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掌編集:無知の箱  作者: むい


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無知の箱

無知の箱


 さながらそれはバベルの塔だね。

 かつて君が喋っていた上等な言葉は、今では低俗なスラングに成り果ててしまった。元は同じ言語なのだろうが、僕は君の語彙を持ち合わせていない。言葉は植物。環境により大木へと変わることもあれば、無惨に枯れ果てることもある。高みを目指した君は、神の逆鱗に触れたのかもしれない。

 進化、されど衰退。君の言葉は死んでしまったのと同義。僕の君は、死んでしまったんだよ。


 さながらそれは全知の宇宙。

 かつて君が持ち得た知識は、宇宙と同化してしてしまった。混沌のなかを君は泳ぐ。君の持ち得た真実は混沌のなかで風化する。君はひとつの真実を得るために、みっつの真実を風化させる。

 僕は君の目を潰したい。なにも見るべきではない。なにも得るべきではないのだ。君の目は嘘を拾う。


 さながらそれはスーパーノヴァ。

 かつて君が放っていた光は衰えた。君は勘違いをしているんだ。自分を見失うな。無知の箱に、全てを奪われるな。


 さながらそれは、君自身。

 かつての君が作り上げた、君自身。夢と現、どちらが真か。いつしか君は君を見失った。一人歩きする君に比例して君はかりそめの君に成り果てた。実体のない君は崇高な神へと進化した。僕の君は安っぽい塵と同等。小麦粉一粒ほどの価値もない。


 さながらそれはパンドラの箱。開けたが最後、僕は絶望にうちひしがれる。希望すらも残らなかった。

 無知の箱。僕の君から全てを奪った。無垢な君を返しておくれよ。




2013/04/10


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