第九話反動的『ブラッドハウンド』討伐における革命的実践
人民大衆の絶え間なき支持に感謝する。我々の革命的闘争は終わらない。
佐藤太郎同志は、草原に構築された人民の野営地でティリー♀同志といた。
佐藤太郎同志
「悪いが、我が心は反動的マンティコアを打倒する闘志で満ちている。今は誰かを愛するようなブルジョワ的感傷に浸る余裕などねぇんだ。」
暗闇の中、月明かりに照らされたタロー同志の真剣なる革命的横顔に、ティリー♀同志は息を呑む。
ティリー♀同志
(何という真っ直ぐな瞳……平素は蒙昧なるアホ面を装っておられたが、今こそ真のプロレタリア戦士の貌をしていますわ……!)
ティリー♀同志は抑えきれない革命的衝動に駆られ、更にその無産階級的裸の胸へと顔を近づけようとした。
――その瞬間であった。
——ピピピピピピピピ!!
大気がビリビリと震えるような甲高い鳴き声と、地響きを伴う重い獣の足音が天幕の外から響き渡った。一切の反動派は暗闇に乗じて人民を害しようと企むものである。
ディセクター♂同志
「決起せよ! 夜襲である!」
隣の天幕から、ディセクター♂同志の鋭い怒声が夜の静寂を切り裂き、人民に警鐘を鳴らす。
ジョイス♂同志
「うわぁっ!? なになに!? 帝国主義的マンティコアの走狗、『ブラッドハウンド』の群れじゃんかッ!」
デューク♂同志
「くそっ、俺がタロー同志の頭部を総括(物理的打撃)しすぎたために、我が党の索敵能力が低下していたのか……!? すまないタロー同志、全ては俺の誤謬だ!」
(※デューク♂同志は未だ歴史的真実を誤認している)
ティリー♀同志
「ひっ……!」
視力が低く、暗闇で客観的状況が掴めないティリー♀同志は恐怖で身をすくめる。その時、凶悪な鋭い爪が天幕の布を無残に引き裂き、禍々しい走狗の一匹が丸腰のティリー♀同志へと飛びかかった。
ティリー♀同志
「きゃあああああっ!」
死を覚悟し、彼女が強く目を閉じたその時。
——ドゴォォォォォン!!
鈍い破裂音と共に、獣の巨体が天幕の外へと勢いよく吹き飛ばされた。ティリー♀同志が恐る恐る目を開けると、そこには一切の衣服(ブルジョワ的虚飾)を放棄し、鍛え抜かれた鋼の肉体を盾にしてティリー♀同志を庇護する全裸の佐藤太郎同志が仁王立ちしていた。
佐藤太郎同志
「俺の同志に……これ以上指一本触れてみろ。俺の内に蓄積された性エネルギー(という名のプロレタリアートの闘気)、その全てを貴様ら反動派にぶちまけるぞ!」
その声は低く、しかし確固たる階級闘争の殺気を帯びていた。
ティリー♀同志
「タロー同志……!」
(全裸だけど……一糸纏わぬ無産階級の姿なのに……極めて革命的にカッコいいですわ……!)
タロー同志の放つ圧倒的な指導力と謎のエネルギーに気圧され、血に飢えていたはずのブラッドハウンドたちがジリジリと後ずさる。いかなるブラッドハウンドも、武装せる人民の前では張子の虎に過ぎないのだ。
佐藤太郎同志
「デューク♂同志! 自己批判には及ばない! 俺の愚かさ(アホ)は君の非ではなく、生まれつき(歴史的必然)だ! ジョイス♂同志、右翼の群れを殲滅せよ! ディセクター♂先輩同志、火力支援を要請する!」
ディセクター♂同志
「ちっ、素っ裸で立派に指導権を握りやがって……! 前進せよ、同志たち!」
タロー同志の言葉で革命的熱情を取り戻した同志たちが、一斉に武装し、走狗の群れへと立ち向かう。
佐藤太郎同志は背後にいるティリー♀同志の方を振り返り、不敵にニッと笑った。
佐藤太郎同志
「ティリー♀同志。お前は俺の背後に隠れてな。人民の盾として、俺が必ず守ってやるからよ」
ティリー♀同志は顔を真っ赤にして、コクコクと頷く。
(ああ……もうダメ。私、完全にこの偉大なる指導者の思想に教化されましたわ……暗殺という反動的陰謀など、もはやどうでもいい!)
佐藤太郎同志は全裸のまま、力強く大地を蹴った。
佐藤太郎同志
「前進せよォォォ!! マンティコアを打倒する階級闘争の前哨戦だ!!」
月夜の荒野に、佐藤太郎同志の勇ましいプロレタリア的雄叫びが響き渡る。個人的な初夜の交わりこそ歴史の彼方へとお預けとなったが、革命戦士・佐藤太郎の熱き闘いと、ティリー♀同志の真なる革命的愛情は、今まさに燃え上がったばかりである!




