1 あのコは私の運命の……
本編『ひむかと隠された島』のスピンオフ作品を描く事にしました。
本編のエピソードを使いつつ、違う視点で、ジャンルも『友情物語』に変えてみようと。
予定としては、30話程度の長さで描きたいと思ってます。
あの日の事、今でも隅々まで覚えてる。
入学式って聞いて、思い出したよ。
もう、9年も前の事なのにね。
・・・・・・
「ひいか~、ひいか~」
ママが私を呼んでる。
「はーい! ママ~、おかたづけするから、まって~」
私はトゥインクルな双子のぬいぐるみを、おもちゃカゴに投げ入れると、ママの所へ駆け寄った。
「ひいか! 家の中は走っちゃダメ! メッ! よ」
ママはそう叱りながら、私の額を指で軽く突っつく。
「だってぇ~、ママがよぶんだもん……」
「ま、ちゃんと来たからいいわ。 明日、入学式よ。 学校でいい子、出来る?」
「うん! いいこできたら、ともだち、できるよねっ!」
ママはしゃがんで、私の目の前に顔を寄せ、 「大丈夫! ひいかはいい子だから、友達、沢山できるよ」 って言うと、頭を撫でてくれた。
「今日はママが子守唄を歌ってあげるから、ぐっすり眠って、明日、元気に起きようね」
ママは、私がドキドキしてる時、こうして子守唄を歌ってくれる。
すると私、何時の間にかぐっすり眠ってるの。
入学式当日。
ママが私の手を引いて、二人で小学校に向かう。
家から、緩やかな下り坂の小径を10分ほど歩くと、ガゼボに出た。
「ママ~、はやいよ~。 ゆっくりあるいて~よぉ~」
私はすぐ歩き疲れて、駄々をこねてしまう。
「ごめんごめん。 ママ、急いでたみたい。 ゆっくり歩こうね」
ママが再び私の手を取り、歩き出す。
「この子の足じゃ、学校、遠すぎるよね……当分は、同伴してあげないといけないな」
わぁ〜〜、いっぱいいるなぁ〜〜。
私は教室を見渡し、同級生たちの様子を眺めた。
おんなのこも……いち、にぃ、さん……いっぱい!
ワクワクすると同時に、ドキドキする。
こえ、かけなくちゃ……でも……。
引っ込み思案だった私は、マゴマゴしてなかなか出来ずにいた。
「あ、あの〜〜、わた……」
「おい、とうこ! おまえさっき……」
思い切って、やっと近くにいる女の子に声を掛けたのに、その子は男の子の方に振り向き、その場を離れてしまった。
「あっ……」
打ちひしがれた私は、とぼとぼと自分の席に……。
そのまま時間が過ぎ、帰る頃になっても、一言もお喋りできずにいた私…そんな時、後ろの席から不意に呼び掛けられた。
「ねえ、ねえ、そのかみどめ、かわいいね〜」
振り向くと、無邪気な笑顔を浮かべる女の子と目が合った。
「うん、これ、ママがきょうのために、かってくれたの。 かわいいかな?」
「かわいいよぉ〜、にあってるよぉ〜」
屈託のない笑顔。
「あ、あの……わたし、ひいかっていうの」
遠慮がちに自己紹介。
「ひいかちゃん? どんなじをかくの?」
「ひらがなだよ。 わたしにもなまえ、おしえてほしいな」
今日初めての会話に、私は心が弾む。
「わたしは、ひむか。 にてるね〜、わたしもひらがなだし」
「うん! にてる〜! もっとおしゃべりしていい?」
私は嬉しくて嬉しくて……。
「もちろんだよ。 おともだちになってほしいな」
ひむちゃんは手を差し出してきた。
私は迷わずその手を握り返し、この日初めての笑顔で答える。
「うん! わたしのおともだちになって、ひむかちゃん!」
校門を出るとママと合流し、一緒に帰りながら、友達が出来た事を報告する。
「ひいか、凄く嬉しそうだもん……良いお友達が出来て、本当に良かったね!」
