第30話 学園に集いし八人
今回は何とか早めにかけましたが次回は少し長くなるかもしれません。
五年ぶりにせっちゃんと再会し、約束だった主従の誓いを簡単に行うと呆然としていた麗奈さんが俺とせっちゃんに近づく。
「な、何を言っているんですか!刹那!?私達は千歳様の護衛として仕えるのですよ!?そもそも、その方はどなたなのですか!?」
麗奈さんは慌てながら叫び、せっちゃんから俺を見つめる。
「初めまして。俺は蓮宮十三代目当主、蓮宮天音だ」
蓮煌の鞘にある蓮宮の紋章を見せながら自己紹介をすると麗奈さんは目を見開いて驚いた。
「は、蓮宮!?古くから続く守護者の一族!?しかも当主殿!?ち、千歳様!彼とはどのような関係なのですか!?」
あら、俺たち蓮宮のことを知っていたんだ。
と言うことは天影のところに記録などが残っているみたいだな。
「え?どのような関係って、天音は幼馴染で許婚だよ」
千歳は麗奈さんの質問に対してあっさりと言う。
「い、許婚!?も、申し訳ありません!そうとは知らず無礼なことを申してしまいました!」
俺が千歳の許婚だと知ると麗奈さんは顔を真っ青にしてすぐに深く頭を下げて謝罪をする。
「別にいいよ。それより千歳、彼が朝話したせっちゃん、月影刹那だよ」
「そうだったんだ。いやー、何というか世間は狭いと言うか不思議な巡り合わせだね。よし、それじゃあ……刹那君!」
「は、はい!何でござるか!?」
「取り敢えず私も天音と同じくせっちゃんと呼ばせてもらうね。一応形式としては『まだ』私が主だから最初の命令を出すね」
「ど、どのような……?」
「私の護衛の任を解きます。その代わり、私の大切な許婚の蓮宮天音に忠義を誓い、その命果てるまで尽くしなさい!」
それは千歳からせっちゃんを俺に託したという事だった。
「あっ……はい!承知したでござる!!」
「と言うわけだから、良いよね?おじいちゃん!」
「そうじゃの……後々千歳は天音君の家に嫁に行くんじゃし、何より刹那君が天音君をこれほど慕っておる。まあ良いじゃろ」
ずいぶんあっさりと重要な事を変更し、せっちゃんの主が千歳から俺となった。
「流石はおじいちゃん!話が分かる〜!よーし、それじゃあれいちゃんとせっちゃんの歓迎会をしよう!私は二人を学園の案内をするから、天音は歓迎会の料理の準備ね!」
急な要望だったがせっかく五年ぶりにせっちゃんと再会できたし、麗奈さんが千歳の護衛についた事だし歓迎会ぐらい開かないとな。
「そうだな。閉店後に恭弥と雷花さんに悟空とトールも一緒にね」
「OK♪れいちゃん、せっちゃん、行きましょう!」
「は、はい!」
『待て待て!私を置いていくな!』
千歳は麗奈さんの手を引っ張って学園長室から出て行き、銀羅が慌ててその後を追う。
すると、自分はどうしたら良いかと迷っているせっちゃんが俺に視線を向ける。
「お館様、拙者は……」
「取り敢えず千歳の後を追って。俺は料理を作ってるから」
「な、何と!お館様自ら料理を!しかも拙者と麗奈の為に!?」
「うん。そこそこ料理は出来るからね。それにせっちゃんとこうして再会できたからね」
「お館様……!」
せっちゃんはまた目に涙を浮かべている。
涙脆いのかなと思いながら俺は笑みを浮かべる。
「ま、一応楽しみにしていて。ほら、早く千歳の元へ行って」
「はっ!!」
せっちゃんはその場から瞬時に消え、多分千歳の元へ行った。
凄いな……この忍者の特技か分からない何処からともなく現れて消える瞬間移動。
これが忍者の使う術、忍術なのか?
