No.8 出会い
新キャラ登場です
「――――私はこの森に住む者だが、助けは必要か?」
なんて言葉が頭上で聞こえた。
「な、だ、誰?」
「問いに問いで返すな。私の質問に答えるんだ。」
「あ、はい。必要です。お願いします。」
そう答えると頭上の声が
「うむ。助けてやろう。」
と、満足げな声色で答えた。
「と、ところであなたは誰なんですか?」
「あぁ、失敬。名乗るのがまだだった。私は、エルシィ。この森に住んでいる者だ」
というと、何かが上から落ちてきた。
「・・・・・犬?」
もふもふした、灰色の毛玉が落ちてきた。
「ち、違う!狼だ!」
どうやら、狼であることにプライドを持っているらしい。
「では、狼さんよろしくお願いしま・・・・動物が喋ってる!?」
「今更!?」
「しゃべ・・・しゃべ・・・あわわ・・・・」
パタン・・・と、ここで僕の意識は途絶えた。
――――――
「ん・・・・・」
「おお、目を覚ましたか。」
「えっと・・・あなたは・・・?」
銀髪の女性が僕の顔を覗き込んでいた。
「えっと・・・あなたは・・?」
「む?私は・・・あぁ」
というと、女性の体が光った。
と思うと、いつの間にか先程見た狼が佇んでいた。
「あ・・・人が狼になった・・・」
意識がスゥーっと抜けそうになるところに
「お、おい!気絶するな!しっかりしろ!」
と聞こえると、意識が戻ってきた。
「あ・・・すみません。驚きの連続だったもので。」
「ん、ま、まぁ、それでは仕方ないのう」
と言うと、エルシィはゆっくり歩きだした。
「ま、待ってください!それより、さっきの姿は何だったんですか?」
「む、あぁ、私は獣人族の先祖返りでな。少しばかり特殊な体質なのだ。この森で過ごすにはけものの姿のほうが何分楽なので、獣の姿でいたわけだ」
そういうと、エルシィは女性の姿に戻ってた。
「確かに、こっちのほうが違和感がないな。ほれ、こっちだ。ついてこい。」
「あ、う、うん・・・」
と言い、エルシィの後に付いていく。
よし、付いていきながら情報の整理をしよう。
まず、目の前にいる女性の名前はエルシィ。獣人族で、先祖返り。うん。全く持って理解が追い付かない。
「あ、あの・・・先祖返りってなんですか?」
「ん・・・?あぁ、先祖返りというのは、神代の頃の先祖が持っていた能力が扱えるようになることだ。」
「えっとつまり・・・・凄いことになるってこと・・?」
「凄いざっくりまとめたな・・・・・」
呆れながら言われたが、突拍子もない話だったのでそう理解するしかなかったんだ。仕方ないじゃいか。
「それで、エルシィ・・さん?の能力はどういうのなんですか?」
「エルシィで良い。先祖返りは、大抵寿命が長い。そして獣人族の先祖返りの能力は、身体能力が跳ね上がる事と、さっきの私みたいに自分の種族の動物になれることだ。」
ふむ・・・。つまり、エルシィは見た目よりもおばさんってことか。
「おい・・・今なんか失礼なこと考えなかったか?」
なんでわかるの!?
「いえ、そんなことないです!それよりも先進みましょう!」
「怪しいな・・・まぁ、いい。」
訝るような仕草を見せながらも再度歩き始めたエルシィの背中を負い、僕もそさくさと歩き出した。