願い
冬休みに入りそろそろ年末の一大イベントが近づいてきた朝
「徹さん、大変なことに気づきました」
神白さんが何かに気づいたらしい、なんですか?
「昨日より霊力が上がっているのを感じます」
どうやら今日は霊力の回復がいつもより良いらしい。
「けど、この地方の信心が上がるのは来月が一番上がりやすいはずなのですが」
この時期…12月?クリスマスくらいしかないと思うんだけど…
そういえば神白さん、いつもと違ってなんで今日は赤い服着てるんですか?
「今日はこの服を着よとのお告げが」
神白さん、なんでぼんぼり付いた帽子被ってるんですか?
「朝起きたら枕元にこの帽子があってあったかそうだったのでつい」
神白さん、そこの白い袋はなんですか?
「朝起きたら…」
中身を確認するとおもちゃが袋いっぱいに詰まっていた
サンタへの願いを信心に変換したのかな…
「サンタとは?」
さすがに知らなかったか、クリスマスとサンタについてはですね。
…
説明を一通り終える。
しっぽがあったら全力で振ってそうな神白さん
「なんと、そんな素晴らしい行事があるのですね!どうしましょう!」
どうしましょうと満面の笑みで言われても困るが。
どうせ毎年一人で過ごすか田中と夜通しゲームをやるクリスマスだったんだ。
可愛い神様も一緒だしプレゼント配りに行きますか…
神白さんがサンタなら俺はトナカイかな?
「ありがとうございます!」
夜になり辺りも寝静まったころ
記念すべきプレゼントを届ける最初の一件目の前で質問を投げる
「どうやってプレゼントを届ける?」
サンタさんはね、寝ている子供に気づかれない様に家に入って枕元にプレゼントを置いていくんだ。
「すごいですね!サンタさん!」
全世界の子供にプレゼントを届けるという無茶ぶりはとりあえず黙っておこう。
きっと寝る時間が無くなる。
幸いにして、この地域は田舎町のため子供もそこまでいない
で、どうしようか?
「そうですねぇ…」
と神白さんは腕組みをしつう頭をかしげながら
ぴんぽーん
呼び鈴を押した
「夜分遅くにすいませ~ん。サンタです~」
そんなサンタがいるか!
「は~い」
あぁ、お母さんらしき中の人が出てきてしまった…
ごにょごにょごにょ
なんか話し込んでるな
あ、戻ってきた。
「親御さんに頼んだら快く受け取ってもらえました」
不審がられなかった?
「喜んでいただけましたよ?」
このご時世にスムーズすぎて怖いな、さすが神様…
翌日の夕刊にひっそりと記事が載ったのはまた別のお話
さて、ここが最後の一軒かな
「こうして大勢の人に感謝されるのは初めてで…よいものですね」
神白さんがほほ笑んだ
どきっとしたけど頑張って顔に出さないようにした。
ごまかしついでにポケットに手を入れたところで紙袋の感触を思い出す。
あぁそういえば
神白さんちょっとこっち向いて首をかしげる
「はい、なんでしょう?」
マフラーを掛けてあげる。
「え?え?」
戸惑うサンタさん
クリスマスだしね、サンタさんにもプレゼント
どんな反応をするのか気になったが
「…初めて人にプレゼントを頂きました。ありがとうございます。とても暖かいですね」
失敗した。
恥かしくてまともに顔が見れない。