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3-3 追放されるために

「まぁそうだよね。それが理解出来るようなら正当なご令嬢をこんな所に押し込まないよねぇ」


 アズの淡々とした説明にふむふむ、とヘルムさんが同意する。というか。


「抑々ヘルムさん、どんな用事があって此処に……?」


 私の質問にヘルムさんは「ん?」 と首を傾げて当たり前のように

「もちろん公爵様が君に説明した、使用人の一件について、の調査だよ?」

 とサラリ。

 確かにヘルムさんが一人でこうして来るのなら、ラテンタール家を対象としているのではなくて、王家から目を付けられているとか言う使用人を調査する、という話は本当に思える。

 ラテンタール家の内情を調べている、と考えていたのは……考え過ぎだった?


「そうですか。では、そちらの調査に戻られては?」


 アズ、なんか睨んでない? さっき、ヘルムさんに驚かされたことを根に持って……ないよね?


「それもするけど。オズバルド様から、ご令嬢がどうしてるのか知りたいから見て来てって言われたからさ。こっちに来たんだよね。そしたら面白そうな話をしてるじゃん?」


 そういえば、公爵様に良い案をもらいましょう、と言われたわね……って。


「えっ、何処から話を聞いていたのでしょう?」


 もしかして夢の話とか聞かれてた⁉︎


「夢の中で追放されたら家を出られる、って辺り?」


 私の顔色が悪くなっているはずです。血の気が引くってこういう感覚を言うのか、と思ったので。

 アズの目つきが剣呑なものに変わってます。


「ああ、落ち着いて! 確かに公爵様に報告はするけど、公爵様はご令嬢も侍女殿も気に入ってるみたいだから悪いようにはしないはずだから!

 夢の内容というのを聞いたからって公爵様は笑わないし、何か特別の意味があるとしても、ご令嬢と侍女殿を守るくらい大したことないでしょ!」


 ヘルムさんが慌てたように口にするその内容に、私はアズと顔を見合わせます。


「……まぁ、おそらく公爵家ならばどこの家も知っていそうなことですし。どうせ王家はご存知ですし」


 アズは渋面を作りながら納得したように一つ頷き、私に決断を委ねます。


「どうしますか、お嬢様。この者が申すように、公爵様の知恵をお借りして追放されるように動かれます?」


 うーん……。別に公爵様なら嫌ではないし、奥様も嫌ではなかったけど、なんていうか借りを作りたくないというか。

 この借りを返すのに、何だかとんでもない方法で返して欲しいとか言われそうな気がするというか。

 でも、正直なところ、この家からというかあのラテンタール伯爵や義母、異母妹がスムーズに私を追放するような知恵が無いというか。金蔓だって分かってる私を簡単に手放すような知恵が私には思い浮かばない……。

 となると、やっぱり見た目で人を惹きつけながら腹の内で色々な策略を練っていそうな腹黒だろう公爵様の知恵を借りた方がいいかなぁ……。

 ……いや、公爵様って腹黒じゃなくて全身真っ黒タイプな気がするな。腹黒はどちらかと言えば奥様の方か。

 となると、借りをどうやって返すか明確にしておかないと二人揃って丸め込んで来そうだなぁ……。

 ーーいや、お二人に丸め込まれたいとは思うんだけども。


「そうね。公爵様のお知恵をお借りするのが手っ取り早い気がするわね」


 色々と考えたけれど、それ以上にいい案なんて浮かばないので認める。


「じゃあ、早速っ」


 と、直ぐに居なくなりそうなヘルムさん。

 私は「待って」 と慌てて引き留めた。


「どうかしました?」


「公爵様にお知恵をお借りしたいのは確か。でも、それを返すことを考えると、なんだか此方の予想を超えて返すように言われそうなのよ」


「まぁ公爵様ですしね」


 私の懸念をヘルムさんがあっさりと肯定する。


「だからね? 公爵様に話してほしいの。私がラテンタール家からの追放を望んでいるのは、この家に居たらいつ死んでもおかしくない、と思うこと。そして」


 そこで一旦言葉を切ったのは、溜めることで重要なことを打ち明ける、と相手に分からせるため。

 ヘルムさんもニコニコした顔から真顔に変わった。ヨシ、ヘルムさんの興味を惹いた。

 これならきちんと公爵様に報告してくれるはず。


「私は、オズバルド様の婚約者になった後。オズバルド様が成人するまでの間に、死ぬ。ーーそんな夢だった、と」


 ヘルムさんは真顔からキョトンとした顔をして、ただの夢でしょ? と言いたそうな顔に変わったけれど、私の真剣な表情に何かを感じたのか、伝える、と頷いてくれた。


「その上で公爵様が私に協力してくれるなら、有り難いです。もし良い案が浮かんだらヘルムさんがまたここに来てその案を教えて下さいね」


「了解。じゃあ俺は俺の仕事を終わらせてから公爵様に話を通しておくから」


 じゃあね、とサッと居なくなったヘルムさん。私はアズとまた顔を見合わせて何となく大きく息を吐き出した。

 あの話を対価にして、良い案をもらえると良いんだけど。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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