5話目 『 学校の怪談 』
じゃあ、俺は怪談の王道、昔養護教諭として勤めていた中学校の七不思議の話でもしようか。
1、脱出ゲーム
2、徘徊する肉塊
3、幸せの色
4、裏三童謡
5、人面果実
6、保健室のジキルとハイド
7、呪術少年
此れがその中学の七不思議。
1つ目、脱出ゲーム
4時44分又は7時16分調度に知らないアドレスからメールが来る。
メールには、
「おめでとうございます!!貴方は“脱出ゲーム”に参加できる事になりました!場所はあの世とこの世の狭間にある“学校”。ルールは生きてこの世に帰ってくる事!簡単だろ?た・だ・し、“学校”には沢山の妖怪・悪霊が貴方の命を狙っている。“学校”で貴方が死ぬと妖怪・悪霊の仲間入り。皆で楽しく暮らそうね!!さぁ、命がけの“ゲーム” を始めようか・・・・・・ゲームマスターより」
と書かれている。
参加者に選ばれたものはゲームから逃げられず、強制的に“学校”に連れてこられる。
今までに帰ってこられたのは1人だけらしい・・・
その帰ってこれた人物によると出口までたどり着くとゲームマスターからなんでも望む『おまじない』を1つだけ教えてくれるそうだ。
2つ目、徘徊する肉塊
ある年の授業参観日、ある生徒の両親が学校で死んだ。
死因は事故死。
子供の授業を見て帰ろうとした時、誤って3階の階段から1階へ転げ落ちたのだ。
2人は首の骨を折り即死。
そのことに残された子供は表面では悲しみ内心歓喜した。
子供の両親は子供をまるで人形のように扱っていたのだ。
着る物も、部屋の装飾も、趣味も、進路も
全て、全て、親に決められていた。
まるで奴隷のように両親に命令され働かされていた。
両親は子供が文句を言うと、
「私たちはあんたの親なんだから命令して当たり前よ!!!」
と子供を殴り、蹴り、理不尽な説教をした。
子供を誰も助けてくれない。
教師も、友達も、近所の人も
どんどん溜まる暗い感情にある日子供は歪んでしまった。
表面上はいつもと変わらない子供。
しかし、その心なかは両親に対するどす黒い殺意で満ちていた。
子供は毎日毎日、あらゆる呪を両親にかけた。
何千、何万回、殺しても殺したり無いほどの殺意を呪いに乗せて両親に送り続ける。
両親が苦しむほど子供の心は穏やかになっていく。
そして、ついに子供の両親は学校で死んだ。
だが子供の呪はこれで終わらない。
死んだ後も両親が苦しむように呪いを掛けた。
永遠に終わる事の無い苦痛にのた打ち回り、醜い化け物の姿で子供が許してくれるまで謝りながら学校を徘徊し続ける。
子供が寿命で死んだ後も許される事無く両親は徘徊し続ける。
醜い肉塊になっても心をなくしても・・・・
この肉塊に捕まってはいけない。
理性も知性も無くした化け物は本能のまま近づいたものを食べてしまうから。
特に子供は自分の子供だと思われて同じ姿にされる。
理性も知性も無くしたのに子供への恨みは残っているのだから。
3つ目、幸せの色
まるで血の様に赤く染まった黄昏時、笑った顔のお面をした女の子にあったら声を掛けられる前に逃げなければいけない。
その少女はとっても明るい声で、
「人を見ているとなぜか無性に“殺し”たくならないかい?その肉に刃物をめちゃくちゃに突き刺して真っ赤に染めたり、逃げ回るその体にゆっくりゆっくり1発1発弾丸を埋め込んでいったり・・・・イライラしていたこともムシャクシャしていた事も全部忘れてしまうほど。スッキリできる。貴方も楽しし楽しいパーティーに参加しない?」
と、聞いてくる。
参加すると答えると貴方は殺人鬼に・・・
参加しないと答えると、
「そう、残念ね。なら・・・赤、青、白、黒、貴方の幸せの色は何色?」
と聞かれ、
赤と答えると目の前で大量に生物を殺され返り血で紅く染まってから殺され、
青と答えると誰も来ない水底に沈められ、
白と答えると全身の血が抜けるまで滅多刺しにされ、
黒と答えると真っ黒焦げにされるまで生きたまま焼き殺される。
4色以外の色を答えると、
「その色は幸せの色じゃない!!」
と、誰だか分からないほど細かくバラバラにされた後、学校中に何日も掛けてばら撒かれる。
