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プロローグ
その者は、燃え盛る炎の中で四肢を縛られ柱に磔にされていた。火刑である。
「違う、私じゃない!魔女なんかじゃないいいぃぃぃ!よく見ろ!人間だ!普通の人間だぁぁ!火を消せ!縄をほどけ!」
人が発声しているとは思えない叫び、時間が経つにつれて激しさが増す。
「あああ゛あああ゛つい、ししししぬぅぅじにたくなあ゛ぃぃぃいあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぃぎああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
突然、しんと静まり返った。パチッパチッと薪が爆ぜる音が異様に響く。鼻がもげる様な異臭が漂い、重苦しい空気の中、立会人のカリオストロ修道士が口を開いた。
「クラリス君、死亡確認と…民衆の方々にも処刑執行の証人となってもらいましょう」
「はい」
クラリス修道女が処刑執行者に目をやると、柱を回し黒焦げになった遺体の向きを変え、民衆に晒した。
「魔女は処刑されました。皆がその証人です」
どこからか流れてきた真っ黒な雲が空を覆いつくし、陽光を遮断して辺りを暗くする。
雨が降り始めてきた。
罵詈雑言を吐き散らしながら帰り始める民衆。
遺体は灰になるまで燃やされた。
その日、雨が止むことはなかった。




