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5-2 先ずは太陽の光を浴びます

「いい日和ですねぇ」


 アズの口から日和。ひよりだって日和。違和感仕事しないで! 分かってる! アズの口から昔懐かしい日和なんて言葉を聞く事の違和感は分かるから! でも、これはこういうものだから!


「いい天気だよね」


 そう、いい天気なら違和感が仕事をしないのよ……。日和なんて前世でも、ふとした時に聞かなくなった言葉だから違和感が仕事しただけなのよっ。アズは悪くないの。違和感が仕事をした私が悪いのよっ。


「お嬢様、体調は如何ですか」


「大丈夫」


 そんな現在、お庭に丸テーブルと椅子が出されてまったりと日光浴中です。

 そういえば、ロイスデン公爵家に行った時のことを思い出しました。百合が綺麗でしたけどもね、ロイスデン公爵家から帰宅したら途端にヘロヘロになってベッドでおやすみなさい、でした。体力無いなー。まぁだからこそ、アズは現在体調をちょこちょこ確認して来るのでしょうが。


「それなら安心です。それで、お嬢様のお話とやらをお聞かせください」


 私の隣にアズが座り、その隣にヘルムさんが座って三人でお茶を飲む。アズが話を振ってきたので私はコクリと頷いた。


「先ず、この屋敷って?」


「公爵様ですね」


「あ、やっぱり。生活費とか」


「公爵様です」


「もしや……婚約解消にならず、囲い込まれる、とか?」


 私は嫌な予感がしたので直球で攻めてみました。


「婚約解消の件は公爵様がどのように考えていらっしゃるのか分かりかねますが、私が公爵様から命じられたのは、お嬢様の価値をお嬢様自身に分からせること、でございます」


 それはあれか。私の血筋ってやつか。


「お母様のご実家の血筋のこと?」


「左様にございます」


「これくらいの家……つまり平民とはいえ、それなりのお嬢様という建前が無いと命に関わる? 折角、逃げたのに」


「可能性は有ります」


 つまり、私が伯爵家に居たら栄養失調か何かで死に、家から逃げてもお母様の実家のオーデ侯爵家……だっけ? あの家の血筋、つまり過去か未来を垣間見る力とやらを欲して命が狙われる、と?

 折角逃げてもバレたら良くて飼い殺し。悪くて死かぁ。


「公爵様に大人しく囲い込まれる方が安全ってこと?」


「公爵様のお気持ちは分かりかねます」


 アズに率直に尋ねると首を傾げられたのでヘルムさんを見る。ヘルムさんは肩を竦めるだけで何も言わない。

 という事はヘルムさんは聞いていないか、聞いていても話せないか、どちらかということだと思われる。

 えー。

 平民生活を楽しく送るつもりだったんだけどなぁ。


「例えば、公爵様に直接お願いして、見守るのも止めるようにしてもらったとして。ヘルムさんも居ないで私とアズだけで、この屋敷から出て、どっかで平民暮らしを送るとして。私のことを知った人が私を飼い殺しにするか命を狙うのは、どれくらい可能性がある?」


「ゼロがないですね」


 アズに速攻でぶった斬られた……。そうか。公爵様の庇護を抜けたとして、私のことを知った人が……それが貴族だろうと貴族じゃなかろうと……狙って来るのは確定なのか。


「これだけの屋敷に私とアズとヘルムさんとアズのお母様だけで暮らすのって大変じゃない? 使う部屋だけに限定しても掃除一つ大変そう」


 これにはアズも口籠る。


「アズ、教えて?」


「確かに、お嬢様の仰る通りです。本当は、もっと小さな家を借りるつもりでした。ですが、小さな家だとドアを簡単に壊されたり窓からの侵入も簡単に許してしまうそうで。こういった屋敷は、仮にドアを壊されて入って来られても避難する場所があるので、そこに隠れてやり過ごすことが可能です。或いはヘルムさんはご存知でしょうが、地下通路があるのでそこから別の場所に逃げることも可能で」


 まさかの避難場所と地下通路付きでした!

 何処かの王城にはそういうのがあるって前世のサブカルな読み物で見ましたけども! この屋敷がそんな屋敷だとは思ってもみませんでした!


「そうなの。つまり私の身の安全のため、なのね」


 ということは、やっぱりアズとアズのお母様とヘルムさんだけでこの屋敷はキツイでしょう。


「ヘルムさん、公爵様にお願いして、あと二人くらい人手を貸してもらえないかなぁ。アズとアズのお母様に料理・掃除・洗濯をしてもらうのは大変だし、二人だけだと休みも取れないし。ヘルムさんもお休み取ってもらいたいから、護衛の人もあと一人くらい」


 私のお願いにヘルムさんが頷きますが、アズが反対しました。


「お嬢様のことを他の人に任せたくないです」


 そう言ってくれるのは嬉しいですが、休み無しってブラック企業じゃないんだから……。


「じゃあアズはお嬢様付きでお嬢様のお世話以外、仕事無し。それでメイドを二人か三人、掃除やら洗濯やら頼めばいいんじゃないか。料理も料理人招いて。護衛がもう一人というのは、俺自身助かるし」


 というヘルムさんの提案が折衷案という所でしょうか。でもそれだとアズが休めないと思うのですが。そう思っていたらアズが休みたい時は母に頼みます、と代替案が出て来たので、それでいいことにしました。

 他にも話し合いたいことがありますし。

 取り敢えずクッキー食べてお茶を飲みながら、チラリとお庭を見ます。

 アズが少しずつ手入れをしていたらしい小さな花壇に咲くのはスミレのようです。和みますね。

 それから、ふっと思い出しました。


「そういえばオズバルド様は?」


「いま⁉︎ ネスティーちゃん、今、気付いたの⁉︎」


 ヘルムさんの驚愕の表情に、身を竦めれば、アズがヘルムさんを睨み付けます。多分、私が身を竦めたことに対する睨みですよね。いや、確かに気づくのが遅かったですよね、すみません。


「お腹痛くなって気持ち悪くなって、そこから先の記憶がなくて……。治ってからは、アズと今後の話をしたいなぁって思っていたから。気づくのが遅くなってごめんなさい」


 本人がいらっしゃらないので、ヘルムさんに謝っておきましょう。ヘルムさんも、まぁそういうことがあるよな、とそれ以上は言わなかったので、気を取り直します。

 で。

 ヘルムさんが言うには。

 私が倒れたことに責任を感じて、公爵様に叱られに行った。

 とのことです。……えー。意味分かりません。

 このお屋敷に居ないことだけは確定してるようです。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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