第9話 紅蓮と白蓮
今回は多分本格的な戦闘回です。
一部AGとの霊煌霊操術が異なります。
輝かせた霊煌紋で陸式の結界に続く新たな力を発揮する。
「我が身の力を高めよ!霊煌弐式強化!!」
霊煌紋から赤い光が溢れ出して身体中を覆う。
「加速……!!」
足に力を込めて走り出した瞬間、目にも留まらぬスピードで動く。
「は、速い……!?」
凄まじいスピードで動きまくり、鳴神さんを翻弄する。
そして、鳴神さんの背後に回り、鳳凰剣零式を振り上げる。
「紅蓮裂刃!!」
「っ!?雷光鉄壁!サンダー・ウォール!!」
鳴神さんは瞬時に背後に雷の壁を作り出すが、完成する前に紅蓮裂刃の豪剣を思いっきり叩き込んだ。
「ぐうっ!?」
防御が間に合わなかった鳴神さんはぶっ飛ばされ、シールドポイントが大幅に減る。
『鳴神雷花。シールドポイント、32パーセント低下。エネルギー残量、48パーセント』
「身体能力が向上した……?」
鳴神さんは起き上がり、何が起きたのか冷静に判断した。
「ご明察通り。霊煌弐式は身体能力を何倍にも強化させる。だから紅蓮裂刃もさっきより強力な一撃を出せた」
霊煌弐式は元々体が弱かった二代目当主が人以上の力を発揮させる為に作った。
それを毎日少しずつ体を鍛えている俺が使えば超人のような身体能力を発揮できる。
「凄いですね……だけど、私の雷速について来られますか?」
「雷速……?」
鳴神さんの体を纏う雷の力が強くなり、金色に輝いていく。
そして、足を軽く開いて走る態勢を取る。
「雷の如く……天を穿つ!!瞬雷動!!!」
次の瞬間、鳴神さんの姿が消えて微弱な電気が空中に漂う。
「……そこか!!」
一瞬で動いた鳴神さんの気配を察知し、振り下ろされたトールハンマーを鳳凰剣零式の剣脊で盾代わりとして防ぐ。
「これを防ぎますか……?」
「なるほど、雷と同化して雷の速さで動くのか……」
雷神の血を継いでいる鳴神さんだから出来る技術……雷と同化して凄まじいスピードで動けるのは鳴神一族の人間だけだな。
「だけど二代目の……霊煌弐式の強化は負けない!」
「スピード勝負……ですね!」
霊煌弐式の強化で格段に向上した身体能力で全速力で走り、雷の速さで動く瞬雷動で雷と同化しながら飛ぶように動く。
『うぉおおおおお!?何だこれは!?目にも留まらぬ超速スピードで戦っております!』
『私も目で追うのがやっとです……迅、どうですか?』
『そうだな……片や超人の如き身体能力で、片や雷の如き雷速の動作……これは普通なら対応することは困難だな』
強化と瞬雷動のスピード勝負でフィールドを駆け抜け、交差する度に鳳凰剣零式とトールハンマーが激突し、炎と雷が混じり合った衝撃波が次々と発生する。
スピード勝負は面白いけど、このままではジリ貧だと判断した俺は次の霊煌霊操術を使う。
「来たれ!戦場に煌めく無限の剣達!霊煌伍式刀剣!!」
俺の周囲に様々な種類の刀や剣が霊力によって生み出されていく。
その数は全部で三十振り。
三十の刀剣を霊力で操り、鳳凰剣零式とリンクさせて同じ動きに合わせるようにする。
「悪しき力を断つ剣神の閃き!!霊煌肆式斬撃!!!」
鳳凰剣零式と三十の刀剣の刀身に霊力が纏われる。
霊煌肆式は霊力を刀身に纏わせて放つことで巨大な岩すら簡単に斬り裂ける強力な斬撃を放つことが出来る。
それを俺自身の剣技と共に一斉に霊力の斬撃を放つ!
