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平和への音楽活動


 お披露目会が成功した僕は、自宅でツハリー皇帝閣下とラブリーヌさんの二人と向かい合っていた。


「素晴らしかったよ」


「ありがとうございます。もう少し練習を積んだらお国にお邪魔しようと思っていたのですよ」

 正装したツハリー・アース・ヴェールテ十五代皇帝閣下には近寄りがたいオーラが立ち上っていた。


「明日にでも来て、我が国でも披露して貰いたいよ」


「聖バレン王国にもお越し願いたいわ」

 煌びやかドレス姿のラブリーヌさんにもお誘いを受けた。


「ありがとうございます。音楽を通してディフラントを戦争のない世界にしたいと思っていますので、御協力をお願いします」


「戦争のない世界か、大きくでたな。やはり君は……」

 僕を真顔で見詰めるツハリーさんが呟いた。


「僕がどうかしました?」


「なに、ワシの独り言だ、気にしないでくれたまえ。この世界から戦争がなくなれば困る国もあるので難しいだろうが、貴国が平和の旗を掲げるのなら我が帝国の旗も並べようではないか」


「ありがとうございます」

 ツハリーさんが右手を差し出してきたので固い握手を交わすと、農作業で少しは力がついたと思っていたが手が潰れそうになって顔を歪めた。


「まずは、ソフト帝国にも音楽を広めたいと思っていますので、王都ならびに主要な街でハーモニカを吹く許可を頂きたいのですが?」


「分かった。許可書をしたためよう」


「ありがとうございます。それと、近隣国への紹介状を書いて頂けるとありがたいのですが」


「ジュンイチ殿の頼みだ、喜んでしたためようではないか」


「無理を言って申し訳ありません」

 人とコミュニケーションを取るのが苦手だったが、今では皇帝と話し合えるようにまでなっていた。


「聖バレン王国もジュンイチ様一行をお迎えする準備を進めておきますの、ソフト帝国の次は我が国にお越しください」


「はい、そうさせて頂きます」

 聖女であるラブリーヌさんに深々と頭を下げられたので面食らってしまった。カズラさんに同行していたときと違って、高貴な雰囲気に包まれていて近寄りがたかった。


 いつも賑やかなアマリアさん達は、神妙な面持ちで僕達の遣り取りを見ているだけで意見を言ってこなかった。


「今日は楽しませて貰ったよ。我が帝国に来てくれるのを楽しみにしているぞ」

 転送魔方陣で送って行きますと申し出たが、自分達の魔力で帰れると、カズラさんの案内だけで二人は国へ帰っていった。


「皆、お疲れ。明日からも練習するよ」


「はい」

 穏やかな表情の仲間たちが自宅に帰っていった。


「平和だなぁ」

 サスケの家族に囲まれた僕は大きな伸びをした。




 魔王が消えたことでダンジョン以外に魔物が出ることはなくなったが、人間同士の小競り合いは後をたたなかった。


 ハーモニー国はフレッド君に初代国王になって貰い同盟を結ぶ国との交渉を頼むことにして、東の大地はガーデン兄妹に魔族を纏めて復興に向けて頑張って貰うことにした。


 北の大地への移民も少しずつ増えてきて、農業も軌道に乗ってきた。


 ハーモニーと国の名前をグループ名にした三人娘は、童謡以外にも歌える楽曲が増えて、状況に応じて周囲を明るくする力をつけていった。


 ソフト帝国、聖バレン王国、フレッツ王国、ダーダー連合国、魔族国と知り合いがいる国を回って同盟を結ぶと共に音楽の楽しさを広め、自然災害に苦しんでいる地域にはドラゴン三兄弟を呼んで復旧に力を貸してまわった。


「エイアイ。ディフラントにはあと何カ国あるんだ?」


「あと二十カ国です」


「まだそんなにあるのか」

 前途多難だったが戦いに振り回されていたときを考えると、一つずつ問題を片付けていくことが楽しくて仕方がなかった。




 ♪・・・♪・・・♪。


 久し振りにセキハラ草原の丘でハーモニカを吹いた。


『主、ディフラントに来てよかったですね』


「そうだな」


『主、これからも宜しくお願いしますよ』


「それはこっちのセリフだよ」

 頭を撫でるとサスケは家族の下へ走っていった。


 ♪・・・♪・・・♪。


 [ふるさと]を奏でた。


 この世界で遣らなければならないことはまだ沢山あった。


 ♪・・・♪・・・♪。


(日本への帰還かぁ)

 悩み事も絶えなかったが、ハーモニカを吹きながら走り回るサスケの家族を見ていると、日本で孤独に悩んでいたのが嘘のように心が安らいだ。


 ♪・・・♪・・・♪。


「リーダー!」


 手を振りながら近付いてくる女性三人の姿は生き生きとしている。


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