四面楚歌
360度どこを見渡しても殺気だったゴリラ、ゴリラ、ゴリラ。
ざっと見て20頭ほどだろうか‥
悪夢だ‥
俺と死闘を繰り広げた小さいマーダーコングは
「ウーウー」と鳴きながら草むらの中へ逃げてこんでいった。
小さいマーダーコングが草むらに引っ込むと
ジリジリと少しずつ俺を包囲する輪が狭まっていく。
逃げ場はない‥
「マジかよ‥
こんなところで俺終わるのか‥」
ラノベやアニメで見た異世界転生や転移ものだったらここでネムたちが応援を引き連れて戻ってきたり
俺がまだ見ぬ力に目覚めて一網打尽!の熱い展開になるはずなのだがそんな気配は一切ない
どうやら俺は主人公ではなかったらしい‥
はあ‥こんなことならパンツ覗いとけば良かったなぁ‥‥
ジリジリ迫る包囲網から少しでも時間を稼ぐように後退していたらトンと背中に何かが当たる。
警戒を解かずに首の動きは最小限に目だけをそちらに向けて恐る恐る確認する。
ギャップの真ん中に一本だけ離れて生えている木だった。
まるでここで張り付けにされる気分だな‥。
「アーーーーーー!!!」
ここで痺れを切らしたのか向かい合っている
マーダーコングが雄叫びをあげた。
それを合図にするかのように周囲を取り囲んでいたマーダーコングが一斉に飛びかかってきた。
「父さん母さんごめんなさい‥」
覚悟を決めて目を瞑りそんな言葉を口にしていた。
ガキン!
「おぃおぃ!ずいぶん盛り上がってんなぁ!」
特徴的な甲高い勘にさわるその声には聞き覚えがあった。
ゆっくり目を開いてその姿を視認する。
白衣のような漆黒の服
手をクロスにしてメスを構えるその姿
そしてダサいステップ‥
「K! Kじゃないか!」
「おぅ!どうしたぁ?」
「それはこっちのセリフだ!
お前今どこから現れたんだ!?」
包囲網の真ん中に突如として現れたのだ。
「そんなことよりよぉ
こいつらどうすんだぁ?」
キッとKがマーダーコングの群れを一瞥すると
怯んだのか一歩二歩と包囲網が下がっていく
「やっつけていいのかぁ?どうするぅ?」
「そうだな‥」
今となってはこいつらを駆除する理由があるのかどうかわからない‥
でも俺が身を持って証明した。
あいつらは人を襲う
ほんの少し
本当に少しだけ俺のせいもあるかもしれないが‥‥
「そうだな‥‥倒してくれ!
害獣なんだ!」
その言葉を聞いてKは頷く
「わかったぞぉ!まかせろぉ!」
手を頭上に掲げてクロスに構えると声高々に叫ぶ
「執刀-ブラッティクロス-乱激!」





