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御神渡りを渡って  作者: ゴハン
1/5

始まり

御神渡り

おみわたり

冬季の寒冷地で,湖面に一部盛り上がった氷堤が見られる現象。湖面が結氷したのち,

さらに厳しい寒さが続き,快晴で放射冷却の大きいとき,氷の上面に収縮亀裂が生じると,

亀裂に水が入り薄い氷ができる。日中,気温が上がり氷は膨張し,

両側から圧力がかかることで薄い氷が割れてせり上がって氷堤が生じる現象である。

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より抜粋


さくっさくっ

踏みしめる度、小気味よく鳴る雪の中を一人の青年が歩く

青年は寒そうに両手を合わせ自分の手に息を吹きかける。

「はぁ…」

白い息が靄を作り雪が降る闇へと消えていく。

青年の名は藤山徹。

高校二年生で来年には受験を控えている。

特に志望校があるわけでもないが親に強く言われ仕方なく塾に通っている。

成績は良くもなく悪くもなくこのまま惰性で人生を歩むのだろうと思春期特有の達観してるように見せている年頃。

今日も学校が終わったあと隣町の塾に行き特にこれといったこともない田舎の帰り道。

辺りに人はなく田舎のため街灯もまばらに「ジジッ…ジジッ…」と不規則な音を立てて帰路を照らしていた。

そんな夜に始まる話



我が家の近所にはでかい湖がある。

北の地方のため冬になると、その湖が一面氷に覆われた。

小さい頃にはスケートなど盛んにおこなわれていたが昨今の公園然り危ないとの苦情により最近ではほとんど行われなくなってしまったが…


そんな湖でひときわ目立つものが一つ

湖の中心辺りにぽつんとお社が建っているのだ。

なんでも昔、この辺りにいた神様を祭っているとかいないとか。

小さい頃はよくわからなかったけど手を合わせていた気がする。

最近はあんまり見てなかったからどうなってるかはよくわからないけどきっとあるのだろう


なぜそうなったかは分からない。

何かの電波を感じ取ったのかそれともそういう運命だったのか。

が数年ぶりに気になり湖沿いの道を歩いているときにふと社があった方角を見た。

社は夜なのに、

真っ暗で何も見えないはずなのに、

社がはっきりと見えた。


灯りがともってるのか?

誰かいるのか?

心に芽吹いた好奇心に引き寄せられるように湖の岸へ行くと湖は凍っており社へは歩いて行けることが分かった。

更に不思議なことに社への道は氷の道といわれても違和感がないような状態になっていた。

後から知ったことだがこの氷の道は「御神渡り」といわれる現象らしい。

社への灯りはまだ灯っており行き方は分かる。帰り道もまぁ街灯を目印に行けば帰ってこれるだろう。

(よし、ちょっと行ってみますか)とおそるおそる氷の上に足を踏み出す。

氷といってもザラザラとしておりスケートリンクのような滑る状態ではないことを確認して一歩一歩社へ近づいた。

社と岸との中間まで来たとき社に人がいないことが分かった。

灯りがついているわけでもないことも分かった。


社が光っていた。

ぼんやりと蓄光製でできているかのように不安定ではあるけれどしっかりと

そして光った社に着物の女性?美しい銀髪の儚げな女の子が一人。

ただし、さっき言った通り人ではないことは分かっていた。

なぜなら女の子も光っていた。

女の子は泣いていた。


さっきまで降っていた雪が止み月明かりに照らされた社と女の子

不思議と怖くはなかった。

綺麗と感じた。


足元の「ミシッ」という音に気付かないくらいに魅入ってた俺は

こちらに気づいた女の子が何か言ってることを確認して


そこで意識が途切れた。



夢を見た。

それは小さい頃の自分で隣には女の子

一緒に遊んでいると、遠くから「おーい」と声が聞こえて

女の子はそちらの方に手を振った。

もう帰る時間かと女の子に手を振ると

女の子も手を振って声のするほうへ走っていく。



はっと目を覚ますと見慣れた天井があり、俺は家のソファーにいた。

そして、母にげんこつを貰った

なんか夢を見ていた気がしたが忘れた。

「あんた、こんな季節に何やってるんだい!」

痛い

説明したいが説明したところで今度は病院に連れていかれそうなので童心に帰ってスケートしたくなったというとてもとても苦しい言い訳をした。

そして、どうして帰ってこれたのか聞いたところで先ほどの女の子が登場した。

「もうたまたま通ったら徹くん湖でおぼれてるんだもん。びっくりしちゃったよ」

明るく笑う女の子は…

そう、彼女はクラスメイトで幼馴染の神白さんだ。

「美景ちゃんが見つけてくれなかったら、あんた死んでたよ!」

なんでも俺は溺れていたところを白神さんが助けてくれたらしい。

そしてここまで人を呼んでここまで運んでくれたということだ。

ありがとう、と礼を言うと「まぁ、私のせいだし…ごにょごにょ…ほら、お世話になってるしこれくらいはしないとね、ほら体冷えてるでしょ?お風呂先入って!」

そうだ、彼女の家は父親が赴任してしまい、卒業するまで彼女を仲の良かった家で預かることにしたのだった。


ん?なんで俺は溺れたんだっけ?


「ふぅ…」

冷え切った手足が温まり痺れる感じを受けながら今日のことを思い出す、

えーと、学校いって

塾へ行きそして帰り道…

帰り道に湖で…

スケートをして溺れた

なんだそりゃ

とりあえず忘れたほうが良さそうだな。

「湯加減どうですか?」

!!!???

扉越しに白神さんの声を聞き動揺する

俺だって思春期の男子だ、風呂場だとほら、いろいろまずい

「背中流しますね」がちゃっと風呂の扉が…

ちょっと!かーさん!

「小学生くらいのときは一緒に入ってたじゃない!」

いや小学生と今とではちょっと違うと思うんだけど、ってそーじゃなくて神白さん自分を大事にですね。


…小学生?小学生の時にかみし…

記憶を辿るが神白という苗字の幼馴染はいない。

いないが現在の自分には神白美景という幼馴染がいることに不自然さを感じていない。

違和感が気持ち悪い…

「あら?もう解けたんですか?これはちょっと気を付けないといけませんね」

くすくすと笑う神白さん


…神白さん、君は誰だ?

「はい、神です」


にっこり笑った神白さんは可愛かった。


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