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ニート撲滅戦士  作者: 勇氣
第三章女神編

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第五十話 経済圏(モネタリー・システム)の防衛と熱血ファイアウォール

 無敵バグ(ゼロデイ脆弱性)の発見という鮮烈なデビューを果たした、身長170cmほどの健康的な褐色のユーザーはチュートリアル領域『エドゥブバ』を卒業した。その「新人ニュービー」は、ウルクの市街メインネットへ降り立つや否や、恐るべき速度で同じ思想を持つアウトローたちをネットワーク化し始めていた。


魔法使いマーリン

 「太郎よ……あの褐色の新人じゃが、路地裏のインスタンスに他のユーザーを集めて、何やら怪しげなコミュニティを作っておるぞ。自らを『♰闇男♰』と名乗っておるようじゃが。」


 ジッグラトの最上階に佐藤太郎は透過ディスプレイに映し出されたトラフィックの異常な偏りを眺め、面白そうに顎を撫でた。


佐藤太郎

 「やはり、システムに穴があると知ったハッカー(開拓者)たちが次に狙うのは、いつの時代も決まっています。この世界の根幹たる『貨幣システム(モネタリー・システム)』のハッキングですよ。」


魔法使いマーリン

 「貨幣システムじゃと!? つまり、ウルクの基軸通貨であるシェケル・トークンを盗み出そうというのか!」


佐藤太郎

 「彼らは『フラッシュローン(無担保の瞬間借入)攻撃』を企てています。一瞬だけ莫大な魔力リソースを借り入れ、市場の価格差を利用してシステムからシェケルを不正に搾取する気でしょう。彼らの通信ログからは、外部のレガシーな中央集権サーバー……『神聖ヨーロッパ帝国ホーリー・ヨーロッパ』からの資金援助パケットの痕跡すら見えます。あの中世的な旧体制の連中、ウルクのオープンソース経済が憎くてたまらないらしい。」


魔法使いマーリン

 「笑い事ではないぞ太郎! 経済圏が破壊されれば、ウルクはハイパーインフレを起こして崩壊してしまう! 早く中央銀行プールのセキュリティを固めねば!」


佐藤太郎

 「ご心配なく。彼らの標的となる国庫のディレクトリは、すでに古代の迷宮へと隔離マイグレーション済みです。ミノア文明のロジックを応用した仮想空間――『クノッソス宮殿』へね。」


 佐藤太郎がコンソールを叩くと、モニターに複雑怪奇な立方体の迷宮キューブ・エスケープがレンダリングされた。それは単なる物理的な壁ではなく、空間そのものが矛盾パラドックスを孕んだ「知識証明」の暗号アルゴリズムで構成されている。


魔法使いマーリン

 「なんと複雑な……。だが、どれほど難解な迷宮を作ろうと、♰闇男♰が『自動探索プログラム(ボットネット)』を大量に放てば、いつかは突破されてしまうのではないか?」


佐藤太郎

 「ええ、機械的な総当たり攻撃ブルートフォースを防ぐには、数学的な暗号だけでは不十分です。だからこそ、クノッソスの入り口には『人間マニュアルにしか突破できない』特殊なファイアウォール(WAF)をデプロイしました……紹介しましょう。異常トラフィック検知と、究極の情熱パッション判定を司る自律型防衛プログラムです。」


ズガァァァァァン!!


 佐藤太郎がエンターキーをターンッ!と叩いた瞬間、ディスプレイの向こう側――クノッソス宮殿の入り口に、灼熱の炎を纏った一人の大柄な男のホログラムが顕現した。男は太陽のように熱苦しい笑顔を浮かべ、迷宮のハッキングを試みようとしていた♰闇男♰に向かって、全力で炎の剣を振り下ろした。


熱血防衛プログラム

 『どうしたお前らッ! パケットが冷え切ってるぞッ! もっと熱くなれよッ! そんな自動化されたスクリプト(手抜き)じゃ、このクノッソスの壁は越えられないぞッ! 諦めんなッ! 自分の指でタイピングしろぉぉぉっ!』


魔法使いマーリン

 「ヒィィッ!? な、なんじゃこの暑苦しい男は!? 見ているだけでこちらのCPU温度が跳ね上がりそうじゃ!」


佐藤太郎

 「彼こそが、最高峰のヒューリスティック検知AIです。彼は入力されるコマンドの『エントロピー(不規則性)』と『タイピングの熱量(情熱)』を解析します。ボットによる冷徹で機械的なDDoS攻撃を『熱意が足りない!』と全弾リジェクトし、逆に、人間が必死に知恵を絞って泥臭く入力したコマンドだけを『お前、今日一番熱いぞ!』と称賛して通す仕組みです。」


魔法使いマーリン

 「つ、つまり……この迷宮をハッキングするには……」


佐藤太郎

 「自動化ツール(チート)は一切通用しない。♰闇男♰は、自らの脳をフル回転させ、Aiが認めるほどの『熱意』を持って、手作業でクノッソスのパズルを解き続けなければならないんです。」


 モニターの中では、褐色のニュービー率いる♰闇男♰が、飛んでくるエラーパケット(熱血指導)に泣き叫びながら、必死に手動で暗号を解読するという、地道極まりない「健全な知的労働」を強制されていた。もはやそれはサイバー攻撃ではなく、ただの過酷な部活動である。


佐藤太郎

 「チートで楽をして稼ごうとするアウトローたちに、最も効くカウンターは『圧倒的な情熱と努力の強要』です……さあ、神聖ヨーロッパ帝国に唆された♰闇男♰よ。俺の経済圏モネタリー・システムを崩したければ、せいぜい真面目に、熱く、汗水垂らしてコードを書くんだな。」


 佐藤太郎はコーヒーを啜りながら、自らが構築した盤石にして少し狂った防衛システムに、満足げな悪役の笑み(ヴィランズ・スマイル)を浮かべるのだった。

 基軸通貨シェケル・トークンを狙う『♰闇男♰』と、背後で見え隠れする旧体制『神聖ヨーロッパ帝国』に佐藤太郎は、クノッソスの迷宮と熱血ファイアウォールを実装し、サイバー攻撃を「情熱的な手作業」へと強制変換してしまいました。経済圏の防衛すらも、ユーザーの健全な成長(部活動)に繋げてしまう、完璧なシステム管理が光ります。

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