「無気力な集落」
戦士セイジはギルドにて依頼を受けに来ていた。依頼内容はというと、異変の起きている集落の偵察である。
手の空いているクロと共にセイジは、早速件の集落へ向かう。
「そうだ、セイジ。せっかくだし、汽車で集落へ向かおう!」
「汽車⋯。あまりこの辺りを通らないと聞いたが、今日は来るのか?」
「うん。この間は乗りそびれちゃったし、どうせなら乗っていこう。」
セイジとて、汽車に興味がないわけではない。以前同じ集落へ向かったときには馬車での移動であった。
今回は運良く汽車へ乗れるのだ。セイジは隣のクロと同様に浮足立ちながら、汽車の乗り場へと歩く。
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無事に汽車へと乗り込んだ2人は指定された座席に座った。
赤く染められた座席は手触りが良く、長時間座るのにも最適な作りだ。
汽車が動き始めるとセイジは窓を見る。彼らのいる焼きの街なみがスライドしていく。
次に彼の視界に写ったのは広大な草原であった。別段、草原が珍しい訳では無い。
訳では無いのだが、不思議と汽車の窓から見える生い茂った草はいつもと違って見えた。
車内が小さく揺れる。それに伴いセイジの体も上下した。そうして、ふと考える。
「なぁクロ。この汽車はどうやって動いているんだ?やはり魔法か?」
「ううん。魔石で動いてるんだよ!加工するとエネルギー源になるんだ!色が変わるだけじゃなくて別の役割もあるなんて凄いよね!」
「そ、そうだな。」
あまりのクロの熱量にセイジはやや怯む。どうやらクロは、魔石が気に入っているらしい。
セイジにとって魔石は大気中のエネルギーを観測するための道具でしかないのだが、クロにとっては違うようだ。
「それにね、魔石の中でも不思議なものもあってね、例えばハートの形をしているのもあるんだ!」
「…………もしかして、ドラゴンの形のするものも…。」
「勿論あるよ!」
「凄いな!」
天然由来でドラゴンの形をしている石。それはなんてロマン溢れる代物だろうか。
魔石の役割についてはてんで興味がなかったものの、奇妙な形をするというなら話は別だ。
自身をロマンハンターと認識しているセイジ。新たに見いだした魔石というロマンには食い付かざるを得ない。
「それで何処にあるんだ、その魔石は!」
「えっとね、群生地は特定されてないんだ。」
「くっ。そうなのか。」
という具合に、魔石について語り合っていると汽車は目的地への到着を告げるのだった。
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2人が到着したのは、大地が剥げてやせ細った土地である。
そこに、目的地である集落はあった。
ここには2人とも訪れたことがある。その際は、行方不明になった村人を捜索する依頼で来たのだ。
今回、2人は以前と違った依頼でやって来た。どうやら村中で人々が無気力になっているのだ。
体に関することならば医者の管轄と思ったセイジだが、事情があるらしい。
「おやおや、お二人さん。はるばるありがとうねぇ。」
「いえいえ。それで、依頼内容についてなんですが。」
集落の畑で作業をしていた老婆が、2人の姿を発見して話しかける。
クロは背の低い老婆と目線を合わせるために、腰を屈めて依頼内容について再確認をした。
「最近、村の皆がぼうっとしていてね。病気とかじゃなくて、魔物の仕業らしいのよ。」
「そんなことが出来る魔物がいるのか?」
「うん。アマルンガムっていってね、ここ最近発見された魔物なんだ。」
クロの補足にセイジは頷く。成る程、今回の依頼は付近にいるであろうアマルンガムの討伐ということか。
「よし。ならば、早くアマルンガムとやらを討伐しに行こう。」
「ありがとう。それとね、坊や達についていきたいっていう子がいるんだよ。ほら、おいで。」
後ろを振り向いた老婆の手招きに応じて、土の小山から何かが飛び出してくる。
その見た目は人間とは思えぬ様であった。手足はあるものの、肌は青緑色で耳はやけに細長い。
オマケに服を着ておらず、腹は子供でもこさえているのかと思うほど豊満であった。
セイジは己の持つ記憶と目前の生き物を照らし合わせる。
「あっ!お前、以前会ったゴブリンだな!?」
「以前…あぁ、行方不明になった村人を介抱してたゴブリンだね。」
2人はそれぞれゴブリンとの出会いを思い起こす。
目の前のゴブリンは魔物といえど、意思疎通が可能であり人間に歩み寄っていたのだ。
「………君、本当についてくるの?」
「ウン!オレついてく!悪いマモノたおす!」
「お前喋れるようになったのか!」
「ウン!そこのばぁばに教えてもらった!」
そう言うとゴブリンは老婆を指さして飛び跳ねる。
まさか魔物と意思疎通をはかれるとは思ってもいなかったセイジは、嬉しそうにゴブリンを見る。
反して、クロは複雑そうな表情をしていた。何せ、言葉を話せても魔物は魔物。種族としてみれば人間にとって害しかない集団なのだ。
人助けをしてきた彼は、勿論魔物の被害に遭った人間を数多見てきた。
そうやすやすと受け入れるのは難しい。
「よし。それじゃあ行こうクロ、ゴブリン!」
「オレの名前、ゴブ!」
「分かった。気を取り直して行くぞクロ、ゴブ!」
「いってらしっしゃい。気をつけてねぇ。」
やる気に満ち溢れたセイジは先頭に立って、老婆に見送られながら依頼へとむかうのだった。




