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AO 《アーティファクト・オーバードライブ》  作者: 天道
第1章 運命の召喚と契約編
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第14話 模擬戦、天音対恭弥

今回は天音と恭弥の模擬戦です。


星桜学園にはアーティファクト・バトルをするための訓練場がある。

訓練場は見渡す限りの野原で建物などが一切なく、幾らでもアーティファクトで暴れても問題がない場所だ。

一応訓練場の外にある建物や通りかかった人に被害が及ば無いよう特殊な結界が貼られている。

「それではこれより、一組と二組の合同訓練を行います!」

ジャージ姿の柊先生が並んだ俺たち生徒の前でそう宣言した。

今回は一年の一組と二組の合同訓練で、アーティファクト・バトルの訓練を行う。

アーティファクトの基本的な授業は既に終えているので、今回からは本格的な戦闘訓練が行われる。

「それではまず、誰かにアーティファクト・バトルの模擬戦をやってもらいたいと思いますが、どなたか立候補者はいますか?」

早速柊先生がそう提案してきた。

今年の一年生は例年よりも実力が高いらしく、授業もサクサクと進んでいた。

さーて、誰が立候補するのか見ものだな……。

「はいはーい!先生、俺と天音が模擬戦やりまーす!」

右を振り向くと元気良く手を振る恭弥がいた。

あれぇ……?