「蓮宮流神霊術!!戦嵐蓮華!!!」
乱れ斬るように振るった鳳凰剣零式とリンクした三十の刀剣が同時に動き、無数の斬撃が吹き荒ぶ嵐のように放たれる。
「雷霆……招来!」
鳴神さんは再び落雷を落としてその身に浴び、雷のエネルギーをチャージする。
そして、膨大な雷のエネルギーを解放し、陸上のクラウチングスタートの体勢を取った。
「雷光激突……サンダー・ストライク!!」
勢いよく地を蹴って走り、雷と同化してそのまま斬撃の嵐に向かって飛んできた。
『鳴神雷花。シールドポイント、23パーセント低下。エネルギー残量、25パーセント』
そして、シールドリングのシールドポイントを犠牲にしながら斬撃の嵐を潜り抜けて特攻してきた。
まさかそんな方法で戦嵐蓮華を攻略するとは思わず、再び強化でスピード勝負に持ち込もうとしたその時、鳴神さんの周囲に大量の雷の槍が出現した。
「轟雷天槍……ライトニング・スピア!」
鳴神さんの特攻と共に無数の雷の槍が一斉に放たれる。
これだと霊煌弐式の強化で逃げ切れないし、霊煌陸式の結界で防ぎきれるか分からない……だけど、このまま黙ってやられるわけにはいかない。
「避けられないなら……」
新たな霊煌紋が輝き、背中に小さな熱を帯びる。
「天へ舞い上がれ、自由の翼!」
そして、軽くジャンプをした次の瞬間、俺の体はふわりと浮いて一気に空高く舞い上がった。
「なっ……!?」
鳴神さんは俺の姿を見失うと緊急停止をし、俺を狙った雷の槍はぶつかり合い、形を保てなくなって雷として空中に分散した。
分散した雷を体に取り込みながら鳴神さんは上を見上げる。
「つ、翼……!?」
鳴神さんが驚いている理由は俺の背中に生えた純白の白い翼だった。
「霊煌漆式天翔!!!」
これは七代目当主が生み出した空を自由に飛ぶ為の霊操術で、背中に天使のような白い翼を生えさせて鳥のように自由自在に飛ぶことが出来るのだ。
『今度は翼が生えて飛んだ!?全く、今年の一年生には驚かされます!』
『天使のような翼なんて素敵ですね〜』
『もはや何でもありな気がしてきた……』
確かに……霊煌霊操術はそれぞれの当主がその当時に必要かつ欲しいと思った霊操術を作ったからな。
その霊操術の効力は今は失われている古の魔法を凌ぐとも言われている。
さて……見た感じ、鳴神さんも力を使い続けて息が切れてきているし、そろそろ決着をつけるか。
「白蓮、あれをやるぞ!」
『おっ、あれだね!』
「ああ!」
ありったけの霊力を鳳凰剣零式に込め、大量の炎を生み出してそれを一つに纏め上げていく。
「蓮宮流神霊術……鳳凰緋翔閃!!!」
炎が俺と白蓮の意思で動き、巨大な鳳凰の形を作り出していく。
そして、炎の鳳凰が自ら意思を持つように口を開けて吠え、フィールドにいる鳴神さんに向けて急降下して突撃する。
「はぁ、はぁ……轟雷天罰……!!」
鳴神さんは息を切らしながらトールハンマーを上空の雷雲の中へ思いっきり投げ飛ばした。
すると、トールハンマーから雷のエネルギーが雷雲の中を駆け巡り、更なる雷を次々と生み出していく。
そして、雷雲から瞬時に鳴神さんの手の中に戻ってきたトールハンマーを雷雲に向けて掲げた。
「神の裁きをここに……ライトニング・ジャッジメント!!!」
すると次の瞬間、今までとは比べ物にならないほどの大量の雷が次々と降り注いできた。
「なっ!?これは天災レベルの攻撃だな……うわっ!?」
避けたつもりだったが、シールドと天翔の左翼に雷が当たり、一気にバランスを崩す。
『蓮宮天音。シールドポイント、37パーセント低下。エネルギー残量、47パーセント』
「翼が!?ちっ!?」
天災に等しい降り注がれる落雷に、このままではやられるのは必至。
天翔の翼を消し、地面に降りて頭の上に結界を展開してとりあえず雷を防ぐ。
「さて……どうするかね」
この状況を打破することのできる蓮宮初代当主が作った最強の霊煌霊操術……霊煌壱式を使えば、この勝負は『確実』に勝てる。
でも霊煌壱式は蓮宮当主のとっておきの秘技……そう簡単に出していいものじゃない。
技のバリエーションはもちろんのこと、北欧神話最強の神の名は伊達じゃないか……そう簡単に突破は出来ないな。
『うふふ……天音。少しだけ、力を貸してあげるよ』
突如、頭の中に聞いた事のない女の子の声が響いた。
「え?」
次の瞬間、鳳凰剣零式から黒い光が放たれ、大剣の形が変化していく。
「な、何!?」
目を見開いて驚くと、鳳凰剣零式は大剣から俺が一番手慣れている武器の形に変化した。
「大剣が刀に……!?」
鳳凰剣零式は契約媒体の蓮煌とほとんど変わらない大きさと形の日本刀になっていた。
『鳳凰の刀を鞘に収めてみて。今なら……天音の得意技を使えるよ』
その声は俺を名前で呼んで、しかも俺の『得意技』の事を知っている……何者なんだ?
