12 あのコのママって、超人なの?!
いつも読んでいただき、感謝です。
夜が明けるのが待ち遠しくて待ち遠しくて……ワクワクし過ぎて、なかなか寝付けなかったの。
考えてみたら、ひむちゃんと何処かに行く機会って、滅多に無いんだよね。
だから今日の私は勝負服……目にも鮮やかな情熱系の赤でまとめたの。
「ひいか、随分気合いが入ってるのね」 って、ママが目を丸くするほどの。
外に出てみると、五月晴れ! 風もそよそよ、心地いい~~。
通学の時に使ってる、待ち合わせ場所のガゼボには、既にひむちゃんとおばさまが待ってくれてた。
ひむちゃんも、おばさまも、お揃いの白色のワンピースで、何だか清楚な感じ……私、張り切り過ぎちゃった?
「ひいちゃん、おはよー! わぁ、凄~~い!! お人形さんみたい、可愛い~~」
良かったぁ~~、私、浮いちゃったかと、とぎまぎしちゃったよ。
「おはよー、ひむちゃん。 ちょっとおめかし、頑張り過ぎちゃった、あはは」
「ひいかちゃん、赤、似合ってるわ。 なかなか着こなせない色だから、おばさん、うらやましいわ~~。 見てるだけでエネルギー、貰えちゃう」
おばさまも褒めてくれて、そわそわも治まってきた……気を遣ってくれたのかな。
「じゃぁ、出発しましょう。 二人とも、私にきびきび付いてきてね」
ん? 何だか『きびきび』ってとこ、アクセント付いてなかった?
もしかして、これはあの登山の時の再現?! しごかないで~~。
「ここを左に曲がるの」 おばさまが指し示す先は、私の知らない道。
「こっちって……小さい頃からお母さんに散々行くなって注意されてた道……神社に繋がってるんだね」
ん? ひむちゃんにとっては、禁断の道だったの? でも、ワクワクしてない?
「ここから先の道は大変よ。 二人とも、覚悟はいいかな?」
きゃ~~!! やっぱ来た~~!! しごきだよぉ……。
「お母さん、怖いよ~~」 ひむちゃんもビビってるみたいだけど、まだ私よりマシだよ。
私なんて、声すら出せなくなっちゃってるんだから。
小道の両側、桜並木だね……でも、さすがに花は散っちゃった後。
でも道、思ったほど辛くないよ……おばさんの脅しも大した事無いなぁ。
小さな白い鳥居の前で、おばさまが立ち止まってお辞儀をしたので、私も真似してみた。
すると、おばさまが 「さて、ここから本番よ。 二人とも、頑張って付いてくるのよ」 なーんて言うのよ……もう、その手は食わないんだから!
でも、今度はマジだった……目の前にはそびえ立つ上りの石段……これはヤバい。
私もひむちゃんも、数十段上ったところで息が切れ切れになってるのに、おばさまは全くペースを落とさず上っていく……異次元のスピードだよ~~。
「お母さん、ちょっと待って~~。 早過ぎるよぉ~~」 ひむちゃんが隣で音を上げてるけど、 「自分のペースを乱すと、どっと疲れが来るから、私は先に上りきるよ。 二人はゆっくり上っておいで」 って、容赦なく置いてきぼりにされちゃった。
「おばさま、高校の時、山岳部のエースだったって言わない? きゆりちゃんもびっくりしそうだよ」
「うーーん……山岳部どころか、運動してたって話、聞いた事ないけど」
ひむちゃんの言葉に打ちのめされつつ、やっとの思いで石段を上りきって、小高い丘に着いた頃には、おばさま、ベンチに座って涼しい顔で休憩を取ってるんだもん。
「おばさまの凄さ、身をもって体験させていただきました」
もう、神です、おばさま……ひれ伏しますので、もう許してくださ~~い。
「さぁ、二人とも、呼吸が整ったら、冷えた水を飲んで。 水筒に入れてきてるからね」
十分過ぎるくらい休んで、さぁ、出発!! って今度は、転げ落ちそうなほどの下りの石段が延々と続いてる……まだ許してくれないの~~?
足元とにらめっこしながら無心に歩を進めてると、 「わぁ~~、綺麗! これが海なんだね」 ってひむちゃんが感嘆の声を上げたの。
私も目線を前に向けると、群青色の水平線が。
「わぁ~~、ホント、綺麗だね~~!」 って、ひむちゃんに共感。
心の支えが出来て、何とか石段を下りきったよ。
おばさまは大きな朱色の門の前で、 「ここが月宮神社よ。 二人とも、よく頑張ったね」 って、余裕しゃくしゃくな表情で私たちを手招きしてるんだよ?
