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叶わぬ思い


 年が明けて、1月も後半。

 寒いよねぇ~。

 朝一番の診察の時って、手がかじかんでてカルテが上手く書けない時ある。


 珍しく...、ひじょーに珍しく、診察待ちのカルテが並んだ。

 どんな子が来ているか見てみると、何番目かにシェパードのカルテがあった。

 そう、年末に出血で大騒ぎしたけど、なんとかその後は落ち着き、抜糸まで出来たのだった。

 どーしたんだろ?

 何かあったのかな?

 でも、主訴を見ると、どうやら元気そうだから見せに来たみたい...。

 元気なら家にいていいのに...。


 さて、いよいよシェパードの順番...。


 え? 車から降りれない?!

 急いで車まで見にいくと...、


 虚脱。

 顔面蒼白(毛がなければ、きっと)


 また、出血だ。

 お腹も大きくなってるし...。


 なんとか車から下ろし、必死の思いで診察室まで運んで診察台に載せる。

 ゼーハーする自分の息を整えながら、シェパードの股動脈を診る。

 弱く速い。

 留置して、点滴を急速で落とそう。

 でも、入るかな?

 虚脱してるから、ちょっと不安。

 手術の時に前脚で懲りてるので、最初っから後肢で。

 ショック状態だから、血管が出てるのやら出ていないのやら...。

 何度か探ったあと、気合いで入れた。

 チューブをつないで全開で落とす。

 足曲げちゃうと落ちなくなっちゃうので、舞ちゃんに持っててもらう。

 で、わたしは他の注射の用意。


 傷はしっかりと治ってるから、外に漏れることはないよね。

 ある程度のところで止まるはず。

 

 どっと出血した時に血圧が下がるってことは、ある意味、それ以上の出血を抑えるってことでもあるんだよね。

 となれば、こーいう時に血圧をもとに戻しちゃうのって、また出血させちゃうってことになんないのかなぁ...。

 でも、ある程度の循環は維持しないと、ダメージは広がるばかりだし...。


 それにしても...、

 こんなことを繰り返しながら、いつか限界がきちゃうんだろうな。

 でも、どーしようも出来ない。


 いろいろなことが頭に浮かぶ。


 「この歳になっても、いまだにボールで遊ぶんですよ。今朝も遊んでました」

 ふと、舞ちゃんに話しかける飼い主さんの声が聞こえてきた。


 そんなに動いたら出血しちゃうの当たり前だよ。


 でも、じっとしてても出る時は出るか...。 



 しばらくして、

 脈がしっかりとしてきた。

 1リットル1本入れるつもりだったけど、このあたりでやめておこう。

 あとは皮下にもたっぷりのお土産。

 また、がんばるんだぞ。

 

 帰りはストレッチャーで車まで...。




 そして、次の日。

 「昨日はありがとうございました。元気出てきました」

 と、飼い主さんやってきた。

 なにげに窓から外を見てみると...。

 シェパード、車に乗ってるしぃ。

 元気なら連れてこなくていいってばぁ。

 車には自分から乗ったみたいだけど、また下ろすの大変そうなので、わたしが車まで往診。

 車に乗ったまま診察してみた。

 最後に傷を診たら、一個ホチキスが残ってた。

 ごめんねぇ。どこに隠れてた?

 診察室からリムーバー持ってきて抜糸。

 これで、ほんとに全部取れたね。


 「このまま治ってくれると良いんだけどなぁ...」

 診察が終わった時、飼い主さんが笑いながらそう言った。

 

 一度は覚悟決めたものの、こんな状態でも元気そうな姿を見ていると、やっぱり期待しちゃうよね。


 そしてまた、繰り返して。

 繰り返して...。


 でもね。 

 それでも、

 終わりは、来る...。

 


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