49 お願い!
フェリー乗り場に着いた私達の目に飛び込んで来たのは、大量のゾンビの死体でした。
潰され、裂かれ、ドミノ倒しになっているゾンビ共。
誰がやったのかは明白です。
あの非常識な人達ですね。
「福山達はフェリーを制圧するために、客室デッキに向かったようだから、俺達は別にトラックデッキを確保しよう。ただ様子を見て、ゾンビが多いようなら撤退な」
杉田さんは以前、タンクローリーに乗っていた頃、何回かフェリーを利用した事があるようで、案内役をしてくれるみたいです。
しかし、フェリーに近付くためには、倒れているゾンビの死体を排除しなければいけません。
福山さん達が残して行ったトラクターを、内田さんが嬉々として運転し、倒れているゾンビを排除します。
まるで除雪車ですね。
そうして出来たフェリーまでの道を進み、トラクターを先頭にトラック二台、アルファードの順でトラックデッキに侵入します。
トラックデッキの中は薄暗く、電気は消されているみたいです。
非常灯のような物の灯りを頼りに進んでいると、トラクターが急停止しました。
よく見ると、トラクターの周りにゾンビが群がっています。
「内田、大丈夫か!?」
「キモ過ぎー」
悠木さんが無線で内田さんの安否を確認しますが、まだ余裕がありそうです。
「今行くわね!」
「ちょっと待て」
雪ちゃんが助けに車の外に出ようとしますが、悠木さんに止められます。
すると、車のサンルーフから身を乗り出し、ボウガンを撃ち始めました。
矢は的確にゾンビの頭を貫き、一体一体倒れていきます。
何とかトラクターの周りのゾンビを撃退し、皆で安心していると、佐倉さんの悲鳴が聞こえました。
「キャアッ!こっちにも来たッス!」
フェリー内に停めてあったトラックの影から、続々とゾンビが這い出て来ます。
瞬く間にアルファードの周りがゾンビで埋め尽くされました。
トラクターやトラックの方も囲まれているようです。
「このぉ、死になさい!」
「ちっ、マズいな」
雪ちゃんが窓の隙間から刀を突き刺し、ゾンビを仕留めていますが、全然減らず焼け石に水状態です。
悠木さんも、ボウガンを撃ち続けていますが、次々と迫るゾンビの物量に焦りが見えます。
「撤退するぞ!佐倉、車の後ろのゾンビを銃で撃て!内田はUターン出来るか?」
「了解ッス!」
「やってみる」
佐倉さんが、高校生達から譲り受けたショットガンを構え、ゾンビ共に向け発砲します。
内田さんはバケットの部分でゾンビを殴り飛ばしながら、トラクターを切り返しています。
その間も雪ちゃん、悠木さん、杉田さんも木刀で、ゾンビの頭を貫いて倒しています。
私は何もできませんが、いつでも車を発進できるよう待機しています。
でもバックは得意じゃありませんけど大丈夫でしょうか?
そうこうしている内に、トラクターの切り返しが成功し、内田さんがこちらに向かって来ます。
再びゾンビの群れを除雪車の様に排除し、外までの道が開けました。
私は恐る恐るバックして行きます。
前にはトラックが二台いるので、止まれないというプレッシャーが。
外まであと少しというところで、痛恨のミスをしてしまいました。
私も気付かずに、道に対して斜めにバックしてしまったため、脇にあったゾンビに乗り上げてしまったのです。
慌てて道に戻ろうとしますが、タイヤがゾンビとゾンビの隙間にはまってしまい、空転して動く事が出来なくなりました。
「早見お姉様!」
内田さんが気付いてトラクターで近付いてくれます。
タイヤの所にいたゾンビを器用に避けてもらい、何とか道に戻る事が出来ました。
ホッとしたのも束の間、トラクターの運転席に向けて何かが飛びかかりました。
よく見ると、それは丸まると太ったゾンビで、井口さんのようでした。
太ったゾンビはトラクターに何度もぶつかり、運転席にはヒビが入り始めました。
「ウッチャン!」
「内田!」
佐倉さんと悠木さんが太ったゾンビを狙って撃ちますが、動き回ってるため頭に当たらず、腹に当たっても肉の壁に阻まれて効いていないようです。
運転席の窓全体にヒビが入り、あと一撃で割れてしまいそうです。
「内田さん、逃げて!」
私は有らん限りの声をあげますが、内田さんは観念したのか、固まったまま目を閉じてます。
「イヤッス!ウッチャン!お願い!誰か!」
「ウッチャンを虐めたらダメです!」
佐倉さんの悲鳴が辺りに響き渡ると同時に、聞き覚えのある声が聞こえてきました。
もしかしてあれは、シンデレラ!




