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5-1 先ずは太陽の光を浴びます

 アズがお医者さんを連れてきてくれて、診察を受けました。……あまりの痛さに覚えてませんけど。結果、食べ過ぎ、と診断されたようです。アズから回復してから聞きました。まぁ、そうだろうとは思ってました。

 お医者さんは、虐待された痕(両手足の傷痕など)に気づいただろうけど、アズが前もってお金を余計に支払ったことや、両親が既にこの世に居ない設定(こと)から、お医者さんは何も言わなかったようです。

 でも痩せ過ぎで体力が無さそうなので、先ずは散歩くらいから始めて体力作りをするように、と診断されたそうです。

 散歩。……そうですか。

 取り敢えず、先ずはベッドから出られるくらいまでに回復してから、ですよね。アズが飲ませてくれた胃薬が効いたのか、お医者さんが帰られてからだいぶ痛みは引きました。

 ……そういえば、殆どあの小屋から出ることがなく、出てもひっそりと息を潜めるようにして、外に出たことが分からないようにしていましたね。気を遣って動いているのってストレスですよね、普通に。

 余計に痩せる原因だったのではないでしょうか。

 というか、散歩とか言われたそうですが、散歩すら出来そうもない体力です。動けないわけではないですよ。でも必要最低限なので好きなだけ歩いていいよ、的な散歩が出来るとは思えないわけです。

 そんなわけで。


「先ずはお嬢様は、俺と一緒に太陽の光を浴びる所から始めましょう」


 ヘルムさんからそんな提案を受けました。……私も、ですよねー。と同意しか出来ない提案です。

 アズが太陽の光を浴びるだけですか? とヘルムさんに聞いていましたが、ヘルムさんが日光浴と言って健康的な生活を送るのに、日光は活躍する、と力説してます。というか、日光浴……。流石日本人が書いた小説の舞台、と言うべきなんですかね。外国人の見た目なヘルムさんの口から出ると違和感が凄いです。

 まぁ原作を改変してますから、小説がベースの別モノって考えるのが妥当でしょうし、ちょいちょい日本を思わせる部分はスルーという方針にしておきましょう。一々違和感に仕事されても、それは私が日本人の記憶を持っているからで、アズやヘルムさんから日本人らしい言葉が出た時は、そういうもの、と捉えておく事にしておく方が精神上、楽な気がします。


「分かりました。ですが、お嬢様は殆ど外に出たことが無いので私も付き添います」


 アズの当然のような言葉に、そういえば、と思う。


「アズ。あなたの前で話そうか迷ったのですが、隠すのは違うと思いますのでアズにも私の考えを聞いて欲しいです」


 私はアズを見つつ、チラリとヘルムさんを見ます。


「畏まりました。ですが、先ずはお嬢様がベッドから出られるくらいまで回復されるのが先です」


 アズは生真面目に頷き


「お嬢様、それは俺に話があったってこと?」


 ヘルムさんが勘を働かせます。

 私は二人の言葉に同意するように頷きました。今日一日の仕事は寝て回復に努めること。

 話は明日以降です。

 それに、その話し合いでは、私は働くことも提案するつもりでいました。今の私に何が出来るかを考えるのもそうですが、甘えっぱなしというわけにはいきませんから。

 一応元社畜なので働かないと身体がモゾモゾしてしまうのです。


「明日以降、お嬢様の体調を見ながら、お庭で日光浴とやらをしながらお茶をして話し合いをしましょう」


 アズが一石二鳥のような提案をしてきました。

 まぁ日光浴で健康を目指すわけですし、ボンヤリと浴びるだけより、アズのことなので私の好きなクッキーを添えたお茶を出してくれるはず。それを飲みながら、太陽の下で話し合いは良い気がしますね。流石アズです。


「でも、お嬢様。話し合いに夢中になって、体調が悪くなってきたのを隠すようなら、暫くベッドから起き上がる生活は送らせませんからね」


 ……アズの釘刺しにギクッと身体が動きました。その動きで多少無理をしようと考えていた私を見透かしたらしく、盛大な溜め息がアズから聞こえてきました。


「ごめんなさい。無理はしません」


「それならいいでしょう。では、本日はこのままお休みになられて下さい。もし寝付けないようなら本を持ってきましょう」


「本⁉︎ 読んでいいの⁉︎」


「はい。お嬢様は本すらきちんと読む生活も送って来れませんでしたからね」


 日本人だった頃も小説を読むのが好きだった。テレビだって観たし、映画館にも足を運んだ。動画配信は偶に。でも娯楽に飢えたことは無かった。

 ネスティーに生まれ変わっても本は好きだった。

 というか、それ以外の娯楽がなかったと言うべきか。

 でも、その唯一の娯楽にさえ、中々楽しむ機会が無かったので、アズはそこもお見通しのよう。

 絵本でもいいから、読みたい。

 そんな私の気持ちに応えるように少し部屋から出たアズが本を持って戻って来てくれて、私はベッドの上で本を読む、という贅沢な時間をネスティーに生まれ変わってから初めて味わった。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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