「各々の夢」
セイジが先陣をきって、ケイヤ、クロ、ホーリーの計4人は魔術師ソシルが居るであろう場所へと足を踏み入れた。
天井が高く、白い建物の中。形から推測するに、外から見ると全体はドーム状になっているのだろうか。
建物に入ってからというもの、セイジは妙な違和感を覚えていた。正体の掴めないソレに嫌な気分になりつつも、先を急ぐ。
広々とした空間は、彼らに焦れったさを感じさせた。不快感と共にあったセイジは、そのことからも分かれて探索することを提案。
「分かれてですかにゃ…。それじゃあみーは、セイジさんと行きますにゃ。」
「よろしく。」
「オメェら2人で大丈夫か?」
「あぁ。俺だって日々成長している。問題ないさ。」
心配するケイヤへそう言って、4人は2人に分かれてハクエを探すことに。
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セイジはホーリーと2人で建物内を進んでいる。
とは言ってもがむしゃらに歩いているのではない。僅かなセイジの記憶と、ホーリーの知識からだ。
「えーっと、この造りの建物にゃら、奥はこの先のはずですにゃ。」
「博識なんだな。」
「そういう訳ではにゃいですよ。ただ、みーには夢が出来ましたから。その為にも嫌な勉強だって頑張るんですにゃ!」
そう意気込む彼女は、後付けの猫耳をピコピコと動かす。
セイジらが入った建物は、出入り口から二手に分かれていた。
また細い2つの道を進んだ先にも、数多の部屋があり迷いやすい構造をしている。
重量のある石で出来た扉を開けてくと、部屋は多種多様であることが分かった。
棺のような長方形の物が置いてあったり、祭礼用の杯など小物が保管されていたり、部屋がこれ程あるのも頷ける。
それらを確認しながら、ホーリーは話の続きをする。
「セイジさんには夢がありますかにゃ?」
「あぁ。父親や仲間に恩返しをすることだ。その為にも強くなりたい。お前の夢は?」
「みーの夢は『旅乗り』で働いてみんにゃを楽しませることですにゃ!ハクエちゃんが後押ししてくれたんですにゃ!」
「ハクエが…そうか。俺とおんなじだ。」
きっとお節介なハクエなら、やりたいことを見つける手助けをしてくれたのだろう。
セイジにとってもそうであった。教師ですら匙を投げた自身に対して、ハクエは見捨てずに色々なことを教えてくれた。
彼にとってハクエが導いてくれる存在だとしたら、ホーリーにとってもまた同様なのかもしれない。
「同じ夢追い人として、頑張ろう。ホーリー。」
「はいですにゃ!」
同志である彼女へ声をかけて、セイジは2人で道なりを進む。
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保管庫のような部屋や細い道をいくつか経由すると、かなり開けた場所へと辿り着いた。
これまた細長いテーブルと、それに付随する椅子が16個ほど置かれている。
その奥の席に、ハクエはヴェールを被ってただ静かに座っていた。
「ハクエ!」
「ハクエちゃん!」
やっと彼女を見つけられたセイジとホーリー。2人はハクエの名前を呼ぶ。
2人の声は届いているようで、ハクエは視線を移す。
白い瞳にセイジとホーリーの姿が移る。
ヴェールの下、彼女の真っ赤な唇は言葉を発した。
「セイジとホーリーさんですか。どうかしましたか。」
「どうかって…俺達はお前を助けに来たんだ!」
「そうですにゃ!魔術師の所にゃんかいないで早く帰りましょうにゃ!」
各々気持ちをぶつける。必死に叫んだものの、対するハクエは至って冷静だ。
まるで本当に声が届いてはいないような、そんな気分にさせる。
だが、ここまで来たのだ。セイジとホーリーはハクエを連れ帰ろうと歩み寄る。
その歩みを静止させたのは、他でもないハクエであった。
「助けは不要です。私はここで、私の願いを、夢を、叶えます。」
「夢…?お前は教師になりたいんだろう?そんなの、魔術師の下に居なくたって、」
「教師ですか。違いますよセイジ。そんなもの目指してはいません。私の今の願いは、どうしようもない人間を矯正することです。」
淡々とハクエは告げた。ヴェールに隠されていても、実に冷たい声音と瞳だ。
いつもの彼女とは打って変わった様子。そして、先程告げられた願い。
セイジとホーリーは受け入れ難かった。まるで、今の言い方では、どうしようもない人間とやらを軽蔑しているようではないか。
今までのハクエであれば、そんなことをするはずがない。
「っ!そのヴェールが!ハクエちゃんに、そんにゃことを言わせてるんですにゃ!」
「そうなのか!?」
「そうですにゃ!魔術師ソシルのヴェールは、被った人間を従属させるんですにゃ!でなきゃ、ハクエちゃんがそんなこと言うはずにゃいです!」
怒りすらも感じさせるホーリーの言葉に、セイジは納得する。
彼もハクエが教師になりたいという願いが嘘であったとは思えない。のだが、やはり引っかかる所もある。
頭ではハクエの言葉を反芻しながらも、斧を取り出す。
ホーリーもセイジと一緒で、緑色の鞭のような物を取り出して臨戦態勢へとなるのだった。