「恭弥君……何勝手に決めているのかなぁ……?」

「天音、模擬戦でも良いからお前と戦いたいんだよ!」

恭弥はニッと笑みを浮かべて俺の肩を叩いた。

そう言えば恭弥とは何だかんだで戦ったことはないな。

まあ良い機会だし、やってみるか。

「オッケー、良いぜ。派手に暴れようか、恭弥」

「よっしゃ!行くぜ、悟空!」

『おうよ!』

恭弥と悟空は列を出て意気揚々と戦闘準備をする。

俺も眠っている白蓮を起こして恭弥と一緒に向かう。

「あ、そうだ。天音、これはあくまでアーティファクト・バトルの模擬戦だから、お互いに『力』を使うのは無しにしようぜ」

恭弥の突然の提案に俺は顎を軽く触って考える。

「そうだな……お前の持つ力と戦うのは面倒だからな」

「いやいや、天音の霊操術の方が面倒だから」

「何言ってる。お前の『精霊の力』がよっぽど凄いじゃねえか」

恭弥には俺の受け継いだ霊煌紋とは違い、生まれつき持つ大きな力がある。

「でも力を使うとばあちゃんがうるさいからなぁ。バリバリ使ってコントロールしたいんだけど」

「恭弥のおばあちゃんはお前を心配しているんだよ」

恭弥がその力を使うには僅かながらにリスクが伴う。

恭弥の母親代わりでもあったおばあちゃんはその事を危惧しているのだ。

「……分かってるよ。ばあちゃんは俺を大切にしてくれるからな」

「分かってるなら良いさ」

蓮煌から鞘を抜き、紅の刃を太陽の光で輝かせる。

「相変わらず天音の蓮煌は綺麗だな……国宝の美術品みたいだ」

「ありがとう、それじゃあ……始めようとするか」

「おうよ!柊先生!!」

「はい!これより、アーティファクト・バトルの模擬戦を始めます!」

柊先生を審判役に俺と恭弥の模擬戦が行われる。

対峙する俺と恭弥はシールドリングを手首に巻き、起動させて体にシールドを纏わせる。

俺は頭に乗っている白蓮に話しかける。

「行くよ、白蓮!」

『うんっ!』

白蓮は小さな翼で軽く飛ぶと、体が光って数秒時間をかけて美しい鳳凰の姿となり、俺の右腕に乗る。

「さあ、行こうぜ、悟空!」

『おうよ!俺達も負けてられないからな!』

恭弥と孫悟空は気合いを入れて戦いに望んだ。

そして、俺と恭弥はそれぞれ蓮煌と金剛棒を構えて契約を執行する。

「契約執行!白蓮!!」

「契約執行!孫悟空!!」

契約執行と共に白蓮と孫悟空の体が輝き、それぞれの契約者の媒体に入り込み、契約執行が発動されて姿形が変化する。

「アーティファクト、鳳凰剣零式!!!」

「アーティファクト、如意金箍棒!!!」

そして、恭弥の金剛棒が孫悟空を象徴する武器である如意金箍棒、通称『如意棒』へと変化する。

互いの準備が完了すると、審判の柊先生が右手を上げ、勢い良く振り下ろす。

「バトル……スタート!」

アーティファクト・バトルの模擬戦が始まり、先手を切ったのは恭弥だった。

「伸びろ、如意棒!!」

如意棒を前に突き出すと、如意棒は俺に向かって一直線に伸びてきた。

如意棒は悟空の持つオリジナルと同様に伸縮自在に長さを調節できる。

しかし、そんな単調な攻撃を俺は軽々と地を蹴って横に回避する。

「ええい、まだまだぁっ!」

伸びたままの如意棒を操り、そのまま横に振るって今度は横からの攻撃に転ずる。

「それなら……よっと!」

とっさの思いつきだが、実に効果的な対策法だった。

伸びている如意棒の上に上手に乗り、そのまま平均台のように走って持ち主である恭弥の元へ行く。

「んな、アホなぁあああああっ!?」

予想外過ぎる俺の行動に恭弥はツッコミを含めた叫び声を上げた。

「伊達に小さい頃からバランス感覚が必要な舞を踊っているからな!」

蓮宮神社で神に捧げる舞、神楽舞を踊る際、片足で回ったり、倒れそうになりそうな無理な姿勢をする事があるので幼い頃からバランス感覚は養われている。

「退きやがれ!この絶世の男の娘が!!」

恭弥は如意棒を元の長さに戻して俺を強制的に如意棒から下ろした。

それにしても、今聞き捨てなら無い言葉を聞いて僅かに怒りがこみ上げてくる。

「誰が絶世の男の娘だよ!!誰が!!?」

「うるせえ!お前みたいに大和撫子の女の子みたいな男がいるわけないだろ!?」

「大和撫子言うなぁ!!このバカ恭弥!!」

「誰がバカだ!?英語が出来ないバカに言われたくねぇよ!!」

「いいんだよ俺は!現代語と古文が出来れば何も問題ないんだよ!」

「だからってテスト一割未満は酷すぎだろ!」

如意棒から降ろされた後に走っている俺に恭弥も走り出した。

互いの間合いに入った瞬間、鳳凰剣零式と如意棒が同時に振られて刃と柄が交差して火花が散った。

「うぉおおおおおっ!!!」

「おらおらおらぁあっ!!!」

俺と恭弥は白熱した戦いにお互いの相手以外の何も見えていない。

「あ、あの……蓮宮君?浅木君?」

近くにいる柊先生の声すら俺たちの耳には一切耳に届いていなかった。

鳳凰剣零式の鋭い斬撃と如意棒の打撃が俺と恭弥の前で激しくぶつかり合い、その衝撃波の余波によって二人のシールドエネルギーが少しずつ削られていく。

「天音!見せてやるぜ、俺と悟空の深まった絆の力だ!如意金箍棒、部分変化!」

『おう!行くぜ!』

恭弥は如意金箍棒を手の中で回すと、先端が鋭い刃の形となる。

オリジナルの如意棒は大きさと長さを変える力を持つが、如意棒自体の形を変える能力は無いはず……なるほど、これが恭弥と悟空が契約した事によって生まれたアーティファクトの能力か。

