「わたしの子ではない」、ですって?
「なにも学校に行かせるなと言っているわけではありません。ブラッドがあなたの跡を継ぐにせよ、出仕や他の道を進むにせよ、いずれにせよ教育は必要です。それは、あなただけでなくブラッド自身もわかっています。もちろん、わたしもです。ですが、いまはまだ早い。そう言いたいのです。ブラッドがいま必要なのは、学校ではありません。それから、わたしでもありません。彼がほんとうに必要としているのはクラーク、あなたなのです。父親、なのです。ブラッドを連れ戻しに行ってきます。その間、考え直してください」
湿った地面に目を落としているクラークは、大活躍していたときの自信と前途に満ち満ちていた彼とはまったく違う。
(彼は、ごく当たり前の父親なのね)
そんな彼を見ていてつくづく感じた。
そして、視線を上げようとはしない彼に背を向けかけた。
「クラーク、大丈夫です。もっと自信を持ってください。ひとり息子をあんなに笑顔にさせたあなたですもの。立派な父親です。もしもまだ自信がないのなら、そのときにはわたしがついています。ブラッドの母親役のわたしが」
「違う、違うのだ。ブラッドは、違うのだ。彼は、わたしの息子ではない」
「はい?」
クラークのブラッドと同じ蒼色の瞳が、わたしの黒色の瞳とバッチリ合った。
彼の言葉が飛んできたが、あいにくすぐには理解出来なかった。
「ブラッドは、彼はわたしの息子ではない。遺伝子的には、だが。彼は、わたしの遺伝子を継いでいないのだ」
クラークは、そう言いきってからグッと唇を噛みしめた。そして、両拳を握りしめた。
先程のブラッドと同じように……。




