第31話 黄昏の部屋
お待たせしました、いよいよアリスの登場です。
AG時代でそこそこ人気だった(?)のでようやく出せてよかったです。
せっちゃんと麗奈の二人は俺たちのクラスに転入した。
身長や雰囲気の違いから凸凹コンビとして一年生の話題となっていた。
そして、せっちゃんは俺に、麗奈は千歳の側に付き添っている。
流石に学園内では聖霊狩りが襲わない限り危機はほとんど無いのだが時折……。
「てめぇが蓮宮かぁ?」
「最近調子に乗っているお坊っちゃまだなぁ!」
「つぅか本当に女子みてぇだな、ぎゃははは!」
俺という存在が気に入らない一部の生徒……今回は不良にこうやって絡まれている。
クラスのみんなみたいに俺を尊敬してくれている人もいれば、この人達みたいに嫉妬する人たちもいる。
「用が無いのなら失礼します」
「おっと待ちな!」
「守護者かなんか知らねえがガキが粋がっているのも今のうちだぜ!」
「俺たちと勝負しな!」
不良はどうしてこうくだらない争いをしたがるのか分からないがどうやら少し痛い眼に合わないと気が済まないようだ。
しかしわざわざ蓮煌や霊操術、ましてやアーティファクトを使うまでも無い。
体術で軽く追い払おうとしたその時だった。
「お館様にそのようなくだらない理由で刃を向けるなど、万死に値するでござる!!」
せっちゃんの刃のような鋭い怒号が響いた瞬間、高速で動く一つの影が一瞬にて不良達を全て倒した。
「やるね、せっちゃん」
『お見事!』
俺と白蓮はせっちゃんの瞬殺攻撃に拍手を送った。
「この程度の相手……お館様の手を煩わせるまでも無いでござる」
「流石は現役忍者さん。後で手合わせをお願いしてもいいかな?」
「拙者でよければいつでも……蓮宮流の力を知りたいので」
「ああ。俺も天影の忍術を知りたいからね」
「御意。さてと、こやつらが二度とお館様に手出しが出来ないようにと……」
そう言ってせっちゃんは倒れている不良達の荷物とかを調べ始め、何かをメモしている。
「ふむふむ、こやつらは二年生でござるな。名前とクラス、そして学生寮の部屋は……」
「あの、せっちゃん?何をしているのかな?」
恐る恐る尋ねるとせっちゃんは澄ました顔で答えた。
「もう二度とお館様に関わらないようにこやつらの情報を集めるのでござる」
「えっ……?」
「忍者の仕事は諜報……このような下賎の情報、集めるのは朝飯前でござるよ」
「情報を集めてどうするの……?」
「もちろん、弱みを握って二度と悪さをしないようにするでござるよ♪」
まさかの個人情報を得て相手を脅す手段に出るとは思わなかった。
「お、おう……でもせっちゃん、ほどほどにね?」
「承知でござる」
せっちゃん……可愛い顔して何ともえげつない事をするな……。
まあ流石に暗殺などの殺人とかはしないだろうが色々注意とかしないといけないな。
家来であり護衛でもあるせっちゃんの方針とか考えなきゃなと思いながら喫茶店に向かうと扉に何かが挟まっていた。
「ん?これは……手紙?」
『誰からだろうね』
それは白い封筒に入った蝋で封をされた手紙だった。
「もしやお館様への恋文!?」
「そんなの千歳が見たら発狂しそうだな……さてと、霊煌捌式神眼。ふむ、とりあえず呪いの類はなさそうだな」
神眼を発動して手紙をじっくり見るが特に呪いが込められているものでは無さそうだ。
「呪い?何故文に呪いを?」
「前に手紙に呪いを込めて読んだ相手を自分のものにしようとした事件があったからね。特にこの学園だと色々な聖獣がいるから尚更ね」
ちょうど一年ぐらい前の当主になった後、学校で愛してやまない相手に呪いのこもった手紙を読ませて心を奪われた事件があり、霊操術で呪いを解いたことがある。
「それにしても古風な手紙だな。蝋で封をするなんてヨーロッパの方法じゃないか」
蝋には送り主の家紋や紋章などが刻まれた封蝋印が押されるが、これには大文字の『S』しか無かった。
「とりあえず開けてみるか」
喫茶店の扉を鍵で開けて中に入り、準備をする前に封蝋を解いて手紙を取り出して読むと……。
「よ、読めない……」
『うわぁ、英語がびっしり』
手紙は日本語ではなく英語で書かれていて、しかも単語が一筆で繋がっている達筆のような感じで書かれていて、只でさえ英語が苦手なのにこれでは最早読むことが困難だった。
「こ、これは拙者でも読めないでござる……」
せっちゃんはこれでも故郷の忍者の里でちゃんと勉強をしていて英語に関しては俺よりも遥かに出来るがそれでも読めなかった。
「誰だよこんな手紙をよこしたのは……えっと差出人は……」
せめて差出人だけでも判明するために一番下に書かれた名前と思われる場所を眼を見開いてしっかりと見る。
「えっと、Sala……man……der……ん?サラマンダー?」
差出人は「Salamander」……サラマンダーと書かれており、俺と白蓮は眉をひそめた。
「サラマンダーが俺に手紙……?」
『あの火の精霊、手紙を書くんだ……』
確かに白蓮の言う通りそこにも驚いているがどうしてサラマンダーが手紙を書いて喫茶店に送ったのか理解出来なかった。
何か用事でもあるのか?
