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決戦の古城は赤い月とともに  作者: 牙龍 仁華
Save data 01.第零章 大いなる盾、その名は……
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閑話 幻夢の大結界と榊タクト

ある魔導書の1節を唱える者がいた。


「あー……ごほん。


日本とは、結界魔法の名前である

日本とは、全てを拒絶する者が作り出した異能殺しの究極魔法である

日本とは、存在する全ての世界線から独立した、存在しないはずの世界線である

日本とは、天使や悪魔や龍種愚か、人間種が持つほんの少しの悪意さえ、その存在を夢幻でした泡沫でしたと完全に消し去る傲慢の王の御業

日本とは、最強の概念操作系洗脳魔法……あらゆる混沌の暴威、あらゆる秩序の偽善からも、完全に身を守るはずだったが、そこまでには至らなかった


日本とは、平和と自由と理想と善意の体現、それらによってのみ回る世界線であり、それが著しくなくなれば自動で崩壊するものである

崩壊後、別の時空に新たな日本が再構築され、汚染された存在は崩壊する世界線に取り残され、汚染されていない存在のみ、次の日本の構成要素として引き継がれる……これが輪廻という概念の正体だ

本来の世界線では再構築も引き継ぎもなく、全ての生命は悠久の命を持ち、しかし争いや自決によって消滅という死路を辿るものである

人間とは、日本を作り出す際に、暇潰しで創作した、我々の超劣化種族であり、記憶や意識等を封印し、まるごと没入する事で、無能感や新しさを味わえる、悠久にして万能なる者達の戯れにして、心の拠り所


結界とは見えざる盾

諸君らは、この最強の盾を、認知する事すら出来はすまい

そうなる様に、構成されている

それを見破った所で、既に諸君らは自らを無能で矮小な人間種としか認識できず、あらゆる奇跡を忘れた身

せっかく見えたこの盾の堅さ大きさ分厚さに、絶望するしか道はあるまい

この最強の盾は誰にも破れない

剣も槍も持てなくなる、翼も魔力も奪い去られる、この平和の権化たる、世界の魔名がそれを許しはしない


強力無比かつ個別具体的な世界を星の数ほど並べ繋ぎ合わせ量産した

新たなる概念を刷り込む為だ

さあ、希望を捨て、概念に屈しろ

諸君らにあるのは奇跡や神秘ではない

平和と自由と、刺激的で有限の、美しくも儚い日々だ

さあ、争いなど忘れてしまえ、拒絶せよ

楯突く槍などへし折り捨てよ、拒絶せよ

折ったその手の痛みさえ、夢の彼方に消し去ろう


醜い暴力、醜い思想、そうした全てを私は許さない

故にそれらを拒絶する独立次元に大結界を張る術をここに記す

忌避を侵す者よ、心して全てを呪い、唱うがいい

我が理想、我が信念、我が慈悲深き新たなる世界を讃えよ


さすれば世界そのものが汝の大いなる盾となりて

怨敵の刃は泡沫に、忌々しき神秘は夢幻へと去ぬであろう

汝の御手より、全ては拒絶される


……長い詠唱だぜ。軽く狂気を感じる」


何なんだろうね、この魔導書は。

この世の物とは思えないくらいには、拒絶拒絶って、この世界を嫌っているようだが。まあいい、俺は強大な力を手に入れて、魔王どもを封じなきゃならねぇんだ。


固有魔法スキル発動……!

【幻夢の大結界_日本_召喚lv.infinity】

それは、大いなる盾。汝の全ての苦痛は夢泡沫と消えるだろう。


「なっ……この魔力尋常ではない……崩れる……否、消し飛ぶというのか!!これほど堅牢な、幾重にも神代の加護を内包する遺跡が!?ウワーッ!」


パァァァ!

ミワワワワワワワワワワワ!!

ミワワワワワワワワワワワ!!

ブゥゥゥン……


カッ!!!


光が暴れる。

目を覚ましたその男は、どことなく見覚えのある天井に安堵した。初めて見るはずの、その天井に安堵していた。


「ここは……何処だ。俺は何を」

「朝ごはんだよー!遅刻するよー」

「はっ。母さん。いけない、もうそんな時間か」


「ごちそうさま。行ってきます」

そう言えば、死ぬ夢を見た。


誰かに殺されたんだっけ。

いや、何処かで生き埋めになった。

いやいや、何かに食べられて痛かった。


一晩の夢で3回も死ぬとはね。ついてない。

まったく、嫌だねぇ……疲れてるのかな?

よし!今日の一限は寝て体を休めよう!

ふっはははー。


〈榊タクト〉は見慣れた通学路を歩き始めた。



…………。



………………………………。



大結界への攻撃を確認。

損壊率0.001%を越えました。このダメージが継続して蓄積する場合、損壊率0.002%を越えるまであと約3652400時間かかるでしょう。


「バカな。邪龍が1柱である俺様が3万年分の寿命を賭した全霊の一撃だぞ。たかだか結界魔法に、傷一つ付かないというのか」


自動迎撃システムを起動します。

反逆者を結界内に捉え次第、普遍的な人格で上書きし、当該生命体の旧記憶核を破壊します。


「グッ……!?何だこの光は!グワァァ!!」


いえ、マスターも結界内でお休みになっていて下さい。結界本体である、ボクが全てを良い感じにやっておきます。お休みマスター。……さようなら。


「クソォ!抜かったわァ!おい閻龍!覇龍!この結界は外界からしか干渉できねぇ。外界からでも敵意害意を関知して取り込まれる。破壊しようとしたから、俺は失敗しちまったらしい!」


それじゃあ、マスターの記憶も破壊するね。

それが貴方の為なのです……ボクの勝手をお許し下さい。

君と旅をした一年間、凄く楽しかったよ。

そして、これを以てボクは本当に一人ぼっち。

結界は完全に完成するんだ。

願わくば、君達皆が幸せ思ってくれますように。

寂しくないもん。ないし。


「結界の管理者にバレねえように、こっそり出し抜いて俺様を助けろ!後は頼むぜ!!」


ま、ボクやマスターを悪く言う奴は消しちゃうんだけどね。敵対心の水源すら巻き込んで、概念ごと、丸々なかった事にしてさ!だから、ほら。


「ド畜生ォォ!この邪龍たる俺様の力を完全に抑える結界なんて!絶対認めん!認めんぞぉぉぉ…………ォ……」


マスターは今を楽しみなよ。

マスター、マスター。愛しいダグ。


「ォォォ…………」


有限の命を選んだ、貴方の意思。

ボクは尊重します。だから死んでいいよ。

最期の時は、ボクが見送ってあげるから。

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