表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/225

7-5 間話・助けたいと思った婚約者〜オズバルド視点

 ラテンタール嬢に会いに……全く会えないけど……行った時、ヘルム経由でラテンタール嬢が家を出たいことを聞いた。ヘルムは私がラテンタール家に行かなくてもよくラテンタール嬢に会いに行っていて、狡いなぁ、と私は肩を落とす。

 あんなに痩せ細っていて暴力も振るわれているのに、それでも淑女たらん、と私の前で振る舞っていた小さな彼女。

 私の顔に見惚れることなく、ただ私を一人の人間として接してくれた彼女。……まぁ時間は少なかったし、如何やら私ではなく父上と母上に憧れたようだけど。というか、私は父上に似ているのに、何故私じゃなくて父上と、そして母上なんだ? でもまぁ父上と母上に対して尊敬の念を抱いているだけみたいだから、ちょっと悔しいだけで済んでいるが。ちょっとだけ。かなりではない、はずだ。


 いや、そうではなく。

 ラテンタール嬢が家を出るのなら私も協力したい。のに、ヘルムがあっさりと父上に話して父上が提案をして、それをラテンタール嬢と専属侍女が話し合い計画を立てて……。あっという間にそこまで来てしまった。

 その上、私は全く彼女に会えないのに、ヘルムは頻繁に顔を出すものだからどちらかと言えばヘルムに悔しい思いをしている。私もラテンタール嬢に頼られたい。

 その間にもラテンタール伯爵家の証拠は入手され、やはり勝手なる増税及び横領で罪状が確定しそうだ。

 となると、ラテンタール伯爵家は褫爵(ちしゃく)となり、その上で罰が下される。爵位没収だけが罰ではないのは、領民を苦しめただけでなく王家を謀ったことに加えて、ラテンタール嬢への虐待も含まれるからだ。

 褫爵だけでなくどんな罰になるのかは、陛下の心一つでもある。公開裁判(国民全てが立ち合い可能対象)になるか、非公開裁判(各貴族の当主が立ち合い可能対象)になるか、裁判をせずに陛下が刑を言い渡すことになるか、で、伯爵の処遇も変わる。

 公開裁判が国民全てが裁判に立ち合えるのは、貴族平民関係なく全ての国民に対しての見せしめ、の意味もある。このような罪を犯したのならこういった罰を降す、と分かり易く示すということ。

 非公開裁判が各貴族の当主が立ち合いになるのは、貴族による犯罪に対してこのような罰を降す、という見せしめで、故にこのような罪を犯すなよ、という脅しだ。この場合、平民が犯せる罪ではなく、貴族だからやりかねない罪だから貴族に対する見せしめ、ということになる。

 そして裁判をせずに陛下が直々に刑を言い渡すのは、温情である。見せしめにされないわけだから、犯罪は許せないが事情は考慮する場合の貴族への配慮、ということ。

 おそらくは裁判をしない事は無いだろう。何の温情も見当たらないから。

 裁判は国王陛下は公平な立場に立つため、裁判長は別の者になることが決まっているが、当日まで誰がやるか本人以外は知らされない。罪を軽くするために根回しなどされては以ての外だから。

 今後のことを色々と予測していると、ラテンタール伯爵領から父上の影が戻った。


「ラテンタール前伯爵様は、もう長くないでしょう。早ければ数日。もって一ヶ月程のようです」


 そこまで病が悪化していたとは……。父上も眉を跳ね上げて本当か? と視線で問う。是、と答えられて父上は溜め息を吐いた。


「そこまで、か。となると領地のことも領民の訴えも聞いていられないだけでなく、伯爵一家とネスティーのことも全く知らないという事だな」


 再び是、と影が答え。


「嫡男の考えは知れたか」


「はい。どうやら前伯爵様が寝たきりになった頃から、自分では領地も領民も父親から守れない、と思っていたようで前伯爵様を看ながら泣き言を密かに溢しておりました。

 妹……ラテンタール嬢ですね……も父親から守りたいのにその力が自分に無いことも嘆いております。

 執事や他の使用人達に、前伯爵様が亡くなり次第、どうにかして伯爵位を王家へ返上する手立てを、と考えているようでした」


「ふむ。自分が跡取りになるには足りない物がある、と気付いているのは良い。だから、爵位返上を考えているのも良いが……それを何とかして伯爵位を父親から簒奪し、己がラテンタール伯爵家を守る、という気概が無いのは残念だな。

 その気概があるならば褫爵の憂き目に遭ってもラテンタール伯爵としてではなく、別の形で嫡男を関わらせることが出来るというのに。

 だが、そのような判断が出来ることは上に立つ者として必要なことではある。機を見るのも当主に必要な資質だ」


 父上は、中々に見所がある、と頷きながら私を見た。


「オズなら、どうする?」


「褫爵の憂き目に遭うのはもうどうしようもない事でしょう。前伯爵が亡くなり次第、嫡男を保護してラテンタール伯爵から籍を抜いてラテンタール伯爵一家とは無関係にしておきます。

 ラテンタール嬢も追放される方向で考えているようですから二人が無関係になった所で裁判へ持ち込みます」


「まぁそうだな。私もそうする。という事だ。陛下には前伯爵が亡くなり次第、裁判に入るよう奏上しておこう」


 そうして話がまとまった所で、ラテンタール嬢と専属侍女の計画も大詰めになっていた。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