「切り裂け、刃龍砕破!!」

変幻自在に伸びる如意棒がまるで龍か蛇のようにくねくねと動きながら俺に襲いかかる。

あのスピードじゃ鳳凰剣零式では対応出来ないと判断し、反射的に霊操術を使おうとした。

しかし、この模擬戦で霊煌紋は使わないと誓った。

それならばと、鳳凰剣零式の切っ先を後ろに向けて脇構えを取る。

「蓮宮流剣術……」

そして、体を素早く回転させながらくねくねと動く如意棒を鳳凰剣零式で絡ませて、螺旋状に上へ切り上げた。

「水蓮天昇!!!」

水蓮天昇は剛の剣である紅蓮裂刃とは異なる、相手の攻撃を螺旋状に描く攻撃で弾く返しの剣だ。

だけど、これ以上は攻めきれない。

如意棒は俺の鳳凰剣零式とは違い、『属性』の力は宿していない代わりに、シンプルだが豊富な数の技を持っている。

変幻自在に形を変える如意棒を相手では霊煌紋が使えない今、対処するのは難しい。

ちなみに属性とは聖獣が持つ性質の特性を表している。

代表的なものは火、水、地、風で自然界に存在する元素の力で、多くの聖獣にはそれぞれ自然界の万物と共に生きている。

例えば、白蓮と銀羅はそれぞれ聖なる炎と妖魔の炎を操るので火属性を持っている。

水辺に住む聖獣なら水属性、大地の力を宿す聖獣なら地属性、風を操る聖獣なら風属性……などなど、それ以外にもたくさんの自然の属性がある。

属性には自然界の元素だけでなく、その聖獣を表す言い方もある。

悟空を例に挙げるなら、石から生まれ妖魔でありながら仏でもあるので、悟空は地属性と妖属性。

そして……最も最強の属性と言われている神属性を持っている。

さてどうするかな……幾ら鍛えているといっても鳳凰剣零式はやっぱりかなり重い。

大剣型だから重量とパワーがあるがその分スピードは無い。

如意棒もかなりの重量があるはずだが、その分は変幻自在に形を変えて攻撃しているのでスピードを補っている。

さて、どうしょうかな……。

こめかみのところを軽く指で叩くと頭の中にあの声が響く。

『天音の中にある、もう一つの霊力を鳳凰剣に流して……』

空音……?

それは昨晩に夢で見た不思議な世界で出会った謎の少女、空音の声だった。

俺の中にあるもう一つの霊力とは何のことだと思いながら心を深く静めて自分の中にある魂を感じる。

普通の人間は魂を感じることはできないが、俺たち蓮宮の人間は幼い頃から霊力を巧みに操る修行をしているので自分の魂を感じることができるのだが……。

どう言うことだ……俺の体の中に魂が二つある……?

一つは白い光を放つ魂。

これは俺ので、小さい頃に既に確認済みだ。

そしてもう一つは漆黒のような綺麗な黒い光を放つ魂……どう言うことだ?

何で俺の中にもう一つ魂が宿っているのが謎で、まさか空音が言ったもう一つの霊力ってこれの事か?

よく分からないがとりあえず空音の言う通り黒い光の魂を使う事にした。

機械の動力源を入れ替えるように白から黒の魂を体中の神経に張り巡らせて左手に霊力を灯した。

何時もなら青白い光を放つ霊力が、今回は少し不気味な赤黒い光を放っていた。

これが……俺のもう一つの霊力なのか?

「白蓮、今から俺の霊力を流し込むけど苦しかったらすぐに言えよ?」

『うん、分かった……ん?』

「どうした?」

『何だかその霊力……陰の力を感じるよ?』

「陰の力……?」

陰の力。

それは光の力を表す陽と相反する力でこの世の影を意味する力の事だ。

まさか……空音が陰の力を……?

だとしたらどうして俺の中に?

一人の人間の体に魂が複数も宿る事は無いはずだが……。

『天音!その霊力を僕に!』

白蓮はその霊力を鳳凰剣零式に流せと言う。

色々不安や謎があるが、相棒の白蓮がそう言うのならそれを信じる!

