「彼らの未来」
「迷惑かけたな。悪かった。」
家に帰ったケイヤは深々とセイジ達へ頭を下げる。戦いの後、魔術を使ったキサキを警察隊へ届けて一同は解散した。
ケイヤもカナタもシュウも未だ友好的には接せられないだろう。それでも、今は争うことは辞めにすることとなった。
「そんな!頭を上げてよ!ほら、僕達仲間だからさ。」
「ですね。仲間を止めるのは役割の一つだと思います。」
クロとハクエはそう言ってケイヤの謝罪を呑み込んだ。残りの仲間、セイジはというと、
「ふはははっ!見てくれ!この肉の鮮やかな切り口を!なんと!俺の斧でやったんだ!」
「……………セイジ、後にしてくれますか…」
「あはは…『ヒート』が前よりも使えるようになったから、それで料理を振る舞いたいんだね…」
指摘通り、妙にテンションの高いセイジは己の武器で肉を華麗にスライスしていた。
何もただただ自慢がしたいというわけではない。皆、疲れているだろうから豪勢な食事をと思って、腕によりをかけているのだ。
断じて、強くなった『ヒート』を見せびらかしたいわけではない。そんな気持ちがあったとしても、ほんの少しか半分くらいだろう。多分。
そうして誇らしげなセイジにも、ケイヤは改めて頭を下げる。
「セイジ、迷惑かけた。」
「クロやハクエの言うように仲間なんだから気にすることはない。」
「…………そうか。悪いな……。」
「それよりセイジ。衛生的にアレなので斧による調理は控えてくださいね。」
「しょ、消毒はしたのだが…。」
「それでもです。」
ハクエの注意に撃沈したセイジは大人しく斧をしまっていつも通りの調理をすることにした。
「僕は綺麗な切り口だと思ったよ…!」
「…!クロ!やはりロマンの分かるやつはお前だけだ!」
「ロマンとは違う気がする…」
ささやかなフォローにセイジは喜び肩を抱く。がしかし、ややズレている彼の発言にクロは突っ込みをいれるのだった。
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カナタ達との戦いを終えた翌日。セイジは朝練として平野に来ていた。
いつも通り走り込みによる体力づくりを行う。ふと気付けば、長時間走ることにもなれて苦しくなくなってきた。
それに加えて、少し休むと直ぐに体力が回復するのを感じる。これが成長なのだとしみじみ思うセイジに、後ろから声をかける人がいた。
「頑張ってるのねぇセイジクン。」
「カナタ!………今日は普通の格好なんだな…。」
「えぇ。まぁね。それより、この間はごめんなさいね。これお詫びの品よ。白魔導士チャンと黒魔導士クン達と一緒に頂いて。」
「おぉ。ありがとう。」
そう言ってカナタは白い袋に包まれた物を差し出す。頂いて、と言っていたからにはお菓子に違いない。
嬉しく思いながらも、セイジはふとあることに気付く。
カナタは白魔導士と黒魔導士、つまりハクエとクロについては言及したがケイヤについてはノーコメントであったのだ。
戦いをやめたとはいえ、直ぐに和解とは行かないのだろうか。
疑問を持つセイジに気付いたカナタは口を開く。
「………草波族のことは、まだ良く思えてないわ。あの赤髪の子もね。ただ、戦おうとしたらアナタ達が止めにくるのよね?」
「勿論だ。」
「だから、アタシとシュウはもう少し知ろうと思ったの。今の草波族のことを。」
「そうか…。手伝えることがあれば俺も手伝おう。そういえばシュウは?」
わだかまりは完全に消え失せてはいない。それでも一考の余地が挟まったのならば、今回セイジ達が止めに入った成果は十分だろう。
満足気になったセイジは、それはそれとして姿の見えないシュウについて聞く。
彼女から答えが返ってくる前に、彼の行方は分かった。
「師匠!見て下さい我の華麗な剣捌きを!新鮮な内に魚を捌けるんですよ!」
「…………お前も俺と同じ事をするんだな…」
「何っ!?貴様と我が同じだと!?心外だ!」
「心外だと思われるのが心外だな…」
にこやかに駆け寄るシュウは片手には刀を、もう一方にはおろした魚を持っていた。
自身の腕前を披露したいであろう彼は、前日の己の姿を思わせた。
シンパシーを感じていたセイジにシュウは嫌そうな顔をしており、それがセイジの絹のような心に傷をつける。
あからさまに嫌そうな顔をしなくてもいいじゃないか、と。
「シュウ、衛生的にアレらしいから武器での調理は辞めたほうが良いぞ。」
「消毒は済ませた。問題ない!」
「それでも控えたほうが良いらしいんだ。」
「ええぃ!貴様は女房か何かか!?喧しい!」
「何故俺が女房役なんだ!?というか男同士で侘しい想像をするな!」
やいのやいの騒ぐ2人を傍目にカナタは頬が緩んでいたのに気付く。
もし、あのまま草波族に手を掛けていたらこんな光景も目にできなかっただろう。こうして晴れやかな気持ちにもなれなかっただろう。
和解とはいかないものの、カナタの人生は未だゴールに辿り着かないのだ。ならば、ゆっくり時間をかけて草波族を知るとしよう。
今すぐ受け入れるのは無理だし、また間違いを犯すかもしれないけれど。
だとしても問題はない。暴走しても彼女を止めると言った人間がいるのだから。




