紡いだ光
シェルター99を脱出したマコトは譲治の言われた通り、ジャンクタウンに向かった。話を聞いたアンドロイドの少女とタクヤは譲治の死を悼んでから、信頼と実績のある行商隊にマコトを同行させてくれた。別れ際、彼女は今後もマコトの力になると約束してくれた。
シェルター37に戻ったマコトは、譲治から受け取った基盤で浄水器を修理した。その後、閉ざされていた扉を開いて無料で水を配給することを提案した。それが今の自分にできる、精一杯のことだと思ったからだ。管理官は初めは反対したが、マコトの熱意に押され、やがてはその提案を飲んだ。手始めに公園の干上がった池が清らかな水で満たされた。
配給には行商隊が使われた。アンドロイド少女の力添えもあり、きれいな水が急速に地域全体へと浸透していった。人々は清められた水を飲み、体を洗い、作物を育て、家畜を飼った。略奪せずとも水が手に入るようになり、この地域の野盗と呼ばれる存在は、徐々に数を減らしていった。
マコトがシェルター37に帰ってきてひと月。ほんの少し、限られた地域でだが、世界はいい方向へと傾きつつあった。
しかし、問題がないわけではない。
浄水器が再び壊れてしまえば、また元の混沌に還るだろう。
無料の水を、遠方で売買して儲けようとする輩も出てくるかもしれない。
蒸留水配給の利権を狙い、シェルターに攻め込む輩がでるかもしれない。
水だけでは足りぬと、再び略奪を始める者もいるかもしれない。
彼女たちの権威が強まるのを恐れ、陥れようと画策する者が出るかもしれない。
だが今は――。
大人も子供もきれいな水を飲み、笑っている。
たとえそれが一時のことであろうとも。
譲治が託し、マコトが紡いだ光は。
しっかりと、彼らの心に刻まれている。




