかりは思い出す。

 確かにグランはそう言っていた。


「自らの魔力を封じることで封印を続けておるのじゃ」


「だからなの……」


「だが、グランが死んだら封印は解ける。そこで、あやつは分霊体を作ったのじゃ」


「あの若いグランがそうなのね」


「本来、グランが老いて死んだ時に、後を引き継ぐはずじゃった。だが、新たな思想に感化されたようじゃな」


 リリアスの表情が険しくなった。


「わらわの封印を解く方法は二つじゃ」


「一つはグランを殺すこと」


「もう一つは、深層へ行くことじゃ」


 ひかりは言葉を失った。


 ヴァルドが呟く。


「……狂ってるな」


 リリアスは肩をすくめた。


「選択は一つじゃろう?」



 そして続ける。


「つまり」


「深層へ行けば」


「封印の核に触れられる」


 ひかりが顔を上げる。


「じゃあ!」


「そこに行けば」


「魔王の力を使える?」


 リリアスは頷いた。


「可能じゃ」


「ただし」


 赤い瞳が鋭くなる。


「そこは」


「“あれ”に最も近い場所じゃ」


 ひかりは少し考えた。


 そして。


 笑った。


「じゃあ」


「行くしかないね」


 ヴァルドが笑う。


「決まりだ」


 レグルトは静かに拳を握った。


 リリアスは呆れた顔をした。


「正気ではないな」


 そして言った。


「深層へ行く道は三つ」


「深層門」


「その一つが」


「すでに開きかけておる」


 ひかりが聞く。


「どこ?」


 リリアスは答えた。


「ルーメリアじゃ」


 塔の上に、重い沈黙が落ちた。

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