でもこの手紙の内容が分からないと話にならない。
「これは千歳を待つしかないか」
帰国子女で英語ができる千歳に読んでもらうしか方法が無かった。
「ひとまず……せっちゃん、開店準備だ」
「はっ!では拙者は掃除を始めるでござる!」
『じゃあ僕も手伝う!』
せっちゃんは箒とちりとり、白蓮はキッチンダスターを手に店の掃除を始める。
「よし、じゃあ俺はケーキとお茶の用意だな」
早朝に仕込んでおいたケーキの材料を冷蔵庫から出し、お湯を沸かしてコーヒーと紅茶を淹れる準備をする。
喫茶店は午後3時半から午後4時の間に開店するようにしている為、授業が終わる午後3時の後すぐに店に来てこうして準備をしているのだ。
少し大変だけど学生生活を満喫して尚且つ楽しいので問題ない。
準備が進み、開店10分前になると千歳達が喫茶店に来た
「よーし、今日も喫茶店を頑張るぞー!」
「待ってました!ちーちゃん、これを訳してください!」
待ってましたと言わんばかりに俺は千歳に手紙を差し出した。
「え?何?どしたの?」
千歳はきょとんとして手紙を受け取るとすぐに眼を細めて読み始める。
「随分と古風な英文の手紙ね。これは……サラマンダーからの手紙?」
『あの魔女に仕えているという火の大男が?』
「とりあえず読んでみるね。『蓮姫の血とその魂を受け継ぐ者よ、今こそ我が主・アリスティーナを復活する時が来た』」
「復活……?ああ、なるほど」
伝説の魔女にして黄昏の魔法使いと異名を持つアリスティーナは五十年前の異世界大戦で活躍していたが、凶悪な呪いを受けてしまった。
その呪いを解くために眠りについており、その眠りを解く唯一の方法が霊煌紋に宿る蓮宮の起源にして最強の力……霊煌壱式破魔である。
瑪瑙達聖霊狩りに狙われていると情報があり、一度はアリスティーナが眠る部屋の前まで行ったが強固な魔法が施された扉を下手に開けずにそのままにした。
その内破魔で眠りの封印を解く事になっていたのでサラマンダーはこうして手紙で頼みに来たのか。
「今週の土曜日に頼むと書いてあるよ」
「土曜日ね、オッケー」
店内にあるカレンダーにペンで土曜日に丸を書いた。
「後、天音以外に七人の子供達も来てくれと書いてあるよ」
「七人の子供達?」
「うん。ここにいる私と雷花とれいちゃん、恭弥とせっちゃん。それから生徒会長と副会長の雨月先輩と御剣先輩」
「えっ?何で?」
俺や千歳達ならともかくなんで雨月先輩と御剣先輩、それにせっちゃんと麗奈まで?
「さあ?手紙にはちゃんとそう書いてあるし。連絡しといたら?」
「そうだな。雨月先輩の電話番号は貰ってるし」
雨月先輩は俺のケーキのファンなのでたまに生徒会室へ出前を届ける時がある。
その時に携帯電話の電話番号を交換したのだ。
「あ、そうだ。蓮宮神社にいる兄ちゃんと姉ちゃんにも連絡しておこう」
璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんもアリスティーナの存在を知っているし、ちょうど今は実家の蓮宮神社で七星剣の仕事から離れて休息を取っているしちょうど良いだろう。
「お館様にご兄弟が?」
「ああ。妹が一人で璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんは従兄姉だけど家は蓮宮神社内の同じ敷地にあるから学園に来るまで一緒に住んでいたよ」
「そうでござったか。お館様の家来として無礼の無いようにしないと!」
「あはは、いきなり忍者が俺の家来になったって聞いたら二人共驚くだろうな」
天影忍者は歴史の表舞台には出てないが忍者としての能力はとても高く、古くから天堂家の人間を守ってきた。
そんな有能な忍者が蓮宮の当主である俺の家来になったと聞いたら目を見開いて驚くに違い無い。
ちなみにまだ見せてもらってないがせっちゃんと麗奈の契約聖獣とアーティファクトは俺たちのとは異なりかなり特殊な力を持つらしい。
まだ見せない理由は忍者は力をみせびらかさないためだとか、手の内は隠すものと言っている。
まあせっちゃんとはその内手合わせするからその時を楽しみに待っている。
「さてと、そろそろ時間だ。みんな、本日のカフェロータスの開店だ!」
入り口の扉にかけてある『CLOSE』の看板を裏返して『OPEN』にし、今日もカフェロータスを開店する。
☆
そして時が流れて土曜日。
