第5話 酒のつまみ
もう一頁と思ったが、もう寝ないといけない時間だった。
そっとノートを閉じた。
朝には、昨夜の出来事なんてすっかり忘れていた。
何でこんなに眠いんだろう、なんてぼんやり考えながら、会社に行く支度をした。
満員電車の中で、薄っすらと思い出した。
昨夜、自分の書いた黒歴史エッセイを読んだことを。
(……でも、割と面白かったけどね)
帰ったら続きを読もうと思っている自分がいた。
そうだ!宝くじ、一枚だけ買っとこう。
いつも通りの毎日が終わるとドラッグストアで缶チューハイを買って、足早に帰宅した。
(さてさて、昨日の続き……!!!)
破られてる!昨夜は気づかなかったが、続きの頁が破られていた。
どうした!
何があった、あの時の私?!
結構面白かったのに……。
もう続きは無いのかと諦めかけた、その時……。
思い出した!!
クローゼットの段ボールの中を再び漁った。
(あった!“こっちだ!”)
もう一冊。
こっちが、“本編”だったんだ。
『#5 酒のつまみ
酒のつまみ位の軽さで読んでくれる?
大した話じゃないねん。
いや、私には大した話なんやけど、ってどっちやねん!
先日、11ヶ月付き合った彼氏に振られまして、只今、私、フリー期間でございます。
後一月で一年記念やったのにや!親にも、そろそろ結婚の話をされるしな。キツイやん?
めちゃくちゃ好きやった訳でも無いんやけど、普通に好きやった訳で…。
何となくで付き合っても、割と好きになるもんなんやな、なんて思ってた。
ってことはさ、何となくから人って人を好きになれるんやな?って話やねん。
第一印象から好きでした、ってあれ凄いな。
一目惚れってことやろ?
見た目も中身も、その後ずっと印象変わらんってことやん?
そんな人、中々おらんで?
それは凄い!ほんま凄い!おめでとう!
でも、さっきも言ったけど、第一印象と第二印象以下ずっと印象変わらん人って凄いな。
見た目はタイプやったけど、中身違った。若しくはその逆?そういうもんちゃうん??
え?わしだけ?
でさでさ、次は第一印象から変わらず好きな人を探すことにしたんよ。
え?相手の気持ちは?って?知らんがな。
またなー。』
(あー。そやそや。付き合っとった!)
缶チューハイを開け、ぐびっと飲んだ。
(つまみはほろ苦い……。)
つづく




