再偵察4
翌朝、王宮の上階にある会議室には早くも要人たちが集まっていた。その中央に肩を並べて立つのは、塵と砂を纏った二人の獣人。
「南部偵察より戻りました」
ひと気のない村の様子。何者かによって破壊されたのであろう監視塔。そして夜半に現れた獣の群れ。それを率いる一人の男の姿。
国境付近で視認した異形の者たちについての報告を追えると、フーリェンとシュアンランは指示を仰ぐように各々の主人たちへと視線を向けた。
「統率のとれた異形の群れ……か。確実に意図をもって動いているな」
「撤退の動きについては、こちらに見せつけていたようにも思えました」
「南は、フーの能力について何か知っている可能性がある?」
補足するように発言したフーリェンへとルカが問いかける。フーリェンは一度考える素振りを見せると、やがて「はい」と言葉を返した。
「能力の詳細までとは思いませんが、使者の口ぶりからも何かしらを掴んでいるように感じました」
「となれば、こちら側に南側の密偵が潜んでいる可能性があるな」
「その可能性も、否定できません」
思案するように顎に手をやるセオドアの言葉に、シュアンランも同意する。
沈黙が落ちる中、アルフォンスは静かに立ち上がると指先で卓をなぞった。
「これは宣戦布告ではない。だが、開戦の準備は始まっているとみていいだろう」
その重く沈む現実に、部屋の空気が僅かに揺れる。
「どう動く?」
「……オルカとの協議を優先し、砦の強化を進めるべきではないでしょうか?」
「いくら表面上だけの友好関係を求めてきたとて、現状その要求を飲む訳にはいかないだろう」
「この一件、オルカ側が国家をあげて関係しているのかがまだ分からんからな」
王子たちが独自の見解と今後の動きについて話を進める。
「偵察網の再構築と通報体制の見直しも必要ではないでしょうか……?」
おずおずと発現するユリウスに、セオドアは小さく笑みを浮かべた。
「異形の情報をどこまで民衆に伝える? 恐怖を煽る結果になりかねん」
「伝える必要はない」
アルフォンスが口を開く。
「これはまだ影の戦の段階だ。表に出すのは早い。まずは情報を集めよう。あちら側が動くよりも先に、我々が動く」




