「魔術結社『席連れ』」
俺達のパーティは現在、金色のもやが立ち込める金雲街に来ていた。無論、依頼のためである。
中々大きな仕事のようで、これをこなせば所属ギルド『宿り木』の評価が上がるらしい。
「そんで、討伐する『席連れ』ってのはこの先にいんのか。」
皆に先んじてケイヤは言う。彼が語った『席連れ』とは魔術結社のことであり、各地で非道なことを行っている。
今回の依頼は、その『席連れ』が金雲街で発見されたので、安全の為に討伐するということだ。
「うん。この辺りにいるはず。」
「ケイヤ、ハクエ、くれぐれも迷わないようにな。」
「今回はセイジが自信満々ですね…。」
いつもよりも胸を張っているように見えたのか、俺はそう指摘された。まぁ彼女の言う通り、俺は金雲街を訪れた経験があるので自信はある。
視界が霞む土地を歩き続ける俺達は、示された場所へと向かった。そこに、『席連れ』の構成員が居るはず。
その考え通りに、向かった先には被り物をしたいかにもな集団がたむろしていた。『席連れ』の構成員は特徴的な被り物をしているので、目標は明らかだ。
「うし。セイジ、俺達で先陣きるぞ。」
「あぁ。」
ケイヤに従い、『席連れ』の構成員のもとへと走る。対象は俺達に気付いたようだが、反応は遅い。これなら直ぐにでも片付けられるはず。
「っ!ゴースト行け!」
俺達に気付いた構成員は焦って指示を出す。対象はゴースト。聞き覚えはあるのだが、一体何だったのか思い出せない。
「ゴースト…恐らくB級のコールドゴーストです。耳を貸さずに、氷に気をつけてください。」
ハクエはそう言う。注意を聞いた直後に、俺の耳には呼びかける声が聞こえた。
「ハクエさん…ケイヤさん…クロさん…助けて…」
「!?」
「クロ、惑わされんじゃねぇ!」
3人を呼ぶ声はまるで幼子のようであり、助けを求められたクロの手は緩む。攻撃を躊躇った彼を見たケイヤはそれをたしなめた。
何故俺の名前が呼ばれなかったのか。理由は分からないが、幸い体は動く。
コールドゴーストは枯れ枝に近い腕から氷を出す。俺達目掛けて排出された氷は、ケイヤと俺で対処する。
「ケイヤ、道は俺が開く!リキッド・フラー!」
「おう!」
限定魔法を使って、砕かれた氷を浮かせる。俺が斧で砕いた氷は大きめであり、足場にするには十分だ。
浮上した氷に飛び乗ったケイヤはコールドゴーストの頭を狙う。しかし、それを安々許すはずもなく。
再び、勢いよくケイヤ目掛けて氷が飛んでくる。が、彼への脅威は俺が届かせない。
「エッフル!」
斧を増やす魔法を使用して、氷へ投げる。2つの斧は軌跡を描いて氷を打ち砕く。これにより、ケイヤは難なくコールドゴーストの頭を剣でたたっ斬った。
「クロ!捕縛をしますよ!」
「う、うん。」
ハクエに引っ張られて、及び腰のクロは構成員の捕縛へと向かった。抵抗する構成員は、意味の分からないことを叫ぶ。
「我らにはソシル様がついている!」
「そうだ!幸福の魔術師がついている!」
「幸福の魔術師…?」
「『席連れ』の教祖ですよ。魔術を使って人々を惑わしているんです。」
疑問を浮かべる俺にハクエは説明をしてくれた。幸福を餌に人々を扇動するのは中々はた迷惑だ。
「クロ、大丈夫か?コールドゴーストは既に倒したぞ。」
「う、うん。そのごめん。」
「別に何ともなかったんだ。」
魔物に遅れをとったことが、こたえたらしい。クロは申し訳なさそうに謝罪をした。だが、彼が躊躇ったのも仕方がない。
助けを求められたのならクロは立ち止まってしまう。それが長所でもあるのだから。
何はともあれ、依頼通りに『席連れ』の構成員を捕縛したのだ。しばらく金雲街は平和となるだろう。
「そんじゃ、コイツら警察隊に引き渡して休もうぜ。」
「ですね。」
今回の依頼は警察隊の協力も受けられるので、『席連れ』構成員の身柄を渡しに行く。
―――――――――――――――――――――――
警察隊へ用事をすませたセイジは企みがあった。それは、金雲街の名物である金雲饅頭をたらふく食べることだ。
甘味の王様ともいえる饅頭をたらふくとることは、健康的でない。そんなことは十分承知だ。それでも、食べたいスイーツがある。
ということで、仲間にバレてしまう前に、店へ向かおうとした。のだが、
「セイジ〜?何企んでんだオメェ?」
「ケ、ケイヤ、俺は何も、」
「へぇ?何も?クロとハクエは見逃しても俺は見逃さねぇぞ。」
「うっ。そうだ、ならケイヤも行こう。着いてきてくれ!」
ハクエならまだしも、ケイヤは口うるさくないはず。つまり、いくら饅頭を食おうと文句は言われまい。
そう思って、ケイヤと共に金雲饅頭を食しに行くのだった。




