保健室での言い争い
ソフトボールが顔面に当たり、保健室に運ばれた真奈美は、次元戦艦オイナリサンと……醜い言い争いをする。
保健室での言い争い
目を開けると白い……天井?
佳奈と則子が私の顔を心配そうに覗き込んでいるのが見える……。
あれからの記憶が少しないが、保健室に運ばれたのは容易に想像がついた。
「大丈夫?」
佳奈が心配そうに声を掛けてくれる。
絞ったタオルが右目の下から頬にかけて置かれていた。恐る恐る手でボールの当たった所を触ると、
――痛っ! ……かなり痛む。
「ずっとボーッとしてるから悪いのよ。体育でも気を抜いてたら怪我するんだから」
……則子は厳しかった。
何よ、あんたソフトボール部なら一般人に打たれるような球投げるんじゃないわよ! ……とは口にしない。集中していなかった私が悪いのだ。
「その腫れようじゃ、しばらく青アザになるわね……」
則子は厳しい顔のままでそう言った。
――なんてことなの。乙女の奇麗な顔に傷が付いてしまうなんて……。涙目になってくる。
「マナの可愛い顔が台なしじゃない」
佳奈がそう言ってくれる。
……本心かどうかは疑問だけど、心配してくれているのは確かだ。
保健の先生が白いカーテンを開けて覗きこんだ。
「樋伊谷さん大丈夫? あなた達は授業へ戻りなさい」
「「はい」」
私を残して二人は教室へと戻って行った。
保健の先生はもう少し安静にしておくように言ってくれたので、それに甘えることにした。
きっちり話しておかないといけない相手も居る――。
――おいコラ、イナリ! どういうことよ。あなたの御大層な異次元粒子砲も効かない異次元シールドは飾りなの?
『異次元粒子砲が効かないと言った覚えはない。威力を半減させることが可能と言ったのだ。だが安心しろ真奈美。異次元粒子砲は次元戦艦である我らか、それ以上の階級を持った次元戦艦にしか搭載されていない。我ら次元戦艦は仲間撃ちなど無謀なことを行わない。大宇宙の全てにおいて異次元粒子砲が存在しないとは断言できないが、この銀河系内に皆無なのは確認済み。待機中』
――話を逸らすな!
私が言いたいのは、何でボールが当たってアザなんかつくり、ここで寝てないといけないのかって怒ってんでしょ!
『話をそらしたのは真奈美。ここで寝てないといけないのは、真奈美より人間として階級の高い保健の先生の命令。しかし、ボールが当たったと感じているのは誤感知。当たってなどいない。待機中』
「――嘘おっしゃい! 充分痛むわよ」
『私の存在や異次元シールドがバレないよう、ボールが当たったのと全く同じように再現実施中。真奈美の意識、痛覚、表皮着色処理も完璧。周囲には全く不自然なし。超完璧処理。待機中』
「それって実際にぶつかったのと一緒じゃないのよ! バカ!」
「どうしたの、樋伊谷さん。打ちどころが悪かった?」
思わず声をあげてしまい、保健の先生がカーテンを開けて入ってきた。
「あ、今のは独り言です。大丈夫です。すみません」
私は直ぐに目を閉じた。
『バカとは憤慨。真奈美の方が容易にバレそうな行為を実施している』
……顔に青アザができるなんて最悪よ。
そんな顔、橘君にでも見られたらどうしたらいいのよ……。
『アザと痛覚は容易に調整可能。今すぐにでも復元可能だが、それでは不自然極まりない。待機中』
なによそれ、じゃあアザなんてすぐ治るの?
『可能。だが真奈美はバレるのを拒否している。このままが推奨。待機中』
――さっさと痛みくらい消しなさいよ!
『調整中。はい完了。待機中』
すると頬の痛みは嘘のようになくなり、アザの色もほんのり赤色程度に治った。
ああ良かったと安堵する……んだけど!
今まで無駄に痛みを我慢していたのかと思うと……。はあ~ため息が出る。




