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僕と濃いアクシデント

 僕こと上田久について話したいと思う。

 生まれは神奈川県横須賀市、京急逗子海岸駅の

 近くにある家で生まれた。

 三人兄弟の長男として生まれたけど、

 成長するにつれ弟や姉の出来が良く

 肩身が狭かった。

 何とか逗子にある高校にギリギリ入学できたが、

 ギリギリで入学した為授業だけで手一杯だった。

 大学進学を親から進められたけど、

 担任の先生からは両親が進める大学には

 浪人しないと無理だとハッキリ言われる。

 両親をがっかりさせないために、

 そして何よりこれ以上期待して欲しく無くて、

 自分から専門学校進学を決めた事にして

 三者面談で両親と喧嘩。

 何とか高校を卒業した後、

 実家を出て専門学校に入学した時に、

 家賃や光熱費に学費、

 食費以外の遊興費は一切出さないという

 約束で家を出た。

 なるべく家賃も安い所になるように、

 一緒に見て回って貰っていた。

 家から出られるなら何でも良かった。

 両親は公務員で堅物を絵に描いたような二人。

 専門学校への入学にもはいそうですか

 とは当然ならなかった。

 祖父や祖母の協力を得て渋々了承を得た。

 ただし専門学校を出て就職に失敗したら、

 親が望む職業に就くという条件付き。

 中々難題である。

 専門学校入学当初から人見知りが

 出てしまい、馴染めずに居た。

 勉強に逃げるしか無くて、

 その御蔭で成績は上々。

 ただ初めての一人暮らしで

 友人も居ない生活は、

 堅物で苦手にしていた両親ですら、

 居てくれれば良いと思うほど寂しかった。

 学校行って買い物して家帰って寝るだけの

 生活に、暫くして耐えられなくなった。

 何かバイトをしようと思い、

 学校で勉強している事のバイト以外で

 何か無いかと探していたある日の事。

 いつも買い物をしているスーパーで、

 アルバイト募集の張り紙を見つけた。

 意を決して電話をすると、

 直ぐに面接に来れるかと聞かれた。

 僕は直ぐに行きますと返事をして、

 予め用意していた履歴書肩手に

 スーパーへと出向く。

 面接を担当したのは店長で、

 痩せこけた面長の人だった。

 過酷な労働環境なのかと思ったが、

 何でも家で色々あったらしく

 体重が減っていく一方らしい。

 余談だけど今はふっくらしている。

 家での問題が片付いたとの事。

 面接はスムーズに行われ、

 明日から来てほしいと言われた。

 僕は学校後直ぐにスーパーに行き、

 慣れないバイトで四苦八苦する。

 巧く喋れず劣等感の塊であった僕に、

 パートさん達は手取り足とり

 丁寧に指導してくれた。

 生活のリズムが変わり、

 誰かと喋れる事が嬉しくて、

 週4回のアルバイトが楽しみになる。


 一年を過ぎ頃、専門学校の友達に

 ある紙を見せられた。

 ”この一年で別人になった人”

 というもので、トップに僕の名前があった。

 こんなモノ誰がやってるんだと気にはなったが、

 それは聞かないでおいた。

 友人曰く当初は壁際でコソコソしていたのに、

 いつの間にかプリント配りや資料作り、

 解らない事を聞いてきたりと

 自然と溶け込んでいたかららしい。

 バイトだとそれをやらないと仕事にならないから、

 自然とそうなったと思う。

 この時気付いた。

 パートさん達と喋れるようになった事で、

 僕は寂しさから脱却出来た。

 有り難い事だ。

 