そう思いながら部屋に残された俺は学園長に視線を向ける。
「では学園長、失礼します」
「うむ。ああ、そうじゃ。天音君、これを預かってくれないか?」
学園長は机の引き出しから学生寮の部屋の鍵を取り出して俺に渡す。
「この番号……あれ?この部屋って俺と千歳の隣ですよね?」
それは俺と千歳の隣の部屋の鍵だった。
「その部屋の鍵は刹那君と麗奈君のじゃ。天影の護衛が住む部屋は隣の方が良いと思って元々空けておいたのじゃ」
そう言えばこの部屋は空き部屋だったなと思い出しながら鍵を蓮煌と一緒に顕現陣の中にしまう。
「それじゃあ、お預かりします」
「頼むぞ。それから……喫茶店、少しずつ軌道に乗ってるようじゃの?」
「ええ、お陰様で。学園長も是非来てください。美味しいケーキとお茶を用意して待っています」
「ははは!楽しみにしておるぞ」
「はい、では失礼します。行くぞ、白蓮!って、寝てる……」
白蓮は今までの話が退屈だったのかテーブルの上で寝ていた。
寝ている白蓮を両手で優しく抱き上げ、学園長に一礼をして学園長室を後にした。
☆
side千歳
私の護衛となった麗奈さんことれいちゃんはすごく良い子だ。
でも良い子なんだけどまだ出会ったばかりだし、私の事を大切な主として見てないからいまいち踏み込めてない気がする。
れいちゃんとはこれから少しずつ時間をかけて絆を深めていこうと思う。
そして、天音が五年前に出会った謎の少年……その正体が私の護衛だった刹那君ことせっちゃん。
まさか天音とせっちゃんがこんな再会になるとは、世間が狭いというか数奇な運命と言うか不思議な縁だと思った。
「さて、そろそろ喫茶店に行こうかな?日も暮れてきたし」
『腹も減ってきたからな』
「まさか天音様が私たちの為に料理を作ってくれるとは……」
「楽しみでござる!」
「天音の料理は美味しいよ〜!ただ女のプライドをズタボロにするけどね……れいちゃんのせっちゃんは料理出来る?」
「私は和食なら作れますが、他のは……」
「拙者はおにぎりしか……」
れいちゃん凄いな、和食を作れるんだ。
私は一応アメリカにいた時にママに料理を教わったけどあまり上手くできないのよね。
そう思うと天音はやっぱり凄いと思う。
料理も出来てお菓子作りが得意ってどんだけ女子力が高いのよ……。
思わず溜息を吐きながら私たちの喫茶店であるカフェロータスに到着する。
「ここが私達で経営しているカフェロータスよ」
「おお。古き良き西洋風の建物ですね」
「美味しそうな香りがするでござる!」
「それじゃあ入りましょうか。みんな、ただいまー!」
入り口のドアを開き、ドアに取り付けたベルが店内に鳴り響くと、中にいた従業員のみんなが出迎える。
「お、主役たちのお目見えか」
「いらっしゃいませ……」
「へぇ。中々可愛い子達じゃねえか」
「がはは!ようこそと言っておくぞ!」
執事服の恭弥とメイド服の雷花、そしていつもの格好の悟空とトールの四人だった。
「ほら、二人とも挨拶」
「は、はい!千歳様の護衛となりました神影麗奈と申します」
「拙者は天音様の家来、月影刹那と申すでござる!」
「俺は浅木恭弥だ、よろしくな」
「私は鳴神雷花。よろしくね……」
「俺は恭弥の契約聖獣の孫悟空だ!」
「俺様は雷花の契約聖獣、雷神トールだ!がははははっ!!」
「さあ座って座って!今日は二人が主役なんだから!」
自己紹介もそこそこに二人をカウンター席に座らせると奥から料理を皿に乗せて持ってきた天音が出てきた。
「ようこそ、カフェロータスへ」
しかし……今の天音の姿がいけなかった。
「えっと、失礼ですがどなたでしょうか?」
「お名前をお聞きしたいでござる」
既に外は夕暮れで日が完全に落ち、月が空に浮かんでいる。
天音は女体化していて、執事姿だが胸が膨らんでいるために窮屈な胸元を開いていて少し大胆な格好になっている。
「ああ、ごめんごめん。二人にはこの姿のことを話してなかったね」
「「この姿……?」」
「信じられないかもしれないけど、その女の子は天音なのよ」
「「……はぁ!?」」
まるで息のあった姉弟のように声を揃えて驚く二人。
天音は自分の体に起きている異変について説明すると二人は酷く驚いていた。
「まさか天音様の体にそのような奇怪な事が起きているとは……」
「ううっ……おいたわしや、お館様……」
せっちゃんは天音の女体化に涙を浮かべるショックを受けるほどだった。