少女に声を掛けられたら最後、貴方の人生は“終わる”。
逃げるすべは無い・・・
4つ目、裏三童謡
“影”から、
『かごめかごめ』聞こえると誰かが死に
『とうりゃんせ』聞こえると誰かが神隠しに合い
『はないちもんめ』が聞こえると誰かと死者が入れ替わる。
どんなに耳をふさごうと歌は聞こえてくる。
“誰か”は多く、もしくは強く思われている人がなる。
助かるすべは2人以上で行動する事。
つまり、自分が少しの間助かるために誰かを身代わりにするしかない。
しかし、誰かを身代わりにしてもいつかは自分が犠牲になる事は変わらない。
5つ目、人面果実
中庭の隅にある大木には人の顔をした木の実がなる。
その顔は木の下に埋められた人の顔。
いつしか木は新しい顔を求めて人を自分の下に埋めるようになった。
今、木の下に居るのは5人。
木の下に居る人たちも新しい仲間を求めている。
ただし、木達が求めているのは美しい顔の若い人間だけ。
醜い人は見向きもされない。
そして、木の実を食べようとしてはいけない。
食べようとすると逆に“喰われる”。
6つ目、保健室のジキルとハイド
普段と違う“学校”に迷い込んだら保健室に行くと良い。
君たちを助けてくれる優しい笑顔を浮かべた保険医の青年が助けてくれるはずだ。
ただし気を付けないといけない事が1つ。
彼は昔この学校にいた生徒からも教師からも人気だった保険医だ。
白衣とメガネが似合う笑顔の好青年のもとには怪我や病気をしていなくても毎日誰かが訪ねてきた。
それにも嫌な顔せず笑顔で迎えてくれる彼に青年の人気はさらに上がった。
だがただ1人彼が嫌いな少女がいた。
見た目も精神も幼い少女。
少女は事あるごとに保険医の話で盛り上がるクラスメイトたちを馬鹿にし、いつしかクラスで孤立してしまったのだ。
そんな少女を哀れに思ったのか保険医は少女を誰もいない放課後に保健室に招待した。
翌日、獣に切り裂かれ食い散らかされたような彼女の手足の破片が焼却炉から発見された。
それからと言うもの時たま生徒が消え、無残な手足だけが捨てられる事件が起きるようになった。
警察がどんなに調査しても教師がどんなに見回りをしようとも犯人は見つからず、嘲笑うかのように事件は起きる。
ある日、幼い顔の可愛らしい少年が部活中に怪我をして1人保険室に来た。
しかし保健室には何時も居るはずの保険医いない。
自分の死角に居るかもしれないと思った少年が辺りを見回すと、保健室からしか入れない隣の部屋である、いつもは『開かずの部屋』と言われるように厳重に鍵が掛かっているはずの仮眠室の扉が空いていた。
保健医が居るかもしれないという思いと、普段見れない部屋の扉が空いている好奇心から少年は仮眠室を覗いた。
そこには地獄でも見たような顔で息絶えた同学年の少年と少年の死体を犯しながら手足をバラバラにする別人のような保険医の姿があった。
興奮して赤くなった顔と血走っているがうっとりとした目、
狂気に彩られた笑顔、
恋人同士がシテいるように優しくゆっくりと死体を犯す姿はまるで悪魔のようで吐き気すらする。
さらに部屋のいたるところには手足を切り取られた少年少女の死体が剥製にされ満面の笑みを浮かべながらガラスケースの中に収まっていた。
そう、誰も想像していなかったあの好青年保険医が連続バラバラ事件の犯人だったのだ。
保険医は学生の頃から見た目や精神が幼い子が好きだ。
その思いは年が経つにつれ大きく深くなり異常性を孕んでいった。
犯して殺して自分だけのモノにして剥製にして永遠にそばに置いておきたいと。
保険医になったのも自分好みの子を物色するためだ。
覗き見ていた少年を襲おうとして少年が助かろうと出鱈目に振り回した自分が少年少女たちの命を奪った包丁に刺殺されたあとも彼の執着は薄れず魂は今も学校に残っている。
それが、“学校”にいる保険医だ。
彼に会いにいくときはけして1人で行ってはいけない。
好青年で自分たちの味方でいてくれるハイドからロリコンでショタコンの異常殺人鬼のジキルに戻ってしまう。
そうなったら君は『だるま』の仲間入りだ。
7つ目、呪術少年
クラスに1人位いそうな、平凡で平均的で、