 専門学校の窓から見る景色は、

 初めての頃から大分変った。

 今は色すら変わって見える。

 まぁ変わったのは僕の目何だろうけど。

 一日一日がとても新鮮で、

 大げさだけど人生の中で

 楽しい事も大変な事もあるけれど、

 一番生きている気がする。

「なぁなぁ、アキバ行かない?」

 先に出てきた友達の片桐君が話しかけてきた。

 おしゃれなソフトモヒカンに

 鮮やかなオフホワイトの長袖シャツ、

 ロゴ入りTシャツを中に着て黒のスラックスを

 履いた学校でも人気が高い人物だ。

 色々な人と話すようになったけど、

 片桐君とは互いの家に泊まり合うほど

 仲良くなった。

 よくつるんでいる。

「いいね。僕も見たいモノがあるんだ」

「よっしゃ決まり!何見たいんだ?」

「新作ゲーム。モンカン」

「俺も俺も。一緒に予約しようぜ」

「オッケー!」

「何々!?アキバ行くの!?」

「そうだけど」

「私達も行きたい!まだじっくり見て無いんだよね」

「俺は良いけどキューさんは?」

「キューっていうな。久だよ」

「はいはい。で、どうよ」

「僕も良いよ。何で同級生の願いを断れようか!」

「はっ!」

 僕が胸を張って某総帥のように言うと、

 皆は敬礼した。

 このノリはこの学校特有のものだろう。

 こうして片桐君と僕、クラスの女子2名と

 アキバへと出掛ける。

 山手線を乗って降り立つと、

「いやぁ良いよなぁアキバってさ」

「うんうん。東京に来た甲斐があるよね」

「上田君も片桐君も近いんじゃないの実家」

 そう女子に言われると、

 片桐君と僕は顔を見合い、

 苦い顔をして笑う。

「まぁ色々あらぁな」

「そだね」

 僕達は互いの肩を組んでアキバを歩く。

 女子達も慌てて追いついてくる。

 振り返って僕達は笑う。

 それからアキバを巡る。

 先ずは女性陣の行きたい所からと思ったんだけど、

 僕達のを先にと言う事だったので、

 ゲームをメインで扱っているショップで

 先にサクッと予約を済ませ、

 案内役を務める。

 あまりマニアックな所は避けようと思ったんだけど、

 女性陣の希望が今はアキバのメインに

 なっているものだった。

 大手ショップに入るなり、

 物色を始めた。

 僕達はそう言う方面には明るく無くて、

 ただ呆然とその光景を見ているしかなかった。

「……す、すみません……」

 立ち尽くす僕の背中に、

 誰かがぶつかった。

 まぁ店内もゲームショップよりも狭いから、

 突っ立っていたらそうなるよね。

「こ、こちらこそすみません。怪我は無いですか?」

 尻もちをついていた女性に手を伸ばす。

 黒の薄いカーディガンに白のTシャツ、

 黒のジーンズを履いている、

 ストレートで肩まである黒髪の女性。

 ……ん?

 どこかで見た事ある様な。

 女性は伏せていた目を上げて僕の顔を見ると

「キャァア!」

 と悲鳴を上げた。

「え?」

 後ずさる女性。

 そして取り囲まれる僕。

 何でこんな事に。

「美鈴先生、大丈夫ですか!?」

「美鈴先生に何したのよアンタ!?」

 美鈴先生って誰!?

 というか僕が何をしたと。

「おいアンタら、俺のダチに何するんだ」

 取り囲んでいた女性陣の間を、

 片桐君が割って入ってくる。

「何ってこっちのセリフよ!」

「そうよそうよ、美鈴先生悲鳴を上げたんだから」

「何が美鈴先生だ!」

「何ですって!?」

 あ、ダメだ。

 片桐君がヒートアップしている。

「ちょっと何ですか!?私達のクラスメイトに」

「何もしてないですよ。てか何も出来ないですよ彼」

 更に援軍に来た女子。

 何かサラッと酷い事を言われた気がする。

 喧々囂々という風景を初めて見た。

 やがて僕達は摘まみだされる。

 店員に事情を聞かれてそのまま答えたところ、

 向こうの被害者?も同じ事を言っていたので、

 そのまま退店して下さいと言われた。

 向こうも気を使ったのか、僕達は裏口から、

 あっちは正面から出される。

「ホント気分わりーよな!」

「ホントだよね。ねぇ何処かで御茶しない?」

「うんうん、気分転換に」

「そうだね。そうしよう。何か疲れがドッと出たし」

「取り合えずアキバだとアイツらとまたカチ合う可能性があるから、別のとこ行こうぜ」

「ここから少し離れた所にケーキが美味しい喫茶店があるよ」

「あ、私行きたい」

「それじゃあ行こう。皆僕の為にゴメンね」

 僕が3人に謝ると鬼のような顔をされ、

 僕が悪くないという内容の事を

 全力で3人同時に喋り倒してきた。

 そこからは記述出来ない言葉のオンパレードで、

 元々悪い人達じゃないんだけど、

 時々口が悪いのが玉に傷。

 喫茶店まで歩いていき、

 中に入って注文したケーキを食べると、

 話題はケーキの美味しさに移っていく。

 そのケーキはとても美味しかった。

 口の中で溶ける生クリームはくどく無く、

 さらりとしていて甘さも丁度良い。

 スポンジは少ししっとりとしていて、

 フルーツも瑞々しい。

 家族で高いお店に入ってケーキを

 食べた事があるんだけど、

 きっと美味しかった

 と思うけど覚えていない。

 ワイワイしながら食べるケーキの味は

 きっと忘れないだろう。


た。

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