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62 新たな仲間と、新たな火種

「ありがとうございます。助かりました」

「いいよ。疲れただろ?」


縄梯子を登って来てお礼を言う2人に、斎藤が用意してくれたペットボトルのお茶を渡す。

よっぽど喉が渇いていたのだろう、それはすぐになくなった。


「あっ、すみません。自己紹介がまだでしたね。俺は 梶 裕 です。それでこっちの無愛想なのが 石川 結です」

「俺は 神谷 浩 だ」

「石川さんは私と下の名前一緒だね。堀江 唯 だよ。ヨロシクね」

「私は 斎藤 千よ。ヨロシク」


それぞれ自己紹介を行うが、石川さんの声はいまだに聞けていない。

まだこちらを警戒しているのは、目つきからわかる。

いつでも梶君を守れるような位置取りをしているしな。


「ところで、あの持っていた剣はどうしたんだ?」

「家が剣術道場をやっていたので、道場に飾っていたやつを持って来ました」

「刀じゃないのは珍しいな」

「うちの親はヨーロッパの方で剣術を学んだので、その時に師匠だった人から貰ったらしいです」

「2人も剣術を習ったのか」

「はい。小さい頃から結と一緒に。結には一度も勝てた事がないですけどね」


そういって、屈託のない笑顔を見せる梶君。

悪い奴ではないのだろう。


「2人ともお腹空いたでしょ?」

「はい!昨日からなにも食べていないので、もうペコペコです」


そう言って、堀江がパンを焼いた簡単な料理を運んで来る。

エッグベーコン付きだ。


「ありがとうございます!」

「ありがとう」


これは嬉しかったのか、石川さんも初めて声を出してお礼を言う。

2人が食事をしている間、厨房で俺達の分の食器を片付けている、斎藤と堀江の所に向かい話をする。


「どうだ?あの2人は?」

「そうね。大丈夫じゃないかしら」

「私も大丈夫だと思うよ。石川さんも警戒が解けて来たようだしね」

「そうか。俺も同意見だ。正式に仲間に誘おうと思うが良いか?」

「いいわよ」

「オーケーだよ」


2人の許可を貰い、食事を食べ終わった2人の所へ行き話し掛ける。


「2人はこれからどうするんだ?」

「うーん。行く宛てもないので、出来ればここにいさせてもらいたいのですが」

「それならオーケーだ。俺達も2人に仲間になって欲しいからな」

「本当ですか?助かります」

「ああ。2人の剣術は戦力になるしな。剣も持っていた着ていいが襲うなよ?」

「そんな事しませんよ!親から人間には使うなと厳命されてますから」

「そうか。それなら安心だな」

「はい。これからよろしくお願いします」

「お願いします」


こうして2人は仲間になってくれた。

いまは口数が少ない石川さんも、徐々にでも打ち解けてくれるだろう。


「因みに神谷さん達はこれからどうするんですか?」

「堀江の親が街中にいるから、折を見て探しに行こうとは思っている」

「そうですか。その時は俺達も連れて行って下さい。役に立ちますので」

「了解だ。期待している」

「はい!」


そう言うと、2人は縄梯子を下ろし、下に置いて来た剣を取りに行った。

下にはまだゾンビが彷徨いているので、爆竹を投げてゾンビを引きつけてやる。

無事に剣を拾って来た2人は、剣の手入れを始めた。

ここまでゾンビを斬りまくって来ただろうから、刃こぼれしているだろうと思ったが、ゾンビの地と脂を拭うと、傷一つない綺麗な刀身が現れた。


「凄いな。刃こぼれがないなんて」

「斬るのにコツがいるんですよ。まあゾンビも既に骨がボロボロですからね」


この若さでそんな技術を修めている事に改めて感心する。

街中に調査に出る時は、頼りにさせてもらおう。


「何あれ!」


台所での片付けを終え、窓辺でお茶していた斎藤が何かに気付く。

急いで斎藤の所へ向かい外を見てみると、1台のクルマがこちらに向かっており、その後ろには大量のゾンビの群れが続いていた。


「あれはまずい。こっちに来るな。いつでも助けられる準備をしておけ」

「はい!」

「いいわよ」

「オーケーだよ」


石川さん以外が返事をしたが、石川さんも既に臨戦態勢だ。

斎藤と堀江は花火を持って屋上へ行き、いつでもゾンビを誘導出来るよう準備をする。

2人には防災センターから持って来た無線機を渡した。

俺と梶君と石川さんは、フードコートで待機し、縄梯子からいつでも降りられるようにしておく。

段々近付いて来た車は、どうやら自衛隊の車のようだ。

それはボディが迷彩柄のトラックだった。

20人ぐらいは乗れるだろうか。

後ろには幌が付いていて中は見えない。

しかし、助手席に乗っている人物には見覚えがある。

車が駐車に侵入し、モールの近くにいたゾンビもそちらに寄って行く。


「斎藤、堀江。北と南にゾンビを誘導しろ」

「了解」


代表して斎藤が返事をしたあと、北側と南側から爆竹の音が響く。

ゾンビが南北に別れ、東側にあるフードコートまでの道が出来る。

オレは手にした手持ち花火に火を付け、こっちに向かって来る車に向かって振る。


「隊長こっちです!」

「神谷か!了解だ!」


近くまで来たクルマの中に向かって叫ぶと、こちらに気付いた向こうも返事をして来る。

2階にあるフードコートの真下に車を停めたのを確認し、剣を持った梶君と石川さんが車の上に飛び降りる。

さあ救出作戦開始だ!

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