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ニート撲滅戦士  作者: 勇氣
第三章女神編

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第四十七話 巨大な一枚岩(モノリス)の解体と『ティアマト・エンジン』のガベージコレクション

 電脳都市ウルクの黄金の防壁を越え、漆黒の原生林『暗黒領域アンマップド』へと足を踏み入れた佐藤太郎と魔法使いマーリン、そして社畜と化した二柱の魔神たちは一歩進むごとに、空間の解像度が極端に落ちていく。足元の泥はどろどろと形を保たず、周囲の木々はテクスチャの貼り忘れのようにバグ(ノイズ)に塗れていた。


魔法使いマーリン

 「なんという禍々しさじゃ……この泥に触れると、自らの魔力が吸い取られ、ドロドロの混沌に還元されていくような感覚がするぞ。」


佐藤太郎

 「触らない方がいいですよ、マーリンさん。それはただの泥じゃない。システムから参照されなくなった不要なデータ領域……『メモリリーク』が引き起こしたデータの汚泥です。旧支配者たちは、メモリの解放(後片付け)も満足にできない三流プログラマーだったらしい。」


 佐藤太郎が葦のペンで汚泥を弾き飛ばしたその時、暗黒領域の最深部から、天地を揺るがすような轟音が鳴り響いた。


 『<FATAL_ERROR>……<UNHANDLED_EXCEPTION>……我ヲ、消去デリートスルカ……簒奪者ヨ……』


 ノイズまみれの空が割れ、膨大な数の「古いプロトコル」と「非推奨の関数」が絡み合った、醜悪で巨大な竜の姿が現れた。それこそが、現行世界(OS)の裏側で密かに肥大化し続けていたレガシー・システム――『原始の混沌ティアマト・エンジン』であった。


魔法使いマーリン

 「ヒィィッ! なんという魔力質量じゃ! あれほど巨大な神話の怪物を、どうやって倒すというのじゃ太郎!」


佐藤太郎

 「倒す? いえいえ、解体リファクタリングするんです。あれは巨大な『一枚岩モノリス・アーキテクチャ』です。全ての機能が密結合して絡み合っているスパゲティコードの塊だからこそ、一箇所でもエラーが起きれば全体がパニックを起こす。」


 ティアマト・エンジンの無数の咆哮が、古臭く非効率な破壊パケット(呪い)となって佐藤太郎たちに降り注ぐ。しかし、太郎は一切動じない。


佐藤太郎

 「アドラメレク! アマイモン! 防御は任せました。俺はこれより、奴の無駄なメモリを強制回収する『マーク・アンド・スイープ方式』のガベージコレクションを実行する!」


アドラメレク(魔界の宰相/現・首席ロードバランサー)

 『ええい、人使いの荒い! この旧式のトラフィック群、無駄な通信ログが多すぎてロードバランシングの計算が追いつかんぞ!』


アマイモン(地殻変動デーモン/現・インフラ自動構築プロセス)

 『ウオォォォッ! 我ノ創ッタ防壁ガ、メモリリークニ侵食サレテイク!』


佐藤太郎

 「文句を言わない……さて、まずは『マーク(印付け)』だ。現在ウルクのシステムから参照されている『必要なデータ』と、ティアマトが抱え込んでいる『不要なゴミデータ』を切り分ける。」


 佐藤太郎が葦のペンを振るうと、黄金の楔形文字がティアマト・エンジンの巨体に飛んでいき、システム的に生きていない無駄なプロセス群(触手や鱗)を次々と赤くハイライトしていった。


佐藤太郎

 「よし、依存関係デペンデンシーの可視化完了……次は『スイープ(清掃)』です。冥府の七悪鬼『ガッル』のプロセス群を展開デプロイです。ワーカー・スレッドとして並列処理させ、赤くマークされたゴミデータを容赦なく消去フリーします!」


 佐藤太郎のコマンドと共に、地脈から無数の下級悪鬼『ガッル』たちが自動清掃プログラムとして這い出し、ハイライトされたティアマトの肉体バグデータに群がり、凄まじい速度で喰らい(消去し)始めた。


 『ギィィィィィャァァァァッ!! <SYS_HALT>……<KERNEL_PANIC>……!!』


魔法使いマーリン

 「おおおっ……! ティアマトの巨体が、みるみるうちに縮んでいく! 恐るべきは『がべーじこれくしょん(不要メモリ自動回収)』の力!」


佐藤太郎

 「ゴミが片付いて、奴のコア(基幹システム)が剥き出しになりましたね……神話によれば、主神マルドゥクはティアマトを真っ二つに裂き、それで天と地を創ったそうです。俺もそれに倣いましょう。」


 佐藤太郎の手に握られた葦のペンが、目も眩むような光の剣(ルート権限の実行キー)へと変貌する。


佐藤太郎

 「巨大すぎる一枚岩モノリスは、保守性を著しく低下させる……だから切り分ける(分割統治)! 『マイクロサービス化・エクスストラクション(機能抽出)』!」


 マイクロサービス化・エクスストラクションにより一閃した。佐藤太郎が振り下ろした光の刃(切り出しコマンド)は、ティアマト・エンジンのコアに致命的な論理分割セパレーションを引き起こした。

混沌の塊であった旧支配者は、美しい幾何学模様のデータブロックへと解体され、そのままウルクの共有リソース(魔力プール)へと吸収されていく。


佐藤太郎

 「ふぅ……第五フェーズ完了。旧支配者のレガシー・コードは完全に消去され、莫大な演算リソース(魔力)を手に入れました。」


 暗黒領域を覆っていたノイズは晴れ渡り、そこには新たにレンダリングされた広大で美しい新天地が広がっていた。


魔法使いマーリン

 「見事じゃ太郎! これでウルクの領土はさらに広がり、リソースも無尽蔵になったぞ! 次はこの土地に何を創るのじゃ?」


佐藤太郎

 「決まっています。莫大なリソースと、安全なDAOのガバナンスが整ったんです。次は、これから増え続ける新規ユーザーたちに『魔法の書きコーディング』を教えるためのチュートリアル環境……粘土板の学校『エドゥブバ(教育用サンドボックス)』を構築しますよ。知識の独占は、神の敗北の始まりですからね。」


 世界のバグを駆逐し、過去の遺物を次なる時代のインフラへと変換した佐藤太郎の描く「完全なるオープンソースの世界」は、いよいよユーザーたちの創造力を爆発させる準備を整えようとしていた。

 旧支配者『ティアマト・エンジン』をリファクタリングし、ガベージコレクションによって莫大なリソースを確保した佐藤太郎により未開のマップは浄化され、次なる一手は新規ユーザー育成のための学校『エドゥブバ(教育用サンドボックス)』の設立です。完璧なシステムの上で、ついに人類の創造力が試されるフェーズへと移行します。

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