第9話 突入
~突入~
旧校舎と呼ばれるのは、以前は中学校として使われていた校舎のことだ。市街方面から山に続く橋を渡って左側にあるのが現在の校舎で、右側にあるのが旧校舎である。元が昔の中学校なので、現校舎よりも旧校舎の方が大きかった。
そして田舎だからなのか、どちらの校舎にも広いグラウンドがある。
しかし旧校舎のグラウンドは、今では大量の雑草が生えてしまっていて使い物にならない。
現校舎では、体育館は校舎から離れた場所に独立して建っていた。その為、体育の授業の前になると生徒は貴重な休み時間を、着替えと体育館への移動で消費することになる。
そして体育館には、二階に運動コートがあり、一階には図書室、家庭科室、理科室、調理実習室、多目的室などが入っている。なので移動教室の場合は体育館へ行くことが教師や生徒の日常となっていた。
しかし旧校舎は、体育館の作りは現校舎と同じだが、校舎と体育館が短い渡り廊下を通して、そのままつながっている。
いつも体育館への移動に時間をかけていた秋達にとって、旧校舎の作りはとてもうらやましかった。
「よし、じゃあとりあえず色々と確認しとくよ。ご清聴よろしく」
山中先生がぱん、手を叩き、秋たちに声を掛ける。
秋たちは今、旧校舎の裏口にいる。裏口とは言っても、来客や職員達が出入りするための玄関となっているので、大人から言わせればこっちが表口というのが正しいのかもしれない。
「まず、森下さんは図書室に行くんだよね。秋くんたちはどうするの?」
「もっちろん俺たちは旧校舎探検だよ。なあ?」
秋の代わりに直がはりきって答えた。
「あー。初代校長の像とか探すんだっけ?私が通ってた頃は正門を入ったところに立ってたんだけどね。そういえば、いつの間にかなくなってたなあ」
「へえ、そうなんだ」
直が相づちを打って応じた。
「もしかしたらもう捨てられてる可能性もあるかもねえ」
山中先生は大して興味が無さそうに言う。しかし、そんなことでへこたれるような直ではない。
「それなら何人ものガキたちを地獄に送った悪魔の絵を探すさ。なあ?」
直がそう言いながら秋に目配せをする。
「そんな絵じゃないはずだけど。そうだなあ・・・」
秋はうーん、と考える仕草をする。
「んじゃ、あなた達は自由にしなさいな。私は森下さんを図書室に案内するから」
うす、と直は運動部のノリで返事をした。そういえば直は以前、バスケットボールクラブに入っていたと話していたな、と秋は何とはなしに思い出す。
「今は・・・13時過ぎか。なら15時までにはここに集まること。いい?あと、備品は絶対に持って帰らない。わかった?」
はーい、と各々が返事をする。それなら桃子との約束の時間には間に合いそうだと、秋はひとまず安堵した。
「では、入りましょうか。あ、中に入ったら一応、上靴に履き替えてね」
山中先生はポケットから鍵を取り出し、玄関についている鍵穴にそれを差し込んで回した。
がちゃり、と大きな音を立てて鍵が開いた。
そうして、山中先生を先頭にして秋たちは旧校舎に入っていく。
そんな5人のことを、4階の美術室から誰かがじっと見つめていたのだが、誰もそのことに気づくことはなかった。
次回は13日の16時に更新予定です。