8-2 甘やかされてま……す?
結局太陽が中天にかかるまで寝入っていた私が目を開けると顔を真っ赤に染め上げたオズバルド様と視線がバッチリ合った。……なんで?
良く分からないまま少しの間視線を合わせているとオズバルド様が急に震え出し。……えっ、ど、どうしたのでしょう。
「ネスティー、起きたのなら、て、手を離してもらえないだろうか」
オズバルド様の震える声。そして言われた言葉。
取り敢えず私の両手を視線で辿れば左手は布団の上だけど右手は何かを掴んでいた。
ギュッと掴んでいる物の先を辿れば手から腕、肩と視線が行き最終的にオズバルド様の身体と顔に視線が当たる。どうやら私は何故かオズバルド様の左手をギュッと握りっぱなしだったらしい。
気付いて慌てて離せば真っ赤な顔をしていたオズバルド様がダッシュで私の部屋から出て行った。……私、オズバルド様を拘束していたってこと?
でもオズバルド様なら私の拘束なんて何ともないよね。
「お嬢様」
ドアが開けっ放しで入れ替わるようにアズが入ってくる。笑いを噛み殺すアズに首を傾げた。
「アズ?」
「お嬢様の頭を撫でていたオズバルド様の、その手をお嬢様はお気に召したのか、眠りに引き込まれる寸前ギュッと手を握られたのはご記憶にございますか」
「……ない」
「まぁそのまま眠ってしまわれたので、そうでしょう。それでオズバルド様は身動きが取れなくなってしまわれたようでして」
「なんで?」
いくら私がオズバルド様の手を無意識に握ったとしても、力の差は歴然。振り解けるはず。
「もし手を振り解いて、折角お休みになられたお嬢様がお目覚めになってしまわれたら……と考えたら振り解けなかったようですよ」
つまり。オズバルド様は私の睡眠の妨げにならないように動かないことを選んでくれていたのか。
「ただ、朝早くにお嬢様の様子を見にいらして、そのままこの部屋にずっとおりましたからね。生理現象に限界が来ていたという事でしょう」
それってつまり、お手洗いに行きたくても行けなかったってこと?
あの真っ赤な顔って要するに漏らしてしまうかもしれないのを我慢していたってことか! そりゃあダッシュもする。オズバルド様には悪いことしちゃったなぁ……。
「あれ? じゃあお腹も空いているだろうし、喉も渇いているんじゃないの……?」
オズバルド様、飲まず食わずで私が目覚めるのを待っていたってこと? それは本当に申し訳ない。
「左様でございます。ヘルムがおそらくオズバルド様を捕まえて、食事を摂ることを勧めている頃合いでしょう」
捕まえてって、逃げ出した猫を捕まえるんじゃ無いんだからさ。もうちょっとアズはオズバルド様を尊敬してもいいと思うの。
まぁ取り敢えず食事が出来るなら良かった。
「それでお嬢様の具合はいかがでしょう」
熱は下がったと思うけれど食欲は無い。水を飲んだらそのまま、またベッドに逆戻り。
「食欲ない」
「困りましたね。お嬢様は体力を付けている最中なのですから食べる方がいいのですが」
「じゃあスープがいい。スープなら口に入る」
「それだけでは体力が付きません」
とは言いながらもスープは持って来てくれるはず。本当にスープだけでいいんだけどなぁ。しかも具無しで。スープのみでいいんだけど。でもアズの顔を見るに、それだけでは許してもらえなさそう。……困ったなぁ。
なんて思っていた矢先に、ヒルデが現れてスープにパンが浸された物を見せられた。パンのお粥のような。
アズが皿を受け取りスプーンを入れようとした時だった。
「待ってくれるか。私がやりたい」
……オズバルド様が戻ってきました。
オズバルド様、ご飯はどうしたのですか? そして私がやりたいって何を? 何をやりたいって話なんですか!
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