午前10時頃のカフェロータスにサラマンダーが指名した八人+二人が集まっていた。
俺と千歳、恭弥と雷花さん、せっちゃんと麗奈、雨月先輩と御剣先輩、そして璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんの十人だ。
聖獣組は俺たちの中でいつものメンバーである白蓮と銀羅、悟空とトールの四人だ。
せっちゃんと麗奈の自己紹介を終え、朝から作っていた弁当を顕現陣に入れて準備を整えると早速アリスティーナのいる図書館城の地下へ向かった。
冒険家を目指す恭弥が先導して案内をし、数十分の時間をかけて再び巨大な扉の前まで到着した。
「お館様、ここでござるか?」
「ああ。俺にしか扉を開けることが出来ないからな……蓮煌!」
顕現陣から蓮煌を飛び出して左手に持ち、右手で柄を持ち鞘から抜く。
この扉にはどんな攻撃も反射する魔法が施されており、魔法を打ち消して扉を開くには霊煌壱式しかない。
「天音、蓮宮当主としてかましてやれ!」
「頑張って!」
「うん!」
璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんの声援を受け、心を静かにして蓮煌を担ぐように構えて目を閉じる。
瑪瑙との戦いの後、破魔を一人でも使いこなせるように修行をしてきた。
今もまだ眠っている空音の力を借りた時のようにはいかないが、それでも半分近くの力を発揮する事が出来る。
全神経を霊煌紋に集中し、霊力を込めて輝かせる。
「全ての力を破壊する蓮霊の煌めき!!」
青白い霊力が蓮煌の刃に纏い、淡い光を放つと全ての魔を祓う力を宿す。
「霊煌壱式破魔!!!」
破魔の力を宿した蓮煌を高く掲げ、一気に振り下ろした。
「蓮宮流霊操術奥義、霊煌一閃!!!」
蓮煌の刃から白く輝く三日月の形をした光が扉の中心部に向かって放たれた。
三日月の刃が扉に直撃した次の瞬間、扉に施された巨大な魔法陣が浮かび上がると全体に亀裂が入り、割れたガラスのように一気に崩れ落ちた。
「「「おおっ!!!」」」
鉄壁の魔法陣が破られ、みんなは歓喜の声を上げる。
魔法陣の魔力が霧のように霧散し、静かに消えていくと突然地響きが部屋中に轟いた。
ゴォオオオオオーッ!!!
地響きの正体は巨大な扉が少しずつ開く音と振動だった。
「扉が……開く!」
開いた扉から光が漏れ出し、緊張しながらゆっくりと部屋に入る。
その部屋を見た瞬間、俺たちは目を見開いて驚いた。
とても地下室とは思えない広大でその中には数え切れないほどの無数の本が置かれていた。
テレビなどでたまに見かける海外の国立図書館を彷彿とさせるその本の多さにも驚くが、部屋の中央にある巨大な物に目を疑った。
「巨大なクリスタル……!?」
それは全長数十メートルにも及ぶ巨大なクリスタルで膨大な魔力が込められていた。
「見て!水晶の中に人が!」
千歳がクリスタルに指差してそう言うと俺はとっさに神眼を発動してクリスタルの中をよく見る。
クリスタルの中には一人の女性が目を閉じて眠っていた。
「銀髪の女性……?」
女性はとても綺麗で美女と呼ぶに相応しい顔立ちで、今まで見たこと無い綺麗な銀色の長髪をしていた。
そして、その身には色鮮やかな色彩に魔法陣が描かれたローブを着用していた。
まさか、この女性が……!?
するとその時、クリスタルの前に赤い魔法陣が現れて中から炎が吹き荒れると同時に俺たちをここに呼んだ張本人である火の精霊・サラマンダーが姿を現す。
『ようこそ……子供たちよ、黄昏の部屋へ!』
この本が無数にある部屋は黄昏の部屋と言うのか……しかしそれよりも聞きたいことがある。
「サラマンダー、そのクリスタルの中にいるのが……」
サラマンダーは静かに頷いて肯定した。
『そうだ。我が主にして世界を救った伝説の魔法使い……黄昏の魔法使い、アリスティーナ・E・トワイライトだ』
この人がアリスティーナ……俺たちは英雄と謳われる伝説の魔法使いを間近に見て言葉を失うほどの衝撃を受けるのだった。
そして、アリスティーナが俺たち蓮宮の開祖であり初代当主の蓮姫様とどんな関係なのかとても気になりのだった。
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次回アリスがついに目覚めます。
そして、新たな物語が天音たちを待ち構えます。




