VS玉鋼の魔将 turn5-part②
サミダレとローズがレッドポーションを一気に飲み干す。これで二人はほぼ全回復だ。スターフレアギドラは健在。それにしても……。
スキル名、柴電水平斬・闇雷。
スキルレベル、???。
超広範囲、全方位に駆け抜ける斬撃。
チートか?何だよそりゃあ。
lv .???って何だ。測定不能ってか。
文句言ってても仕方ねぇ、さあローズよ。
赤ポは飲んだな。秘術をよこせ……!
「ぷは……かーっ!キタキタキタぜ……生き返るねぇ。ほぉら、行くぜ旦那ァ」
リィィィィィィン……
ダグの足元に、鈴の音と共に巨大な魔法陣が現れる。緑色の光が優しく溢れる。
「今です旦那ァ!例のとっておきを!」
「ああ」
杖を小気味良く、指先で弄ぶ。
クルクルクルクル。ピョイ。
ぼふん
ローズは猫になった。
ぼふん
サミダレは猫になった。
ぼふん
しかしルインは猫だった。でも多分、効果時間が延長された。少しだが魔力を持っていかれた感覚があった。
ぼふん
ダグは猫になった。
カラン。猫の杖が地面に落ちる。
猫の杖はわなわなと震え、直立して床をガリガリ引っ掻いたかと思うと、窓ガラスをバリンと割って外へとすっ飛んでいった。居なくなるってこれかよ。家出ダイナミック過ぎだろ。
全員猫だ。
「にゃーーー!(全員散れー!)」
ダグだった三毛猫だ。三毛猫の雄だ。
「ぶにゃうーー!(合点だァ!)」
ローズだったデブネコだ。色はグレーである。
所々に少しだけ黒のぶちがある。
「……にゃあ。(ダグ。分かってる)」
ルインだった黒猫だ。小柄だが、引き締まったスレンダーなボデー。どこから見ても美人ですありがとう。
「にゃう、にゃう!(サミダレ、行けます!)」
サミダレだった茶色のトラ猫。小柄で可愛い。完全に美少女、だが男である。性別サミダレは猫化しても健在。
ダグの中の前世さんはげんなりしていた。
え、剣と魔法の王道ファンタジーだったよな?
全員猫で魔王城に挑むのは王道なの?と何度も繰り返していたそうだ。
「ヴアァーーーごろごろごろごろ……(前世の俺とやら、少し黙って傍観だけしていろ。凄まじい回避性能だが、万が一にも回避し損ねたら死ぬんだぞ。この姿で。それは許されん。色々な意味で……)」
三毛猫ダグは斬撃を軽やかに回避している。
スターフレアギドラは飛んでくる斬撃を殴りつけて相殺し、これを受ける。回避出来るサイズではないので仕方ない。
ルインもサミダレも素早く回避している。
ローズもあのデブネコ姿で良くかわす。
デブネコのアクロバティックショーだぜ。
真剣な場面じゃなかったら爆笑必至だよ。
だが、今は命がけの局面だからな。
笑うまい。素のVitで駄目なら猫になってAgiとかDexとか上げて見ようぜ、って傍観者君が行ってたのさ。ダグにはVitとかの言葉は良く分からなかったが、耐久力がなくて受けれないなら回避特化にしようって話だったんだ。斬新な発想、斬新な作戦だった。
そして、その作戦は見事に刺さっている。
誰も被弾していない。余裕すら見えるではないか!
「(これは中々強力なアイテムだ。またタイムリープがあるなら、次からこの〈猫の杖〉は確実に取るようにしよう)」
「……うーーー。にゃッ」
黒猫がスキルを発動する。ルインだ。
体は小さな猫になっても、金色の拳の巨大さは未だ健在。斬擊の波動を軽やかに回避しつつ、拳を操る。
ドッガァァ!
「HyuVoooopuuuuuuuu…………ppppppppp…………!!」
クリティカルヒットといった所だろう。素晴らしく気持ちの良い音がした。甲高い声、悔しげな唸り声が聞こえる。体制を崩されたギガントナイト伯爵は、構え直してルインを見据えた。
ズバン!ズバン!ズババン!
大きな爪がギガントナイト伯爵に三連コンボを叩き込み、ヘルムと上半身アーマーを一部かち割られ、腐肉の肌が露見した。ローズの魔法も狙えば通る事だろう。
「ギュオオォォーーーーン!!(何処を見ている!!)」
スターフレアギドラは獰猛に吠えた。
さあ、反撃の開始だ。
…………。




