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ボディーガードは次元戦艦オイナリサン!  作者: 矮鶏ぽろ
第一章 次元戦艦オイナリサン!
12/196

全然ソフトじゃない! ハードだ! (挿絵あり)

体育の授業中、真奈美に打球が襲いかかり、次元戦艦オイナリサンが……ややこしく処理する。

 全然ソフトじゃない! ハードだ!


 グランドに出ると、寒さが靴の底からじーんと伝わってくる。

 授業はまたもやソフトボール。体育の先生がいい加減なやつで、晴れの日はソフト。雨の日はバスケ。それをかれこれ一年近く繰り返している。

「もっと他にやんないといけないこともあるでしょうに」

「そうねえ。でも……体操とか鉄棒とかも、あんまりやりたいとは思わないなあ」

 それも同感。

 佳奈も私と同じで、体育なんかには全く興味がない。

「そうそう、ソフトボールが一番楽しいじゃない」

 則子だけはそう言って、私達の横を走ってグランドにかけ出した。

 

 ……部活で毎日ソフトボールをやっていて、それをまた体育でもやり、さらにそれが一番楽しいと言う則子の頭の中は……いったいどうなっているのだろうか。

 見ると則子は係でもないのに大きなベースをせっせと運んでいる。……則子は性格も良いのだ。

 

 ――ちなみに、私だって性格がいいと言っておきたい!


 私がサードを守っていた時、たまたま球による事件が起きた。

 手加減をして投げている則子のボールが、クリーンヒットされたのだ!

 カキーン! 

「サード!」

 則子の声と同時に私の顔を目掛けて打球が一直線に飛んでくる――!


 ――運動オンチの私に取れるわけないじゃない!

 と思った瞬間に、目の前でボールが裂けて……当たらなかった。

 驚いてペタリとその場に座り込む……。

「大丈夫? 真奈美」

 則子が駆けつけてくる。佳奈も外野から駆け寄って来てくれた。

「ええ、大丈夫……みたい」

『危険信号により接近物を表裏反転処理。その後異次元転送し検証。安全処理後に返送。待機中』

 目に映るその文字のおかげで、ボールの直撃を免れたのだけは容易に分かる。

 後を見るとレフトを守っていた友達が奇麗に四つに裂けたボールの残骸を持ってきた。

 則子やみんなでそれを輪になって凝視する。

「――包丁で切ったように奇麗に四つに裂けてるわ」

「……こんなことって、ありえるのかしら……」

 不自然極まりないボールを、みんなが手に取って見つめている。


「もともと亀裂が入っていたのね! おかげで怪我せずに済んだわ、ラッキ~!」

 白々しくそう言って元気に立ち上がると、不思議そうな顔をしながら、みんな散らばり、何事もなかったようにソフトボールが再開された。


 ――ちょっとイナリ! 守ってくれるのはいいんだけど、不自然過ぎよ!

『守るだけならどうってことはない。今回は君の危険信号により処置を施した。待機中』

 だから、その処置が不自然だって言うのよ。普通、急にボールが奇麗に四つに裂ける?

『昨日、真奈美の母は、表面赤色内部白色果実をそのように処置していた。それに習った。待機中』

 

 リンゴと言いなさい!

 

 まったく……。

 サードベースの横に転がっている裂けたボールを見ると、御丁寧に裂けただけでなく、芯の部分もえぐり取った後がある。

『芯の部分はゴミと判断。自宅の真奈美の部屋のゴミ箱へ転送済み。待機中』

 はあ? 私の部屋のゴミ箱?

『学校内ゴミ箱への転送も可能。異次元80318で保管するのも可能。どちらにする?』

「学校のゴミ箱に決まってるでしょ! そんなもの異次元で保管してどうするのよ!」

 そう言った瞬間、また則子の声がした――!

「サード! 危ない!」

 ボールの残骸から瞬時に前を向いたのだが、ボールを目に捉えることはできなかった。

「キャアー!」


 ボールは私の体に……またしても当たらずに、後ろへ逸れた――!

 ふー危なかった。

『異次元シールドにより物体接触回避。待機中』

 また……みんながこちらを呆然と見ている……。

 

 さっきと同じように……わざわざ私の周りに集まってくれる。ありがたいような迷惑のような……。

「当たったと思ったけど、大丈夫みたいね」

「――なんか、後ろから見ていたら、体を突き抜けたようにも見えたんだけど」

『突き抜けたのではない。異次元へ転送後、今回は姿を維持し背後へ再転送しただけ。待機中』


 ――ええい、ゴチャゴチャ文字を映すな。


「大丈夫よ、何ともないわよ。あー怖かった。さ、みんな戻って戻って」

 またみんなをそう言って守備位置へ戻すと、イナリに文句を言ってやった。


 ――だ~か~ら、あんなんじゃバレるって!

『バレることの問題について理解不能。待機中』

 理解不能ですって?


 イナリのことなんかがバレたら、普通の生活ができなくなるかもしれないでしょ。私は今の生活に満足しているのよ。そりゃあ……色々要求とかはあるけど。


『バレて問題が発生すれば、それら全てを削除予定。待機中』

「何でも削除するなっつ~の!」

 カキーン!

 思わずそう声を出していた時、三度目のライナーが私の顔へと一直線に向かってきた!

「真奈美! 危ない! 避けて!」

「ほえ?」 

 直ぐに前を向いたのと同時に――目の前が一瞬真っ白になり、今度こそ顔面にボールが直撃した。


 ――ゴッ!

 頬骨に鈍い音が伝わると私は、ノックアウトされたボクサーように……ゆっくりと後ろへ倒れた。


 頬にはソフトボールの縫い目と模様がクッキリと赤く浮かび上がった……。


挿絵(By みてみん)

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