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私を追放した皆様へ。復讐は終わりましたのでご報告いたします

作者: カルラ
掲載日:2026/04/19

拝啓


 私を追放した皆様へ。


 お元気でしょうか。

 ……いえ、そうでもないかもしれませんね。


 まずは、ご安心ください。

 復讐は、すでに終わっております。


 もっとも――私は何もしていないのですが。


 さて、どこからお話ししましょうか。


 思えば、すべての始まりはあの日でしたね。

 皆様が私を“無能”と断じ、パーティから追放した日。


 覚えていらっしゃいますか。


 王都の酒場で、あなた方は随分と盛大に笑っていましたね。

 「役立たずはいらない」「これでやっと足手まといが消えた」と。


 あのときの空気は、今でもよく覚えています。


 ――とても、軽やかでした。


 まるで、重石が一つ外れたかのように。


 ええ、確かにその通りだったのでしょう。

 あなた方にとって、私は“重石”だったのですから。


 ですので私は、何も言わずに去りました。


 抗議も、弁解もせずに。


 ただ一つだけ、言葉を残しましたね。


 「わかりました」と。


 それで、終わりです。


 その後の私については、あまり興味はないかもしれませんが、一応お伝えしておきます。


 私は王都を離れ、隣国との境にある小さな町へと移りました。


 特別な理由はありません。

 ただ、人が少なく、静かな場所だったからです。


 そこで私は、細々と生活を始めました。


 冒険者として活動することもなく、ただ日々を過ごすだけ。


 時折、薬草を摘んで売ったり、簡単な雑用を請け負ったり。


 皆様が聞けば、きっと笑うでしょうね。


 かつて同じパーティにいた者が、そんな地味な暮らしをしていると知れば。


 ですが、不思議と悪くはありませんでした。


 静かで、穏やかで、誰にも期待されない生活は、思っていたよりも楽なものです。


 さて、本題に入りましょう。


 復讐についてです。


 先に申し上げた通り、私は何もしていません。

 これだけは、どうか信じてください。


 ですが結果として、皆様は次々と“問題”に直面することになりました。


 まず最初は、前衛の方でしたね。


 確かあなたは、巨大な魔物を単独で討伐できるほどの実力をお持ちでした。


 その日も、普段通りの依頼だったのでしょう。


 ですが――運が悪かった。


 魔物の動きが、ほんのわずかに読みと違った。


 それだけのことです。


 致命的な一撃を受け、重傷を負ったと聞いております。


 お気の毒に。


 ですが、それは単なる不運です。


 私の関与するところではありません。


 次は、後衛の方でしたね。


 あなたは優秀な魔術師でした。

 複雑な術式を扱い、仲間を支えることに長けていた。


 ですがある日、魔術の制御を誤ったとか。


 小さなミスだったのでしょう。

 ほんのわずかな計算違い。


 ですが、それが暴発を引き起こした。


 結果として、あなたは大きな怪我を負い、長期の療養を余儀なくされたと聞いています。


 これもまた、不運と言うべきでしょう。


 支援役の方も、大変でしたね。


 あなたは交渉や補給を担当していましたが、取引先との関係が急に悪化したとか。


 理由はよく分かりません。

 ほんの些細な行き違いが積み重なった結果かもしれません。


 契約は次々と打ち切られ、物資の確保が困難になった。


 これもまた、偶然の連鎖なのでしょう。


 そして最後に――リーダーであるあなた。


 あなたは最後まで、状況を立て直そうとしていたと聞いています。


 仲間をまとめ、依頼を選び、再建を図る。


 ですが、すべてが噛み合わなかった。


 一つ一つは小さな問題でも、それが重なれば大きな崩れになります。


 結果として、パーティは解散に至った。


 そう伺っています。


 ここまで読まれて、どう思われましたか。


 まるで、誰かが意図的に仕組んだかのようだ、と感じたでしょうか。


 ですが、繰り返します。


 私は何もしていません。


 ただ――少しだけ、思い出していただきたいことがあります。


 皆様が私を追放する前のことです。


 前衛の方。


 あなたが無茶な突撃をしようとしたとき、私は一度だけ止めたことがありましたね。


 「今日はやめた方がいい」と。


 あのとき、あなたは不機嫌そうに笑っていましたが、最終的には引き下がった。


 その判断が、結果的にあなたを守っていたことには、お気づきでしょうか。


 後衛の方。


 あなたの術式に、ほんの小さな誤差があったことを覚えていますか。


 私はそれを指摘し、修正を提案しました。


 「大丈夫だろう」と最初は軽く流されましたが、最終的には調整されましたね。


 あの調整がなければ、どうなっていたか。


 ……今なら、想像できるかもしれません。


 支援役の方。


 取引先との契約書を、私は何度か確認していました。


 細かい条件や、曖昧な文言を修正し、トラブルを未然に防いでいた。


 そのことを、覚えていらっしゃいますか。


 リーダーであるあなた。


 あなたはよく、私に「全体の流れを見てくれ」と頼んでいましたね。


 依頼の選定、移動のタイミング、休息の判断。


 私はそれに従って、最適と思われる提案をしていました。


 それがどれほどの影響を持っていたのか、当時はあまり意識していなかったかもしれませんが。


 ……とはいえ。


 これらはすべて、過去の話です。


 今となっては、関係のないこと。


 なぜなら、私はもう、あなた方のパーティにはいないのですから。


 最後に、一つだけ。


 これは忠告ではありませんし、助言でもありません。


 ただの事実です。


 “何も起きていない状態”というのは、決して当たり前ではない、ということです。


 それを維持するために何が必要だったのか。


 それが失われたとき、何が起こるのか。


 今回の件で、十分にご理解いただけたのではないでしょうか。


 以上をもちまして、ご報告とさせていただきます。


 繰り返しますが、私は何もしておりません。


 すべては、偶然と不運の積み重ねです。


 どうか、そのようにご理解ください。


 追伸。


 こちらでの生活は、思いのほか穏やかです。


 最近は、小さな畑を借りて、野菜を育てています。


 不思議なものですね。


 戦いとは無縁の生活ですが、以前よりも心が安らいでいる気がします。


 皆様も、どうかご無事で。


 ――もっとも、その願いが叶うかどうかは、私には分かりませんが。


                   

                                   敬具

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