江東晴と女子会
ある日、ママ友の一人からお嬢さんの結婚が決まったと聞かされた。
まあ!本当におめでとう!
嬉しくて嬉しくて、あのお嬢ちゃんが……大きくなって……
最近綺麗になったと思っていたら、そうゆうことだったのね。
お茶を飲みながら積み上げられたブライダル雑誌から一冊手に取りパラパラ捲る。
綺麗なウエディングドレスに華やかなカラードレス、白無垢に色打ち掛け、振り袖着れるのも最後よね〜どれもこれも素敵だわ!
あら、母の手作り特集?一体何を?
近頃は母のお色直しまであると聞いて、一体誰が主役なの…と思っていたけど、これはその対極かも…と捲ってみれば
ウエディングドレス、ベール、リングピロー、ウェルカムボード、ウェルカムドール、ストッキングバンド……ありとあらゆる小物類にブーケやブートニア、ベール用花冠まである。
可愛いわぁ〜良いわねぇ〜憧れるぅ〜
うちの娘だったら、と妄想しかけて全力理性で思い止める。今はそれどころじゃなかったわ。
ホント、女はいくつになっても夢見る夢子ちゃんだ。と実感する。気を取り直して会話を続けるが、長い付き合いだけあって見抜かれていた。
「ふふっ…晴ちゃん、そうゆうの大好きよねぇ。手先器用だし、羨ましいわぁ〜そんな小物類見てたら幼稚園の入園グッズを思い出すわねぇ。かなりの気合い入れて作ったものだわ」
「そうねえぇ。じゃあ、そんな懐かしい思い出と一緒に手作りしてみたらどうかしら?」
姑からの手作り品は引かれるかもしれないが花嫁の母なら受け入れられやすいと思う。あぁ、良いなぁ〜
「出来るかしら…………思ってはみたけど、もうひとつ勇気が出なくて……ねぇ、晴ちゃん、一緒に手伝ってもらえないかしら?」
「喜んで!」
考えるより先に答えた私は粗忽者……ここは遠慮しておくところじゃないかと、後からちょっとだけ思ったけどもう遅い。もう同意しちゃったし、何より楽しそう!
二人で雑誌を覗きこみ、きゃあきゃあ騒ぐ様は年齢なんて関係ない。
無難なのはリングピローとかお裁縫物だけど、綺麗な生花を使ったブーケや揃いの花冠は心惹かれる。
しかも後日押し花にして額縁に入れたら飾れるのよ!
よくわからない人間が二人してうだうだやってても進展はない。とりあえず、ダメもとでもう一人の友人に連絡してみたら在宅で暇にしてると言う。
遠慮する幸子さんを引っ張って訪ねてみれば、素敵なイングリッシュガーデンを見渡せるテラスには既にアフタヌーンティーが準備万端整えられ、ブライダルサンプル写真集が置かれていた。
この素敵なお家の女主人と言うには可愛いらし過ぎる彼女はボタニカルな花柄ワンピースに白いフリフリエプロンでにこやかに迎えてくれた。
実を言うと彼女は結構有名なフラワーアーティストだったりする。仕事は選んで選んでなので、あまり表に出てくることはないが……
「杏花ちゃん、急に押し掛けてごめんなさいね。こちら朱鳥幸子さん。お嬢さんの結婚が決まってブーケとかの相談に乗ってほしいの」
「初めまして。今日は急に我が儘言ってごめんなさい。どうぞ幸子と呼んでくださいね」
「初めまして。どうぞようこそ。織野杏花と申します」
色々お喋りしていたら、杏花ちゃんが涼風ちゃんを生んだのは21歳の時で、今回結婚する明音ちゃんとは三歳しか違わないことも判明。それなら…と次回から明音も加わってフラワーアレンジメント教室という名の四名の女子会は日中、子供達のいない間に度々催された。
これにて完結とさせていただきます。
これまでお読みくださいまして本当にありがとうございました。
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感謝をこめて。
樹森真椰