「お母さん、凄すぎるよ……何でそんなにスイスイ歩けるの……」
ひむちゃん、私もそう思う……格が違い過ぎるよね。
「ここから参道を歩いて、洞の中にある本殿の奥にそのウサギがあるんだけど、ちょっと先に行っててほしいの。 お母さんはちょっと社務所に立ち寄りたいって思ってるから」
あれっ?! おばさま、スルーした? もしかして、触れちゃダメな話題なの??
「社務所に? ……分かった。 じゃぁ、先にウサギを観に行ってみるよ。 ひいちゃん、行こ」
「じゃぁ、おばさま。 先に行ってます」
おばさまにはおばさまの用事があるみたいだし、私たちだけで行きますか! って、ひむちゃ~~ん。
「うわぁ~~、ウサギがたくさんいる~~!」 とか言って、参道に立ち並ぶウサギの石像を目にする度に足を止めて、頭をなでたりするから、先に進めないじゃないの~~。
亀より遅いひむちゃんの歩幅に合わせて、洞穴の中にある本殿が見えてくる頃には、既に私、余計な体力を使ってくたくただよ。
さらに奥に進んだところに、一体のウサギの石像を見付けたの。
後足で立ち、前足をひょいと前に突き出した格好で横を向いてる……確かに、あの絵に似てる……。
「この石像が”撫でウサギ”だって、立札に書いてるよ。 確かに、お母さんの書斎で見たぬいぐるみと、姿かたちがそっくり」
ひむちゃんがそう言うのなら、ホントに似てるんだろうね。
私はショルダーバッグから絵日記帳を取り出し、イラストと見比べてみたけど、 「ひむちゃん、この石像の事を知らなくて絵を描いたんだよね。 ホント、似てるよ」 って、驚くしかない。
「お母さんの書斎に、この子そっくりのぬいぐるみ……お母さんとこの神社、何か繋がりがあるのかな」
ひむちゃんが何やらぶつぶつ言いながら、石像の前で頭を傾げてるうちに、私は絵日記帳の考察欄に ”・月宮神社にある撫でウサギにそっくり” って書き込んでおいた。
「もしかすると、あのぬいぐるみ、ここで売られてるのかな」 って、ひむちゃん。
あ、なるほどー。 もし売り場にあったら、この神社とウサギのぬいぐるみとが繋がるよね。
「ひむちゃん、あそこに売店があるよ」
本殿を挟んで向こう側に見付けたから、ひむちゃんに教えてあげたの。
そこには巫女さんがいて、 「おはようございます。 ようこそお参りくださいました」 って、声を掛けてきたの。
「おはようございます。 本物の巫女さんって、キリッとしてて素敵だなぁ。 小説の中でしか会った事がなかったから……」
ひむちゃん、何だかキラキラ目だよ? 顔が赤くなってるよ??
「ひむちゃん、本人の前で、恥ずかしい事言うの止めてよぉ」
ここでひむちゃんの”憧れモード”を止めとかないと、暴走しちゃいそう。
「ウサギの御朱印帳に、ウサギの絵馬に、ウサギの置物のようなアイテム……ここにもウサギがいっぱい……パラダイスだよ」
パ、パラダイスと来たかぁ……。
「ひむちゃん、ホント、ウサギには目がないんだから……」
この神社、ひむちゃんには刺激が強過ぎて毒だね、あはは。
「うーーん……無いなぁ……。 あのぉ……巫女さん、変な事、尋ねてもいいですか?」 って、ひむちゃんが尋ねると、 「はい、どうかなさいましたか?」 って、受けた巫女さんが応対してる……そっとやりとり、観察してよっと。
「ここの神社では、撫でウサギと同じ姿かたちで、大きさが1mくらいあるぬいぐるみって、売ってますか?」
「いいえ、見た事も聞いた事もありません。 何処かでお見掛けになられたのですか?」
「えっと……ひいちゃん、絵日記帳、巫女さんに見せてもいい?」
あ、絵日記帳を見せるのね!
[ひとにきけ]⇒[みせる]⇒[えにっきちょう] みたいなヤツ?
「この絵、撫でウサギを見ながら描いたんじゃないんですか……。 確かに、そっくりに見えますけど、ぬいぐるみには心当たりはありません」
「そうですか……ごめんなさい。 変な事をお尋ねして。 今のは忘れてください」
ひむちゃん、巫女さんに訊いても良い反応が返ってこなかったから、しょぼんとしてる。
でも、絵日記帳の新しい使い方だね、聞き込みで見せるって。
ただ……私たち以外の人に変な事を訊くと、それこそ変な子だって思われるかもよ?
本編の第26~27話をベースに書き上げました。
☆今回気を付けた点☆
ここで登場する巫女は、本編では[ちかね]である事が判明しますが、ひいかは彼女を知らないので、スルーされます。
あと、授与所を売店って言うのは、本編に倣ってます。




