「迷子の仔犬さん」
「皆!遂に僕達のギルド『宿り木』がランキング5位になったよ!」
「本当か!すごいな!」
クロの知らせを聞いたセイジは喜びと驚きを味わう。彼らの住む家に、丁度クロが帰ってきた頃の話しだ。
先日の魔術を使ったキサキを止めたことや、暴走した魔物を止めたこと、魔術結社『席連れ』の構成員を捕まえたことが起因するのだろう。
ギルドの成果によってつけられるランキングが3位以上になると、そのギルドは認定ギルドへ任命される。
認定ギルドは国からの依頼が来るようになったり、特権が認められたり、兎に角皆が目指す先なのだ。
今が5位だとすると3位まではすぐだろう。セイジは勿論、クロもケイヤもハクエも認定ギルドになることを志している。
そのため、クロの報告を受けて依頼へのやる気を高めるのだった。
「うし。そんじゃ、この調子でバンバン依頼を受けようぜ。」
「ですね!私、俄然やる気が湧いてきました!」
やる気十分。腕が鳴るといった具合に、セイジ達は早速立ちはだかる依頼を達成しに行く。
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「なぁクロ。確かに、バンバン依頼受けようぜって言ったけどよ。だけど、オメェこの依頼は…」
「ま、まぁまぁ。困ってる人が居るのは確かだから…。手を抜かずに行こう!」
そう言って4人が来たのは金雲街である。ここに来たのは当然、依頼のためなのだが肝心の内容は犬探しなのだ。
意気込んだケイヤは犬探しを引き受けると聞いてから、明らかにテンションが下がっている。
「それにしてもどこにいるんでしょうね…。飼い主さんも皆目見当がつかないみたいですし…。呼んでも返事はしませんしね…。」
「うーむ。そうだ!俺達も犬の気持ちになって探そう!そうすれば見つかるかもしれん!」
「?犬の気持ちって、どういう意味です、」
「くぅ~ん!わんわん!わん!わわん!」
「今すぐ辞めてくださいセイジ!恥ずかしいです本当に!」
依頼遂行のために犬となったセイジだったが、即刻ハクエに止められてしまった。我ながら良い案なのだと思ったが、良く考えれば犬なんて何処にでもいる。
つまり鳴き声が返ってきてもどの犬のものか分からない。ハクエの制止と相まって、そう考えたセイジは人間へと戻る。
「………おいクロ。オメェもやろうとしてたか…?」
「ま、まさかぁ!」
「そりゃ安心したよ。」
ケイヤの安心した顔を傍目に、クロは四つん這いになろうとしていた体を起こす。
危ないところであった。あと数秒、ケイヤの抑止が遅ければこの場に犬が2匹誕生するところだった。
犬の気持ち作戦は却下として、さて後はどうするか。やはり虱潰しで探すしかないのだろう。
結局、その結論に至った一行は手分けして犬探しといく。
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4人はそれぞれ二手に分かれて捜索を始めた。セイジはハクエと一緒だ。
ゴミ箱の裏から怪し気な路地、果ては通行人の鞄の中、
「鞄の中は辞めてくださいセイジ。」
「わ、分かった。」
鞄の中は辞めるとして、兎にも角にも隅々まで探す。
そうこうしていると、犬同士が喧嘩しているのかキャンキャンと喧しい声が聞こえた。
もしや探している犬かもしれないと考えた2人は声の元へと直ぐに向かう。
入り組んで狭い路地。そこが発生源である。
犬の写真を片手に、ハクエは必死に群がる犬を観察した。つぶらな瞳が一斉にセイジ達へと向けられる。
セイジもハクエと同様に犬を探しているのだが、視線を移す内に妙なものが目に入ったような気がした。いや、気のせいかもしれないが。
「きゃん!きゃんきゃん!きゃきゃん!」
「………うん。ただの犬だな…。」
「…………はぁ…そうだよね……私のことなんて、忘れたよね……はぁ………。」
「あ!貴方、カシルくんの持つ焼き人形じゃないですか!待っていてください!直ぐに助けますから!」
なんと、犬に咥えられていた人形こそがキャンキャンと喚く正体であった。
ただぼんやりと眺めるセイジとは代わって、ハクエは急いで犬から人形を救出。少しベトベトだが、まぁ問題はない。
心なしか不満げな人形。陶器で固められた彼女には表情筋はないはずだが、何か言いたい様子に見える。
適当な布で人形を拭って、ハクエは抱えながら質問をした。
「こんな所でどうしたんですか?」
「はぁ…突然犬の群れに襲われて…はぁ…咥えられて…気付いたらここにいたの…」
「災難だったな。それより、この犬を見てないか?」
「はぁ…この犬ならさっき見たけど…」
予期せぬ収穫があった。幸運にも、人形が探し求めている犬の居場所を知っているらしい。
彼女曰く、すぐに呼ぶことが出来るそうなので頼むことに。
人形が一体どうやって犬を呼び込むのかと、セイジ達は固唾をのんで見守る。
すると、あろうことか人形はきゃんきゃんと鳴き声を真似し始めた。
こんなことでやって来るのか疑念は絶えなかったが、そんな考えとは裏腹に犬は飛んでやって来た。
舌を出して勢いよく飛びかかる犬は人形を視界に入れると、これでもかと言うぐらいにベロベロ人形を舐める。
「ず、随分好かれていますね…。」
「犬と人形の恋路か…。応援するぞ!」
「はぁ…私の意思は…いったい…。」
犬にもみくちゃにされながらも、人形は嘆くのであった。