赤黒く光る陰の霊力を鳳凰剣零式に流した。

陰の霊力が鳳凰剣零式全体に広がった瞬間、大剣から日本刀の形へと姿を変えた。

「これは……!?」

それは紛れもなく空音の刀型の鳳凰剣だった。

ますます空音に対して謎が深まりながら刀型となった鳳凰剣零式を握り締める。

「おいおい、天音!いつの間に形態変形を自在に扱えるようになった!?」

「それは秘密だ!」

「だったら次はこれだ!喰らいな!如意棒、龍牙轟閃!!」

まるで龍が牙を突き立てて襲い掛かるように如意棒が高速で伸び縮みして襲いかかる。

紙一重でかわしていくが、これではすぐにやられてしまう。

今なら大剣よりも軽い刀の鳳凰剣零式を両腕の力を全開で使って振り回す。

「蓮宮流剣術!天凜蓮華!!」

次々と襲いかかる龍牙轟閃の攻撃を乱撃の斬撃で全てを弾いていく。

「うおっ!?マジかよ!?流石は天音だ!!」

「今度はこっちの番だ!!」

腰の紐に指した蓮煌の鞘を抜いて左手に持って鳳凰剣零式を納め、両足に力を込めて低い体勢を取る。

「抜刀術か!だったら俺もとっておきを見せてやるぜ!!」

恭弥は如意棒を細くして長く伸ばし、振り回してスピードを上げていく。

俺は一気に走り出し、獲物を狙う狼の如く恭弥に狙いを定めて柄に手をかけて一気に刃を解き放った。

対する恭弥は振り回した如意棒が一気に太くなり、加速と重量が合わさった凄まじい一撃となる。

「蓮宮流抜刀術!天狼白蓮!!」

「如意棒!縮地一閃!!」

鳳凰剣零式と如意棒の一閃が激突しようとしたその時だった。







「それまで!!!」






柊先生の声が響くと同時に俺と恭弥の動きが止まった。

否、止められたのだった。

全身がまるで金縛りにあったように動けなくなった。

目を凝らして下を見ると大きな手の骨みたいなもので体を握られていた。

ゆらゆらと紫色に揺らめく炎と共に巨大な人骨の妖怪が現れた。

「怖ぇえええええっ!?何だこれ!?巨大髑髏の妖怪か!?」

「あれは……餓者髑髏。埋葬されなかった死者達の骸骨や怨念が集まって生まれた妖怪……」

「マジでか!?何でそんな妖怪が!?」

「……柊先生の契約聖獣、ですよね?」

柊先生の方を見るとにっこりと笑みを浮かべて餓者髑髏に視線を向ける。

「薫ちゃん、もういいよ」

『アァ……ワカッタ』

餓者髑髏は掠れたような声を発しながらゆっくり俺と恭弥を離して柊先生の元に戻った。

「蓮宮君、浅木君、模擬戦ありがとうございました。見事な戦いでしたが、口喧嘩はやめましょうね?」

「「は、はい……」」

有無を言わせない柊先生の言葉に俺と恭弥は同時に頷くと餓者髑髏は体が小さくなって柊先生と同じくらいの大きさになると、まるで装飾のように柊先生に巻き付いた。

「そう言えば、皆さんにはまだ紹介していませんでしたね。彼は餓者髑髏の薫ちゃんです!」

『オレハ、カオルダ……カズハノアイボウダ……』

柊先生の本名は柊和葉で本当に餓者髑髏が契約聖獣なんだなと改めて実感する。

それにしてもあの穏やかで優しい柊先生の契約聖獣が餓者髑髏だとは思わなかった。

餓者髑髏は本来なら負の力を持っているはずなのにその力を感じられない。

模擬戦が終わった俺と恭弥は千歳の元に戻ると俺は右手で軽く目を隠して霊煌紋と『両眼』に霊力を集めて瞼を閉じる。

「……霊煌捌式神眼」

瞼を開いて目を見開くと、瞳に蓮の花の形をした模様と目の周りの皮膚に霊煌紋に似た青白い模様が浮かび上がる。

「ええっ!?天音、何それ!?」

「霊煌捌式の神眼。視力と視神経の力を高め、あらゆる動きを先読みすることが出来る。それに加えて……心の光と影を映せ、霊操八十番『仏眼』!!」

瞳の色が黒から緑色に変化し、餓者髑髏を見る。

霊操八十番の仏眼は相手の感情や心を色で識別することが出来る。

すると、餓者髑髏から柊先生に向けて放たれる心は……。

「桃色……愛情……?」

桃色のオーラは愛する気持ちの愛情の心だった。

柊先生も餓者髑髏と同様に愛情を向けており、二人に何かあるのかと思ったが流石にそれ以上は止めておこうと踏みとどまった。

「天音、どうしたの?」

千歳が俺の今の目を覗き込むように下から見ると、びっくりするほどの体から溢れんばかりの大きな桃色のオーラを俺に向けているので一瞬思考が停止した。

わぁお……こんなにも大きな桃色のオーラは初めてだよ。

それほどまでに千歳は俺を愛しているのか……。

俺は目を閉じて神眼を解除し、目の周りの模様が消え、いつもの黒目に戻った。

「あの餓者髑髏……柊先生の事を大切に思っているんだ。負の力を感じられないし、二人の間に強い絆が見えた」

「人は見かけによらないというけど、不思議なコンビだね」

「柊先生の前で喧嘩は止めた方がいいな……あの餓者髑髏さんに掴まれるのがオチだ……」

確かにあの餓者髑髏に掴まれて睨まれたらもう喧嘩をする気力が一瞬で消え失せてしまう。

模擬戦が終わったので、その次は実践的な訓練が行われる。

自由時間の訓練では俺は早速大剣型と刀型の鳳凰剣零式の切り替えをできるようにする。

それを終えると既に二組で最強と言われている雷花さんと手合わせをし、とても充実な訓練を受けるのだった。




柊先生の契約聖獣はがしゃどくろにしました。

インパクトのある妖怪なので柊先生とのギャップで出してみましたwww

次回、璃音と花音を出せると思います。

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