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8-3 甘やかされてま……す?

 ーー嫌な予感的中です。

 お手洗いから戻って来て「私が」 と言ったオズバルド様。パンで出来たお粥っぽい食べ物をアズの代わりに私に食べさせてくれようとしてます。

 アズと「やらせて欲しい」「ダメです」 の押し問答を繰り返すこと十五回。流石にアズが折れました。そこまで頑張ってくれたことに感謝するべきなのか十五回で諦めたことを複雑に思うべきなのか。……いやいや、頑張ってくれてありがとうと感謝の方ですね!

 というか。

 アズに十五回も断られている時点で諦めましょうよ、オズバルド様。なんでそんなに私に食べさせたいんでしょうか。

 そんなわけで、十六回目にして折れたアズから皿とスプーンを受け取り、スプーンでパン粥を掬ってからフウフウと熱いのを冷ますように息を吹き掛けています。

 いや、気持ちは分かります。

 熱いと火傷をするかもしれないって思っての事なのでしょう。

 でも、十五回の遣り取りで結構冷めているだろうなって思いますし。ロイスデン公爵にそっくりな美少年が必死に冷まそうとする姿が、ハッキリ言ってシュールだし。しかも吹きかける息が強すぎてスプーンからパン粥がかなり溢れまくってて最初に掬った量の半分くらいになっているし。

 なんて言うか。

 頑張りは認めるんだけど微妙に残念と言いますか。

 隣で見守るアズは残念な子だ、という顔を隠し切れてません。隠して、隠して!

 お相手は公爵子息だよ!

 それからオズバルド様はスプーンを私の口元に持って来ました。

 閉じたままだったらどんな反応をしてくれるかな。

 なんて意地悪めいたことがちょっと頭を過ぎりましたが、素直に口を開けてみました。

 プルプルと震える手で口の中にスプーンを入れて来ようとするのですが、歯にガチンと当たって入らない。

 というか、地味に歯が痛い。

 入らなかったパン粥は皿の中に逆戻りです。

 私、結構大きく開けたつもりですけど、思った程開かなかったのでしょうか。それともオズバルド様が、あまりにも下手だったのでしょうか。或いはどちらも、なのかもしれません。兎に角、歯に当たって所謂「はい、あーん」 という餌付け行為は失敗しました。

 さて、オズバルド様はどうします?

 諦めるか。もう一度チャレンジしてみるか。私としてはチャレンジ精神は捨てて来て欲しいんですけどね。

 そんなことを思いながらオズバルド様の顔を見れば、涙目になりながら皿とスプーンを交互に見比べて。

 ……もう一度トライを始めました。

 あー……。トライする方でしたか。そうですか……。

 こうなると、何処からやり直すのか知りたい気がして、ジィッと見ていたら。フウフウと息を吹きかけて冷ます所からでした。マジか。

 そして案の定スプーンの上からパン粥が吹きかけられた息の勢いにより少なくなっていく……。同じことを繰り返すとは思わなかったけれど。

 よくよく見ればオズバルド様は、とっても必死に冷ますことに集中してる。

 ロイスデン公爵様によく似た顔立ち……つまり美少年が、必死になってパン粥を冷まして。シュールだなって思っていたはずなのに、二度目はなんだか可愛く見えて来た。なんでかな。同じことの繰り返しなのにね。

 でもそれは。

 それだけ私のために一所懸命になってくれているってことであって。

 日本人だった頃から、一所懸命頑張っている人を見ると、最初は「そんなに頑張って馬鹿みたいね」 なんてちょっと見下したように見ているのに、頑張っている人を馬鹿にするなんて何様なんだろう、私はそこまで偉い奴じゃないよね。人の頑張りを馬鹿にする、そんな私こそ馬鹿なんじゃないかなって思うようになって。いつの間にか頑張っている人を応援するようになって。

 結局。私は頑張っている人を見るのが好きなんだと思う。それはきっとネスティーという新たな人生を送っていても変わらない部分で。

 なんだかんだで、こんなに一所懸命になっているオズバルド様が可愛く見えて、頑張ってって応援したくなって。

 冷め切っているだろうパン粥が、今度こそ私の口に上手く入るように此方も調整してみようかな、なんて思いながら、早く。早く食べさせて欲しいな、と我儘なことを思う。

 ーーちなみに。

 この後も二回失敗したオズバルド様。同じことを繰り返すこと四回目でようやく私の口の中にパン粥が入って。

 冷め切ったというかもう冷たかったけれど、出来た! と言わんばかりにドヤ顔をしたオズバルド様が益々可愛く見えたのは、私の精神年齢がプラス四十五歳だからなのかもしれない。

 なんだか幼児が頼まれたおつかいを達成した時のドヤ顔に見えたんです。


「美味しいです、オズバルド様。ありがとう」


 ドヤ顔オズバルド様があまりにも微笑ましかったので、私も釣られて笑みを浮かべてお礼を伝えました。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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