1/228
序章 帰還
冷え切った夜風が、王都の石畳を撫で、一人の獣が、透き通るような白髪を揺らし、琥珀色の瞳を闇夜に淡く光らせながら、帰還する。
獣――フーリェンは隣国の辺境での偵察任務を終え、重い報告を胸に抱えて静かに城門を潜り抜けた。
「おかえり、フー」
穏やかな声が背後から響いた。振り返ると、自身の主である、第四王子ルカが立っていた。
優しい瞳が彼を見つめ、微笑みを浮かべている。
「任務はどうだった?」
ルカの問いに、フーリェンは目を伏せ、静かに答えた。
「表向きは無事に果たしました。しかし、隣国の動きには不穏なものを感じております。何かが確実に動き始めている、と、、」
二人は言葉少なに歩みを進める。静かな緊張が、夜の闇にしんと広がっていた。