「はいはい、話はその辺にしてみんなグラスを持って。今日は二人の歓迎会なんだからね」
全員分のグラスを用意し、恭弥たちに買ってきてもらった市販のジュースを注いでいく。
そして、私が代表して乾杯の音頭を取る。
「それじゃあ、神影麗奈さんと月影刹那さんの歓迎会を行います!これからよろしくね、乾杯!!」
「「「乾杯!!」」」
『『『『乾杯!』』』』
「か、乾杯!」
「乾杯でござる!」
このような歓迎会みたいな場は慣れていないのか少し緊張した様子でグラスを掲げた。
早速テーブルに並べられた料理を食べるが、天音がこの短時間で作った料理は何時もながらとても美味しかった。
「う、美味い!美味いでござる、お館様!」
「それは良かった。せっちゃん、どんどん食べてね」
「どれも初めて食べる料理、しかも美味しい……天音様!お時間がある時でいいので料理を教えてください!」
「俺でよければいつでも良いよ」
「はい!ありがとうございます!」
良かった、れいちゃんも少しは天音と打ち解けているみたいで、せっちゃんはハムスターのように頬張って美味しそうに食べている。
「また楽しくなりそうね」
れいちゃんとせっちゃんの二人は来週からこの学園に転入して、れいちゃんは私の護衛、せっちゃんは天音の家来になっているので私たちと同じクラスに入る予定だ。
また新しい仲間が増える事に喜びを覚える私だった。
☆
sideサラマンダー
星桜学園の地下深くのアリスの眠る部屋で俺は目を閉じて魔法を使用していた。
その魔法は遠くの景色を見通すことができる千里眼の魔法で、俺はこの星桜学園に新たに入る二人の転入生のことを知ると、ようやくかと大きく息を吐いた。
『これで全ての役者が揃ったか……』
俺は手から八つの炎を宙に浮かせて灯すと、そこに鏡のように人の姿を映し出す。
『九尾の妖姫……天堂千歳』
一人目は無幻九尾銃を構えている千歳の姿。
『木精の旅人……浅木恭弥』
二人目は如意金箍棒を肩に担いでいる恭弥の姿。
『雷神の神姫……鳴神雷花』
三人目はライトニング・トール・ハンマーを手に持ち、その身に雷を宿している雷花の姿。
『女神の神槍……雨月雫』
四人目はユニコーン・ザ・グングニールを手にする雫の姿。
『疾風の刀神……御剣迅』
五人目は左手にイージス・オブ・ペガサスを構え、右腕が『漆黒の刀』へと変貌している迅の姿。
『銀月の狼牙……月影刹那』
六人目は傍に銀色に輝く毛皮を持つ美しい狼と共にいる刹那の姿。
『天神の仙女……神影麗奈』
七人目は三本足の巨大な蛙の背に乗っている麗奈の姿。
『そして、霊皇の神子……蓮宮天音』
最後の八人目は鳳凰剣零式を右肩に担ぎ、左手で鳳凰剣百式を持つ天音の姿。
『アリスよ、お前が予言した八人の子供達がこの学園に揃った。いよいよ目を覚ます時が来たのだな……』
五十年前、アリスは眠りにつく直前に予言を残していた。
それは蓮宮の力を受け継ぐ継承者が七人の子供達と共に眠りの封印を解く。
重なり合う数多の出会いの末、世界各地を舞台に避けられない戦いの運命に巻き込まれていく。
そして、アリスが八人の子供達を導く『先導者』として共に戦いの運命へ歩むことになる。
俺はクリスタルに触れ、目を閉じて眠っているアリスに向けて誓いを立てる。
『もう二度とお前を苦しませない。必ずお前を守る。俺の命に代えても……』
アリスが大戦で呪いを受けた時、俺は守ることが出来なかった。
俺と同様にアリスに仕えている十二の同胞達も守ることは出来ず、変な言い方だが俺だけが生き残ってしまった。
復活するために五十年もの長い間、クリスタルに眠るアリス達を守り続けて来た。
余りにも長い時間だった……孤独とも言える一人だけの時間はとても辛かったが、ようやく念願の再会の時がすぐそこまで来ている。
『頼んだぞ……蓮宮天音』
アリスの眠りを解き放つことが出来るのは破魔の巫女、蓮宮初代当主・蓮姫の力を受け継いだ十三代目当主の天音ただ一人。
俺は眠りを解き放つをその日の為、紙を手に取り、天音に向けて手紙を書く事にした。
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天音たちの異名みたいな名前を考えるのは少し悩みました。
ある意味少しネタバレな気がしますが皆さんの考察にもなるかなと思います。