「あんな奴いたな」
位にしか印象に残りにくい少年がいた。
明るくリーダーシップがあるわけでも、
暗くてクラスで虐められるタイプでもなく、
勉強や運動が出来すぎる訳でも、
出来なすぎるわけでもない。
反抗期と思春期で年頃の子供らしくほんの少し素行不良な所もあるが、授業は真面目に取り組んでいる。
正に模範的な10代の少年だ。
ただ1つ、今現代では馬鹿にされそうなあることに関してだけ天才だった。
それは『呪い』や『おまじない』。
世間からは極度のオカルト好きと馬鹿にされても、少年は古今東西あらゆる呪いやまじないと呼ばれるものを方法や効果、起源すら調べ尽くした。
そして遂にノーリスクハイリターン、何も失わず望む以上の成果で呪い返しも効かずに誰でもお手軽にできる呪いやまじないを行う方法を見つけた。
少年にかかれば憎い相手も、邪魔な奴も、手に入れたいモノも、失ったものを取り戻すことも、ちょっとした儀式をするだけで望むがままだ。
あるクラスメイトは両親を殺すために、
ある同学年の生徒は自分より秀でたものを陥れるために、
ある後輩は片思いの相手を手に入れるために、
ある先輩は第1志望校の試験内容を知るために、
少年の噂を聞きつけて会いに来た。
何時しか少年の儀式を目の辺りにしたクラスメイトから口伝いに少年の噂は広まり野次馬だけではなく、自称霊能力者や専門家、記者にテレビ局、大学の偉い教授や果てには世界中の大金持ちや政治家まで少年のもとに訪れた。
人間の欲望は尽きることがなくて少年のおまじないを欲した人間は、家だろうが、学校だろうが、ちょっと寄った店だろうが、時間も場所も関係なく少年に群がった。
それはまるで甘い甘い蜜に群がるアリのようで、欲望を抑えない人間の姿は『醜悪』を形にしたようだった。
だからだろうか。
少年はある日、自分のもとを訪れた人間達にゲームを持ちかけた。
「こんなに沢山毎日来られても困る。こんなにいては自分の元に来た全員におまじないを教えることはできない。だからこれから言うゲームをクリアした人だけに1つだけ教えることにした。今から送るメールに添付したものがそのゲームだ」
少年のまじないを集結させて作られたゲームが“裏”の学校こと『脱出ゲーム』の世界である。
その世界には見た目も性格も能力も少年の全てを完全完璧コピーした、“もう1人の少年”が支配している。
ゲームを誰もクリアできなかった事もあり、少年の噂は何時しか忘れられ現実の少年が成長し年老いて死んだためか成長しない“もう1人の少年”は本来の目的を忘れ、無差別に人間を自分たちの世界に呼ぶようになった。
どう?
怖かったかな?
けど、大体は誰が流したか分からない、根も葉もない唯の噂だ。
でも6番目だけは現実に起きた事件が元なんだよね。
『獣に切り裂かれ食い散らかされたような彼女の手足の破片が焼却炉から発見された』
って合っただろ?
新聞に載った事件だから知ってる人もいると思う。
今から9年程前、“関 笑子”と言う当時14歳の女の子が行方不明になり、数日後彼女の手足が焼却炉から発見された。
残りの部分は結局見つからず、死亡扱いで捜査は打ち切られた。
“関 笑子”が通っていたのがこの七不思議が合った学校なんだ。
“関 笑子”の事件を元に七不思議の6番目が生まれた。
あぁ、でも、現実と違う所が2つあるね。
新聞を見たなら知っていると思うけど、犯人は“関 笑子”を虐待していた母親。
その当時の擁護教諭は全く関係なかった。
娘を手に掛け完全に壊れた母親は今も精神病院に入っている。
もう1つは“関 笑子”は生きている。
今も手足の無い、『だるま』の姿で生きてるんだ。
幼い頃より素直でいい子になってね。
え?
なんでそんなにハッキリ言い切れるのかって?
フフ、何でだと思う?
君の想像に任せるよ。
それより、早く終わらせてくれないかな?
エミが待ってるんだ。
早く帰らないと。
あの子、俺が居ないと何も出来ないからね。
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そう言って、眼鏡と白衣を着た壮年の男性は蝋燭の火を吹き消した。