「うんっ!! なまえもにてるんだよ! ひらがなで、ひむかちゃん、って!!」
それを聞いたママは、ちょっと間をおいてから…… 「ママ、夜、ひいかに聞いてほしいお話があるの」 って切り出したの。
その夜。
「ひいか、今からするお話はね、まだひいかが、ママのお腹の中にいた頃に見た、ママの夢の中の出来事なの」
「うまれるまえの?! ゆめの?」
私は興味津々。
「そう。 そこでね、神様の声が聞こえたの。 ママにも、よく分からないんだけどね、いつか、ひいかにとって凄く大切な、”運命の女の子”が現れるっていうの。 名前が平仮名って珍しいし、凄く似てるのも……ちょっと気になってね」
「うんめいの、おんなのこ??」
ママは、理解が追いつくように、ゆっくり語り掛けてくれた。
「そう。 それで、運命の女の子なのか見分ける方法があるの。 明日、その子に誕生日を聞いて、ママに教えて」
「たんじょうび……うん! きいてみる、ひむかちゃんに!!」
「えっ? わたしのたんじょうび?」
次の日、早速私は、ひむちゃんに訊ねてみた。
「うん、5がつ31にちだよ。 ひいかちゃんは?」
「わたしは、5がつ27にち……すごいちか〜い!!」
「ほんとだ〜、ちかいね〜」
二人って色々と近いね……それが凄く嬉しかったんだ。
その夜、ママにその事を報告したの。
するとママは、凄く考え込んで……何やらつぶやいてた。
「……一週間早めて……ひいかが誕生日を追い越して……ひいかより数日遅い……」
「どうしたの? ママ〜」
「あ、ごめんね、ひいか。 ママ、あの夢の話を思い出してたの。 ママね……」
ママは私の前にしゃがみこみ、真っ直ぐな視線で私を見る。
「その子……ひむかちゃんが、夢の神様が言ってた”運命の女の子”だって分かったの。 それでね……」
ごくり。 私は息を飲む。
「ひいか、ひむかちゃんと姉妹のように仲良くしなさい。 夢の神様を信じて」
「ママ……うん! わたし、もっともっとなかよくなる、ひむかちゃんと!!」
私はその時決意したの。
・・・・・・
「ママ、行ってきま~~す!! ひむちゃんが待ってるから!!」
「はい、気を付けて行ってらっしゃい!! ひいか、貴女も今日から高校生なんだからね、色々と頑張りなさいよ」
そんなママの声を背に、ひむちゃんが待つガゼボに向かう。
よーしっ! 今日も元気一杯、ひむちゃんに挨拶だ~~!!
思いっ切り深呼吸してから、ガゼボで本を読んで私を待ってるひむちゃんめがけて走る。
「ひむちゃーん! おはよー!」
腕をグルグル、猛アピール!!
「ひいちゃーーん! 腕がもげるよぉー」
ひむちゃんはおっかなびっくりな顔をしてる。
さすがに元気アピールしすぎたかな、あはは。
「高校になっても一緒だねー ひいか、嬉しいよー」
「でもでも、喜びすぎ! 肩が心配になるよ」
ん? 何だか笑いをこらえてる??
私はちょっと、やり過ぎアピールが恥ずかしくなって赤面して、 「じゃ、学校に行こー!」 それをごまかすように、ひむちゃんに号令をかけたの。
本編の第37話・第4話をベースに、プロローグを書き上げました。
☆今回気を付けた点☆
回想シーンでは、子供のセリフを平仮名、片仮名でまとめました。
ひいかは、出会ったばかりのひむかの事を「ひむかちゃん」と呼ぶ設定にしてるけど、地の文は現在のひいかだから、「ひむちゃん」で統一しました。
あ、今回は地の文を、難易度の高い「一人称」にして挑戦してみます。
【追記】
第2話以降に合わせるため、地の文から心の声の丸括弧を取り除く改稿をしました。('26/6/9)