『迷っている暇は無いんじゃないかな?早く決着をつけてとっとと優勝して、愛しの幼馴染みと恋人になっちゃいなさい』
ちょっと待て!?何でその事を知っている!?
控え室の時のそれを知っているのは俺と千歳だけだぞ!?
『そんなのどうでもいいから早くやってよ。ほら、雷神の女の子も次の一手の準備をしているわよ?』
謎の声の言う通り、鳴神さんはトールハンマーを構えて次の技を放つ準備をした。
確かにぐずぐずしている暇はないな、今はやるしかない!
「白蓮!俺の得意技を使う、行くぞ!」
『分かった!』
腰にずっと差してあった蓮煌の鞘を抜き、刀となった鳳凰剣零式の刀身に霊力を纏わせながらゆっくり鞘に収めていく。
足を軽く開き、左手で鞘を持って鯉口を切り、右手を柄の近くに持っていく。
「蓮宮流抜刀術……」
刀身に纏わせた霊煌肆式の斬撃に白蓮が宿る鳳凰剣零式なら、かなり距離が離れていても今なら鳴神さんに届く!
霊煌弐式強化の全ての力を右腕に込め、鞘に収められた鳳凰剣零式を一気に引き抜いた。
引き抜いて解き放たれた刀身から白色に輝く刃……白刃が現れて空を切り裂く。
「静凛白蓮」
白刃は目の瞬きよりも早いスピードで飛び、鳴神さんのシールドを一瞬で斬る。
「え……?」
『鳴神雷花。シールドポイント、オーバーブレイク。エネルギー残量、0パーセント。シールド解除……シールドリング、シャットダウンします……』
鳴神さんのシールドリングから音声が響き渡り、刻まれた文字の光が消えた。
『しょ、勝者!蓮宮天音さんです!!目にも留まらぬ瞬殺の抜刀術で鳴神さんを倒しました!!』
『なるほど、蓮宮さんのアーティファクトは形状変化型のようですね』
『大剣と刀か……しかしあの抜刀術は凄まじい威力だな』
俺の勝利が決まり、実況席の実況と共に会場が歓声に包まれる。
トールハンマーから契約を解いて鳴神さんの背後に現れたトールは口をあんぐりと開けた。
「嘘……見えなかった……」
『ま、負けたのか……?』
鳴神さんとトールは目を見開いて驚き、俺も白蓮の契約を解除した。
「すいません……抜刀術は俺が一番得意とする剣術なんです」
蓮煌を鞘に収めて息を大きく吐いて腰の紐に挿す。
鳴神さんはピコピコハンマーを仕舞うと、笑みを浮かべて手を差し伸べた。
「蓮宮さん……ありがとうございました。あなたと戦えて光栄です……」
「こちらこそ、ありがとうございました。鳴神さん」
俺はその小さな手を取り、握手を交わした。
そして、手を離してそれぞれの入場口に戻ると千歳が俺に向けて大きく手を振っていた。
「天音ー!!!最高ー!!!かっこよかったよー!!!」
「ああ……」
まずは一回戦を勝ち抜いた。
次は準決勝……そして最後は決勝戦。
このクラス代表戦、今なら何とかなるだろうと思いながら控え室に戻った。
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クラス代表戦はこれで終わりとなります。
まだまだありますが、天音が優勝したことになります。
次回は天音が部活動をどうするか悩む話です。




