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王宮の獣護   作者: 夜夢子
第4章

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野営戦 -終-

夜が明けかけている。


勝利の狼煙を天幕から見上げた戦死組は、喜びの歓声をあげてひとしきり騒いだ後、弾む心をそのままに撤収作業へと移っていった。そんな兵士たちの声を聞きながら、フーリェンは能力の反動の残る身体を近くの木に預け、明け方の光を浴びていた。生ぬるく吹き付ける夏の風が、彼の白髪を優しく撫でる。その時、足音が二歩、三歩と近づく気配に、彼の耳がぴくりと動いた。


「………どうしたの」


その声に、近づいてきた影が立ち止まる。ゆっくりと目を開けたフーリェンが顔を向けると、そこにいたのは、中央防衛を担っていた兄――ジンリェンだった。


「…様子を見に来た」


ジンリェンはフーリェンの隣に腰を下ろすと、ちらと弟の顔を覗き見る。


「少し顔色が悪いな。反動か?」

「…うん。……でも、そろそろ動ける」

「そうか」


ジンリェンは静かに頷き、空を仰ぐように目を細める。朝の光が、じんわりと二人の影を伸ばしていた。しばらくの沈黙の後、兄の視線がふと、弟の腰のポーチへと落ちた。開かれたままの口が空であることを確認して、彼は少しだけ口角を上げる。


「……で、あれは役に立ったか?」


淡々とした問いかけ。だがそこには、弟に託したものへの確かな関心と、少しのからかいが混ざっていた。


フーリェンは苦笑しながら肩をすくめる。


「……一度、全員凍った。お陰様で、次の瞬間には動けた」

「それは良かった」

「でもやっぱり、……使うとしんどい」

「それでも、大したもんだよ」


そう言ってジンリェンはさらりとした顔をしている。


フーリェンはそこで小さく笑い、目を細めた。そこには安堵と、兄の力を借りねばならなかったことへのほんの少しの悔しさが、同時に滲んでいた。


「……ずるいな、ジンは。なんでも一人でやれる顔してさ」

「お前にだけは言われたくない」


静かな言葉のやり取りの中、どこか緊張が解けていく。戦いの夜が明け、ようやく兄弟が並んで座る、その時間が訪れたのだった。

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